農林水産省もICT(情報通信技術)やロボット技術を活用する「スマート農業」を推進。農業機械の自動運転、アシストスーツによる作業支援などで、農作業の省力化や高品質な農作物の生産を目指すものだ。
尾野さんは「北海道や九州のような大規模農業は自動化・機械化を取り入れやすいですが、香川県は農地が狭く農業の規模も小さいのでなかなか難しい」と話す。同園はレタスやブロッコリー、カボチャなどを栽培。1年を通して出荷できる青ネギが主力だ。生食用の出荷のほか、業務用として食品加工工場にも販売している。
2014年から、コンピュータシステムによるデータ管理を導入した。降雨量や気温などの気象データ、肥料や水やりなどの栽培記録をデータベースに登録。蓄積したデータから、農作物の生育状況と気温などの条件との相関関係を分析し、生産量を調整する。出荷までどれだけの時間や人件費がかかったか、野菜の原価も分かる。
「ほかの農家が出荷できない時に、うちにはありますよと言えれば強みになります」。さらなる安定供給を目的に、現在、香川県農業試験場と共同で青ネギの収穫管理システムを開発中。今年度中に完成する予定だ。
香川県の農業就業人口は30,383人で、高齢化率(65歳以上)が7割※。尾野さんは、どうすれば若者に興味を持ってもらえるのかを常に考える。尾野農園は体験入社が可能で、ホームページから応募できる。スタッフは20~30歳代が多く、夏休み時期には大学からのインターンシップ生も受け入れている。
農業従事者の高齢化が進み、耕作放棄地が増える中で、地域からの期待を感じている。「自社だけではできることが限られるので、農家同士協力して田畑を守っていきたい」
システムの導入や新商品の開発は、人が育つ環境を整えるために行う。「いい土壌でおいしい野菜が作れるように、いい会社で人は育つ。最新の技術を使ったり、付加価値のある商品を作って売上を伸ばすことが環境の改善につながります。学生が就職を考える時に、農業も選択肢の一つになれば。安心して長く働ける会社にしたいですね」。勘や経験に頼らない仕組みを作り、新規就農者の増加を目指す。
※香川県農政水産部「統計で見る香川の農業・水産業」平成30年度版
鎌田佳子
尾野 弘季 | おの ひろき
- 1976年 丸亀市生まれ
1997年 高松工業高等専門学校(当時)卒業
システムエンジニアを経て
2000年 就農
2013年 株式会社 尾野農園 設立
株式会社 尾野農園
- 住所
- 香川県善通寺市稲木町950
- 代表電話番号
- 0877-35-8412
- 社員数
- 20人
- 事業内容
- 青ネギ、レタス、キャベツ、ブロッコリー、玉ねぎの生産・販売
- 地図
- URL
- http://www.ono-farm.com/
- 確認日
- 2018.10.04
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