経営管理者のインテグリティ

香川県信用保証協会 会長 西原 義一

column

2024.05.02

コンプライアンスの限界を補うためインテグリティ醸成に取り組む企業が増えている。インテグリティという用語、あまり聞きなれない。誠実さ、真摯さなどと訳されるが、倫理観に基づいて自ら正しい行動をすることを指すようである。経営学者ピーター・F・ドラッカーの著書「現代の経営」には、経営管理者にとって決定的に重要なものは、教育やスキルではない。それはインテグリティであると強調している。経営者の誠実さが事業経営の基本となり、高いインテグリティを持つことで企業理念や社会通念に照らした社員の自律的な行動となり、ルールを守るというコンプライアンスが一層活きてくる、ということであろうか。

コンプライアンス研修や人事考課における業績評価に使われ始めているが、そもそも研修等が必要になっていること自体気になる。2002年度生まれ以降の者は、いわゆる「ゆとり教育」から「脱ゆとり教育」への移行措置が始まった学年にあたる。当時詰め込み教育の反省から「ゆとり教育」になり、思考力を鍛える学習に重きを置いた教育方針、「生きる力」の育成を主眼に取り組まれたが、その後の学力低下の指摘から見直され「脱ゆとり教育」に至った。時代とともに学習内容は高度になる。必要な知識を得る時間はしかたないにしても、善悪や可否を認知する道徳教育的な学びが弱体化してきたのかもしれない。教育は本来人格形成を図るもの。学校等で知識の充実を図るだけでなく、いろいろな体験を学校だけでなく家庭や地域で積み、多くの学びから成長していく。社会に出てからも学びは続く。そうした人との関わりの中でインテグリティが醸成されてきていたように思う。それが薄れ、企業人として自律的な規範としての倫理観が身につけられていないのであれば、一企業における研修だけでは追いつかないのではないかとも考えてしまう。

いずれにしても、組織全体にインテグリティが浸透している企業は信用力アップにつながり事業性評価の点数も高い。ただ往々にして中小企業にはそうした研修に余裕がないのが実情であろう。ならば自らの仕事ぶりを通して社員に示すしかないと思う。コンプライアンスの適否で企業継続が左右される時代ともなっている。情報がさまざまな形で発信されリスクが生み出されていく現代、改めてマネジメントする者はインテグリティを高めて行動するよう意識しなくてはならないと思う。

香川県信用保証協会 会長 西原 義一

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