備讃瀬戸にもある国生み神話

村井 眞明

column

2019.11.21

大槌島と小槌島

大槌島と小槌島

我国で最も古い歴史書である古事記には、伊邪那岐(いざなぎ)と伊邪那美(いざなみ)の2神が、天浮橋(あめのうきはし)に立って、まだどろどろとした大地をかき混ぜて島を造っていったという国生みの物語が書かれています。最初に淡道之穂之狭別島(あわじのほのさわけのしま)すなわち淡路島、次に伊予二名島(いよのふたなのしま)すなわち四国ができます。二名というのは山によって二並びに分かれているという意味です。それから隠伎之三子島(おきのみつごのしま)すなわち島根県の隠岐島、筑紫島(つくしのしま)すなわち九州、伊伎島(いきのしま)すなわち福岡県の壱岐島、津島(つしま)すなわち長崎県の対馬、佐度島(さどのしま)すなわち新潟県の佐渡島(さどがしま)、大倭豊秋津島(おおやまととよあきづしま)すなわち本州と8つの島ができます。ここから日本を大八島国(おおやしまのくに)といいます。そして次に吉備児島(きびのこじま)、小豆島(あずきじま)、大島(おおしま)、女島(ひめじま)、知訶島(ちかのしま)それに両児島(ふたごのしま)と小さい6つの島が生まれます。

通説では、「吉備児島」はかつて島だった岡山県の児島半島を指し、「小豆島」は文字通り小豆島を指しています。ちなみに小豆島の星ヶ城には阿豆枳(あずき)神社が鎮座しています。そして、「大島」は周防大島ともいう山口県の屋代(やしろ)島を指し、「女島」は大分県の国東半島沖の姫島、「知訶島」は長崎県の五島列島、「両児島」は五島列島よりさらに西の沖にある男女群島を指しています。

しかし、6つの島のうち2つが備讃瀬戸にあるにもかかわらず4つが突然遠く離れた島になるのは不自然ではないか、6つの島はすべて備讃瀬戸の島々ではないかという説が香川にはあります。それによると、「大島」は庵治沖の大島であり、「女島」はかつて大姫(おぎ)島・姪姫(めぎ)島と表記されていた男木島・女木島、「知訶島」は値嘉島とも表記されていたことから値が直となった直島、「両児島」は双子の島ということから五色台沖の大槌島・小槌島である、というものです。

備讃瀬戸には、海幸・山幸、豊玉姫(とよたまひめ)・玉依姫(たまよりひめ)の神話も残っており、この説も全く荒唐無稽な考えであると一蹴することはできないような気がします。瀬戸内国際芸術祭は、国生み神話につつまれた古代日本の原風景をバックボーンにしているといえるかもしれません。

歴史ライター 村井 眞明さん

多度津町出身。丸亀高校、京都大学卒業後、香川県庁へ入庁。都市計画や観光振興などに携わり、観光交流局長を務めた。
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