財務局は「困った時の相談先」

財務省 四国財務局長 米田 博文さん

Interview

2023.04.20

財務省理財局は、国債発行や国有財産の管理など専門性の高い業務を幅広く手掛ける同省最大の部局だ。財政投融資の仕事をメインに同局で長いキャリアを積んだ米田さんは、最も大変だった思い出として財政投融資改革の法改正を挙げる。郵便貯金や年金資金を利用した仕組みから財投債(国債)へと資金調達手段を転換するとともに、400兆円規模の郵貯・年金の資金を国債市場に悪影響を与えないように返還する制度設計に携わった。「一番大変で、一番やりがいがあった仕事です」。その後、国有財産法改正の際も中核メンバーとなる。「通常あまり変わることがない財政法規が大きく転換する節目に二度も関われたのは、本当に幸運でした」

自分を見つめた省外の経験

おもてなしお遍路ウォークに参加(八栗寺) 中央右・黄色のジャンパーが米田さん

おもてなしお遍路ウォークに参加(八栗寺)
中央右・黄色のジャンパーが米田さん

ほとんどを財務本省で過ごしてきたキャリアの中で、異色の経歴が二つある。一つは1997年、在外研究員として米・カリフォルニア大学サンディエゴ校の大学院へ1年間留学したこと。チャンスをつかむためには自力で入試に合格する必要があり、慌ただしい準備期間を経て、初めての海外生活がスタートした。「勉強より友人をつくるつもりで赴きました」と笑いつつも、実務ベースで金融の知識を磨いてきた米田さんにとって、最先端の理論に触れ自分の仕事にアカデミックな裏付けを得られたことは、大いに自信を深めてくれたという。しかし一方で、政治任用制が主流のアメリカでは起業家や金融・コンサル業の人気が高く「なぜ役人なんかやってるの?」と周囲に言われることもあり、実際に官庁を離れていく人たちの姿も見た。米田さん自身も悩んだが、踏みとどまったのは「お金のために仕事をするんじゃない、世のため人のためだ」という思いがあったからだ。

もう一つは、2007年から3年間の外務省出向。ちょうど環境を変えたいと思っていたこともあり、「従来の仕事と一番縁遠いから」と途上国への経済支援業務を希望した。「マクロ経済政策を担い、直接感謝される機会の少ない財務省の仕事と違い、外務省での仕事は途上国の経済開発や福祉の向上のため、個別具体的な案件に資金を使うこと。少額の援助でも『井戸ができた!』と感謝され、喜ばれる仕事っていいな…と新鮮に感じました」

物事をつなぐハブになりたい

2019年、東京都杉並区の荻窪税務署に署長として赴任。「いろんなボランティアの方々のおかげで税務署の実務が動いているのだから、地域のために尽くす人たちに貢献したい」と、地域の関係団体や企業経営者などを足まめに訪ね、数々の出会いと人脈を得た。その姿勢は以後も変わらず、交流は今も続く。「多くの出会いが多くの気づきをもたらしてくれます。常に一期一会と思って真摯に接し、敷居の高いイメージを裏切っていきたい」と力を込める。

22年に四国財務局長に就任し、4県を含め四国内の99自治体すべての首長に面会したほか、地域企業との交流も積極的に進めている。「財務局は経済産業局や運輸局のように補助金があるわけでも、地方整備局のようにインフラ予算があるわけでもない。だからこそ、利害関係なくヒトや情報をうまくつないで、四国の魅力をさらに生かす政策を支えるハブになれるはず。財務局を『困った時に相談できる何でも屋』と思っていただければうれしいですね」と語った。

戸塚 愛野

米田 博文 | よねだ ひろふみ

略歴
1965年 熊本県生まれ
1988年 同志社大学商学部卒
1989年 大阪国税局採用(国税専門官)
2015年 理財局総務課理財調査官
2019年 東京国税局荻窪税務署長
2020年 中国財務局総務部長
2021年 理財局管理課長
2022年 四国財務局長

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