博物図譜に見る讃岐の野菜~サトイモ~

野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸

column

2022.01.06

香川県指定有形文化財「写生画帖 菜蔬 裏49」高松松平家歴史資料(香川県立ミュージアム保管)

香川県指定有形文化財「写生画帖 菜蔬 裏49」高松松平家歴史資料(香川県立ミュージアム保管)

万葉集にも登場するように、日本において、古来より食されてきたイモは「サトイモ」と「ヤマイモ」で、現在、イモとして活躍されている「ジャガイモ」と「サツマイモ」は、江戸時代に入って日本にもたらされました。
「写生画帖 菜蔬」においても、「ジャガイモ」と「サツマイモ」はそれぞれ1枚の実なのですが、「サトイモ」や「ヤマイモ」は、いろいろな種類が描かれています。
セレベス

セレベス

さて、香川県において、「赤芽(セレベス)が出始めると、白芽(一般的なサトイモ)が売れなくなる」といわれるように、赤いサトイモの品種である「セレベス」が、一般的なサトイモと区別されて取扱われています。セレベスは、甘みが濃く、ほくほくとした食感が特徴で、しっぽくうどん(県外の方にわかりやすく説明すると「やさいにこみうどん」)や冬場の煮物など、讃岐の冬の食卓には欠かすことのできない品目です。

実は、セレベスと思われる品種が「写生画帖 菜蔬」の中に存在しており、墨書では、「紫芋」「とうのいも」(裏49)と表記されています。紫芋とは実に見事な表現で、掘りたてのセレベスはとてもきれいな淡紫色(ピンク色)をしているのが特徴です。

しかしながら、セレベスが日本にもたらされたのは、昭和10(1935)年であり、「写生画帖 菜蔬」に描かれたサトイモ(紫芋)の正体は、京野菜の一つである「海老芋」であり、200年ほど前はこの海老芋が赤芽イモとして利用されていたのでしょう。記録によると、香川県において、昭和30(1975)年頃に、従来の赤目芋からセレベスに品種更新されたとあることから、もしかしたら、香川県のどこかでセレベスと間違われて、海老芋が栽培され続けているのかもしれません。

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん

写真
野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ