鬼ヶ島を農業で元気に

鬼の畠 代表 中條 祐太さん

Interview

2023.04.20

女木島で事業を起こしてみないか。祖母からそんな誘いがあった当時、中條さんは東京の大学に通い、3LDKを6人の学友とルームシェアする生活を送っていた。祖母は島の魅力を発信するイベントを10年以上企画・開催してきたが、島の人口を増やすにはイベントだけでは不十分で、雇用を生む必要を感じているという。それを受けて2021年4月、「住む場所にこだわらず挑戦したい」と共感してくれたルームメイトとともに女木島へ移住し、8月に祖母を発起人とする合同会社「鬼の畠」を立ち上げた。

事業内容を決めるに当たっては、「畑が余っていて引き継ぐ人がほしい」「維持しないと景観を損ねるし、害獣問題も…」といった島の人々の声をヒントに、農業にフォーカス。ニンニクやタマネギ、トウモロコシなどを畑で栽培するかたわら、貨物コンテナを利用したキクラゲ栽培のフランチャイズで事業の安定を図ることにした。「女木島は海に囲まれてミネラルが豊富、日照時間も長くて、農業には絶好の条件が整っています。さらに、まだ人力作業のウエイトが高く、いい意味でアナログな農法が残っているのも魅力的。昔ながらのいいところを生かしながら新しいことに挑戦し、かつては豊かな段々畑が広がっていたという島の風景を復活させたいと思っています」。

採れた野菜は県内のホテルや農協への卸売のほか、ネット通販にも対応。一方で「島で採れたものを島の中で消費する完結したサイクルをつくりたい」との思いもあり、敷地内のカフェで食材として使用したり、収穫祭やマルシェなどのイベント、体験型の観光農園やワークショップへと展開していく構想も温めている。「今はがっつり農業ですが、島のニーズには柔軟に寄り添って、必要なら大胆に転換していくつもりです」。
5月に「にんにく臭獲祭」を開催予定

5月に「にんにく臭獲祭」を開催予定

起業から2年、農業のシステムがある程度確立し、事業を軌道に乗せようと奮闘する中で、新しい課題も見えてきた。「島の外から人を呼び込み人口を増やすには、雇用を生むだけでなく、移住者を受け入れる島の基盤が整っていなくては。僕の場合は幸い祖母が島と育んだ10年間があり、事業を通じて地道に信頼を築くことができましたが、現状は移住者に対してまだまだ一枚岩ではありません」。

そこで、移住者の立場から島内の地域コミュニティ強化を提案。今年4月、島に住む人たちと協力して「女木島を守る会(仮称)」を立ち上げるなど、島を活性化したい人々の思いを一つにまとめるべく奔走している。「僕は人の数こそパワーだと思っています。バラエティ豊かな人たちが島にどんどんかかわれる環境をつくりたい。僕の役割は、移住者と島民の双方がバランスよく歩み寄るための仲介者といったところでしょうか」。特に2023年は新しいことにチャレンジする年だと力を込めつつ、「島が一丸になれるよう、じっくり時間をかけて大事に育みたいと思っています」と語った。

中條 祐太 | ちゅうじょう ゆうた

略歴
1995年香川県生まれ
2011年 香川高等専門学校 入学
2015年 東京工芸大学 入学
2021年 合同会社鬼の畠 設立

合同会社鬼の畠

住所
香川県高松市女木町289番地
代表電話番号
087-899-2931
設立
2021年4月
地図
URL
https://www.oninohatake.com/
確認日
2023.04.20

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