若者はなぜ都会へ行くのか

日本銀行高松支店 支店長 大塚 竜

column

2024.12.05

82.6%。これは香川県の高校卒業者(既卒者を含む)に占める県外大学進学者の割合です(出所:令和5年度・学校基本統計<香川県分>)。卒業後にUターンする方も少なくないと思いますが、一度、都会に出ると戻ってこないという話をよく耳にします。地方都市における人口減少の問題は、背景が多岐にわたり、1つ論じれば答えが見えるものではありませんが、ここでは若者が都会へ向かう理由について考えてみます。

まず、都会には高収入の仕事があり、生活水準が上がると考えていること。賃金水準は、最低賃金からもわかるとおり、都市部が相対的に高くなっています。しかし、わが国の経済成長率は低下しており、賃金(フロー)の伸びが所得を大きく高めるわけでは必ずしもありません。むしろ、土地などの資産(ストック)を多く持つ方が豊かさを実感できる時代になっています。ただし、若いうちは、なかなか気づきにくいかもしれません。

次に、感覚的ですが、都会は輝いて見えること。かく言う私も、アメリカへの憧れから留学先にニューヨークを選びました。彼の地は、ビジネスの活気に溢れ、音楽・スポーツなど世界一流のエンターテイメントが揃っています。しかし、生活の安心・安全は劣り、私は日本の良さを再認識して帰国しました。一度離れてみないとわからない美点もあるものです。

翻って香川県は、美しい自然と豊かな食文化に恵まれ、生活のしやすい地域です。近所の商店で新鮮な食材を購入できますし、海沿いの市場では海産物をお手頃な値段で頬張ることができます。先日、屋島山上で行われた音楽ライブイベントに参加し、夕日が沈む瀬戸内海をバックに極上の音楽を楽しみました。アーティストが数多く集まる東京でも、このような経験はできません。県内に特色ある美術館が点在し、瀬戸内国際芸術祭とともに、アート県としての認知度は年々高まっています。健康で文化的な生活を送る意義について、もっと意識が高まれば、ここ香川には若者を惹きつける地域として発展するポテンシャルが大いにあると確信しています。

日本銀行高松支店 支店長 大塚 竜

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