
新券は、一万円券は渋沢栄一、五千円券は津田梅子、千円券は北里柴三郎を、それぞれ肖像としています。いずれも香川県と直接の関係がないためか、こちらで人物の話題で盛り上がることは少ないように思います(ただし、香川県の設置に尽力した中野武営が渋沢栄一の盟友だったことなどを教えていただき、私は大変勉強になりました)。とはいえ、実業界での活躍、女性の高等教育の発展、伝染病の研究など、今日でもなお重要とされる分野で貢献された偉人です。新券を手にして先人への思いを馳せることで、私たちが前向きに日々の課題に取り組むきっかけになればと思います。
ところで、海外には、ユーロ紙幣のようにお札に肖像(人の顔)を採用していないところもありますが、多くは肖像を採用しており、これは偽造防止のためとも言われています。私たちは人の顔を見分けることに慣れているため、銀行券の肖像がほんの少しでもずれたりぼやけたりしていると違和感を持ち、偽造に気づきやすくなります。実際、私も日本銀行に入行してお札の真偽鑑定の研修を受けた際、肖像を中心に全体を見渡してチェックするよう教わりました。新券には高精細すき入れや3Dホログラムといった新技術を取り入れていますが、描かれた「顔」も見慣れてくれば偽造抵抗力の更なる向上につながることでしょう。
近年、キャッシュレス化が進んでいますが、災害発生時の決済手段の提供や、キャッシュレス決済の利用が困難な方々への対応が必要とされていることなどから、今後も現金に対して一定のニーズが見込まれるものと考えています。そうした現金に対する需要がある限り、日本銀行は責任をもって現金の供給をしてまいります。新券が広く行き渡り、安心して使っていただき、ひいては経済の潤滑油となっていくことを期待しています。
日本銀行高松支店 支店長 大塚 竜
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