「いいものは高い」。生活者の意識を変えていく

キウイボム 代表取締役 中野 裕史郎さん

Interview

2020.03.19

高松市香南町のキウイ畑。収穫後、次のシーズンに向けて枝は剪定しておく

高松市香南町のキウイ畑。収穫後、次のシーズンに向けて枝は剪定しておく

キウイボム(高松市)が毎週、土・日曜日に「香南朝市」で販売しているフルーツサンド「ボムパン」が人気だ。仕入れた柿やイチゴ、パイナップルなども使うが、主役は同社が栽培する香川県オリジナル品種のキウイフルーツ。高松市内の畑で育てた「香緑(こうりょく)」「さぬきゴールド」「さぬきキウイっこ」をたっぷり使う。

2019年11月に販売を始め、口コミやSNSで話題に。キウイを使ったボムパンは、今シーズンの販売を2月いっぱいで終了。最後の土日は用意していた200個が完売した。キウイボムの代表を務める中野裕史郎さん(45)は、中野建設興業の社長でもある。
「香南朝市」で販売のフルーツサンド「ボムパン」。  キウイフルーツのものは2月で終了。3月以降は他の果物を使って作る

「香南朝市」で販売のフルーツサンド「ボムパン」。

キウイフルーツのものは2月で終了。3月以降は他の果物を使って作る

中野建設興業は、中野さんの父が創業。8歳のころ父が亡くなり、母が社長を引き継いだ。中野さんは高校と大学で土木を学び、卒業後は高松市内の測量設計の会社に就職。4年働き、家業に入った。

今から10年ほど前、公共事業が減り、工事の受注も減っていく中で「何とかしなくては」と考えた。「うちは重機が使えるので、土地の造成ができる。生かせることはないかと、オリーブ栽培やたい肥の製造……いろんな事業を見に行きました」

2010年に県が開催する新規就農塾の「かがわアグリ塾」を受講。そこで、香川ではキウイの品種改良に力を入れていることを知った。「異業種に参入するとなると、回りからはすぐ『儲かるの?』と聞かれる。儲けだけを気にしていたら、挑戦はできません」。同時期に農業への参入を考えていた高松市内の建設会社の存在も励みになった。「悩みを話せるし、情報量は2倍になります」

11年にキウイボムを設立。キウイが香川で爆発的な人気になるようにと、社名を付けた。耕作放棄地を耕し、栽培を開始。3年目から収穫できるようになった。19年は10㌧を収穫。大半は農協を通して小売店で販売している。県や県内のキウイ農家から指導を受けながら栽培を続けてきたが、肥料設計や果樹棚の設置はまだまだ難しいという。 
5~10月にイベントなどで販売するかき氷「ボム氷」

5~10月にイベントなどで販売するかき氷「ボム氷」

ある日、SNSでスーパーマーケットのアカウントが「国産より外国産のキウイがおいしい」と投稿しているのを見た。「そんなことないと思って、香川県産キウイを贈ったんです」。相手は愛知県岡崎市の「ダイワスーパー」。ダイワスーパーの社長が「おいしかった」と言って、2019年2月にキウイボムの畑を見に来た。中野さんも愛知を訪ね、交流を深めた。ダイワスーパーで人気になっていたのが、新鮮な果物で作るかき氷とフルーツサンドだった。

ダイワスーパーを参考に、夏からキウイのジャムを使ったかき氷「ボム氷」、秋からフルーツサンド「ボムパン」の製造と販売を始めた。ボムパンは1個650円で、安いとは言えない価格だ。「青果を作って売るだけでは厳しい。付加価値が必要です。おいしいものを届けて、お客さんの『安くていいもの』がほしいという意識を『いいものは高い』に変えていきたい」

中野さんは建設業と農業、どちらが本業・副業という線引きはしていない。「経営者は一つのことに縛られず『他ごとをしてなんぼ』だと思います。いろんな目線で考えないといけない」

10歳の長女が小学校の参観日に「将来はキウイを売りたい」と発表した。「こんなにうれしいことはない」と話す中野さん。いずれはボムパンとボム氷を販売する直営店をオープンしたいと考えている。キウイ畑は、現在の2㌶を4㌶まで拡大するのが目標だ。

鎌田 佳子

中野 裕史郎|なかの ゆうじろう

略歴
1974年 高松市生まれ
1993年 香川県立高松南高校農業土木科 卒業
1997年 日本文理大学工学部 卒業
2001年 中野建設興業 入社
2011年 キウイボム 設立

株式会社キウイボム

住所
香川県高松市香南町由佐78‐2
代表電話番号
087-879-2252
設立
2011年設立
事業内容
キウイフルーツの栽培、加工品の製造・販売
地図
URL
https://www.facebook.com/Kiwibomb/
確認日
2020.03.13

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