成り立ちを知ることで、ありがたみがわかる

香川県信用保証協会 会長 西原 義一

column

2024.09.05

本県では、天気情報にあわせ早明浦ダム貯水率が出てくる。水への関心の高さを表しているのだが、水の苦労を知らない人たちが随分増えてきた。苦労しないで済むのは良いことではあるが、吉野川総合開発事業の一環として整備された早明浦ダムと香川用水などによって、水事情が大きく改善した歴史を忘れてはならない。今年は、その香川用水が昭和49年に上水道用水のみの暫定通水をしてから50年となる。東西分水工(財田町)がある香川用水記念公園内に水の資料館があるが、そこで通水の歴史などを知ることができる。

この通水の前年、当時高松砂漠と呼ばれる大渇水があった。この時、満濃池の水が高松市へ緊急送水された。なぜ出来たか?工事中の香川用水幹線用水路を使ったのである。多くの方の協力を得て実現した活用であるが、香川用水は県内の河川水系を串刺しする形で整備され、水系間での水融通が図られ、主要なため池までもが調整池の役目を果たせる機能を有するよう計画されている。

古代から水不足対策として造られてきた「ため池」とその水利システム、昭和の初めごろから水系ごとに造られた近代的なダム、そして香川用水が相互に機能しあって、この半世紀、水危機は何度も乗り越えられている。あまり知られていないが、主要ため池などの水量管理ができている強みを生かしつつ、必要の都度、用水利用の調整が図られてきたからである。調整による水融通はそれぞれの用水に余裕があるからではなく、節水や効率利用の努力によって生み出される。今も利水者、関係者間での調整が行われている。そしてこのシステムを活かして命の水が供給されている。ありがたいことである。

中小企業の資金繰りにおいても、一般に知られていない支援の仕組みがある。例えば、コロナ禍で話題になったゼロゼロ融資などである。民間金融機関から中小企業者などへの金融の円滑化を目的に、信用保証協会の信用保証と日本政策金融公庫の信用保険で成り立つ信用補完の制度。返済を前提に、効果的かつ効率的な資金繰りという観点による、事業者も融資機関も保証協会も納得いく目線合わせが必要であるが、これを活用しコロナ禍で頑張る企業を応援することができた。

こうした水や資金繰りだけでなく、何事もその仕組みの成り立ちを知ることで、先人の工夫や思考を理解し、そのありがたみがわかる。そして次なる工夫にもつながる。若い 世代には、普段、普通と思っていることを当たり前と思わず、その成り立ちに関心を持ってもらいたいと思う。

香川県信用保証協会 会長 西原 義一

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香川県信用保証協会 会長 西原 義一

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