讃岐の特産 富有柿の黎明期

野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸

column

2019.11.21

香川県は農地面積が狭いため、量目では他産地に劣ってしまいます。品種選定や品質の追求、栽培時期の調整など、様々な創意工夫をすることで他産地と渡り合ってきました。

現在は、アスパラガスやキウイフルーツなど、次々と新しい取り組みがされているところですが、今をさかのぼること100年前に、香川県が目を付けた品目は、甘柿である「富有柿」でした。富有柿は岐阜県で発見された品種です。
当時、柿の主産地は岐阜県でしたが、温暖な香川県で栽培することで、他産地より早く色づき、有利な販売がされていたようです。昭和4年(1929年)の新聞によると「10月15日に大阪市場に香川県産の富有柿が登場し、岐阜県産、岡山県産1.5倍の価格で売れた」という記録が残ります。

また、このころから共同出荷や出荷統制により、他産地と比べ、品質の統一性や荷造りなど、一歩リードしていたそうで、果物問屋は、香川県産富有柿の出荷を待ち望んでいたようです。香川県も栽培に力を入れ、3000本の苗木を配るなど、県をあげての盛り上がりが感じられます。

しかし、早期出荷がお金になることが分かり、昭和6年(1931年)には、出荷開始が1週間早くなり、色づきの悪い品物が店頭に並び始め「利欲にかられてせっかく築き上げた讃岐の声価を落とすことになる」と辛辣な批評も書かれる状況も生まれていたようです。

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん

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