新券は、一万円券は渋沢栄一、五千円券は津田梅子、千円券は北里柴三郎を、それぞれ肖像としています。いずれも香川県と直接の関係がないためか、こちらで人物の話題で盛り上がることは少ないように思います(ただし、香川県の設置に尽力した中野武営が渋沢栄一の盟友だったことなどを教えていただき、私は大変勉強になりました)。とはいえ、実業界での活躍、女性の高等教育の発展、伝染病の研究など、今日でもなお重要とされる分野で貢献された偉人です。新券を手にして先人への思いを馳せることで、私たちが前向きに日々の課題に取り組むきっかけになればと思います。
ところで、海外には、ユーロ紙幣のようにお札に肖像(人の顔)を採用していないところもありますが、多くは肖像を採用しており、これは偽造防止のためとも言われています。私たちは人の顔を見分けることに慣れているため、銀行券の肖像がほんの少しでもずれたりぼやけたりしていると違和感を持ち、偽造に気づきやすくなります。実際、私も日本銀行に入行してお札の真偽鑑定の研修を受けた際、肖像を中心に全体を見渡してチェックするよう教わりました。新券には高精細すき入れや3Dホログラムといった新技術を取り入れていますが、描かれた「顔」も見慣れてくれば偽造抵抗力の更なる向上につながることでしょう。
近年、キャッシュレス化が進んでいますが、災害発生時の決済手段の提供や、キャッシュレス決済の利用が困難な方々への対応が必要とされていることなどから、今後も現金に対して一定のニーズが見込まれるものと考えています。そうした現金に対する需要がある限り、日本銀行は責任をもって現金の供給をしてまいります。新券が広く行き渡り、安心して使っていただき、ひいては経済の潤滑油となっていくことを期待しています。
日本銀行高松支店 支店長 大塚 竜
- 写真
おすすめ記事
-
2024.12.05
NEW
若者はなぜ都会へ行くのか
日本銀行高松支店 支店長 大塚 竜
-
2024.04.04
うどんにみるダイバーシティ
日本銀行高松支店 支店長 大塚 竜
-
2023.12.07
文学と歴史の香り漂う香川の魅力
日本銀行高松支店 支店長 大塚 竜
-
2023.08.17
国際交流のすすめ
日本銀行高松支店 支店長 大塚 竜
-
2024.09.05
成り立ちを知ることで、ありがたみがわかる
香川県信用保証協会 会長 西原 義一
-
2024.04.18
「星を継ぐもの」
四国なんでも88箇所巡礼推進協議会会長 佐藤 哲也
-
2019.02.07
夢を語ることから始めたい
四国地方整備局長 平井 秀輝
-
2016.11.17
流域外分水
前・四国地方整備局長 名波 義昭
-
2015.08.20
あれから30年
元・四国地方整備局長 石橋 良啓
-
2024.11.27
安全、良質な水を安定供給
将来を見据えた取り組みも水資源機構
-
2024.11.27
特殊な技術を誰もが学べる環境で
さまざまな人材に門戸を開くTERRA