悩み聴き続けた30年

香川いのちの電話協会 理事長 大須賀 誠さん

Interview

2017.05.18

自殺予防の電話相談「いのちの電話」。全国51カ所で約7千人の相談員が活動している。相談員は全員ボランティアだ。

香川いのちの電話協会が設立されたのは1984年。現在理事長を務める大須賀誠さんは設立準備から携わり、30年以上相談員を経験した。「電話相談は生活の一部。当番の日には気持ちと足が、自然と協会に向いていましたね」

仲間と共に開設目指す

大須賀さんの本業は、出雲大社高松分祠の分祠長。仕事の傍ら、長年ボランティア活動を続けてきた。「父の背中を見て育ったからでしょうね」。先代の分祠長だった父は、保護司を務めていた。保護観察処分となった少年を含め、たくさんの子どもたちの世話をした。「自宅にはいつも十数人いて、にぎやかでした」

1966年に早稲田大学を卒業後、國學院大學で神職について学び、出雲大社での研修を経て68年に高松分祠に帰って来た。

初めて参加したボランティアはBBS(Big Brothers and Sisters Movement)。保護観察を受けている少年少女をはじめ、悩みを抱える子どもたちの兄や姉のような存在となり、勉強や遊びを通して自立を支援しようという活動だ。

当初から「子どもにお兄ちゃんと呼ばれるうちは続けよう」と考えており、30代半ばでBBSの活動を終えた。その頃交流した少年たちとは、今も年賀状のやり取りが続いている。

新たな活動を始めたいと思っていた時、いのちの電話を知った。82年から仲間と共に準備を進め、香川いのちの電話協会は全国で18番目に誕生した。
「香川いのちの電話」開設3周年

「香川いのちの電話」開設3周年

電話相談員になるには2年の研修が必要。1年目は座学で心理学などを学び、2年目は実習を行う。修了後、協会の認定を受けて、初めて相談員として活動できる。

寄せられる相談は病気や経済的な問題、人間関係の悩みなど。大須賀さんが心掛けてきたのは、自分の意見を押し付けないことと、相手に関心を持つこと。とにかく話を聞いた。

「簡単に相手の気持ちが分かると言ったり、こうしたらいいと助言したりするのは無責任。相談員は悩みに対する解決方法を示すのではなく、自分で進む方向を決められるようにサポートします」

生命の輝きを感じて

マダガスカルで

マダガスカルで

大須賀さん自身はあまり悩まない方だという。それでも月2回のバレーボールと年1回の海外旅行は気持ちが晴れる。バレーボールは30歳ごろ、近所の人にたまたま誘われて始めたところはまってしまった。

年1回の旅行は、妻と一緒に出掛ける。特にアフリカがお気に入り。これまでボツワナ、ケニア、マダガスカル、エチオピア、タンザニアなどを訪れた。「サファリに行くと、命がけで走る動物たちの姿を目にします。生命の輝きのようなものを感じて、元気をもらえるんです」。今度はルワンダでゴリラに会いたいという。

自分も成長

高松市市政功労賞を受賞

高松市市政功労賞を受賞

2014年に理事長となった。協会の課題は新しい相談員の養成だ。登録しているのは約170人で、そのうち実働は100人ほど。24時間態勢で電話を受けたいが、夜間の担当者の確保が難しい。相談員の養成講座を毎年開講しているが、応募者数は年々減少傾向にある。今年は6月から開講する予定だ。

「人の役に立っているなんて偉そうなことは言えない。でもボランティア活動によって、確実に自分は成長したなと思いますね」

深刻な悩みに対して、何もできないと思う時もあった。けれど「今晩は何とか眠れそうです」と言われると、大須賀さん自身も少しほっとしていた。

大須賀 誠 | おおすが まこと

略歴
1943年 高松市生まれ
1966年 早稲田大学 卒業
1968年 出雲大社高松分祠
1998年 出雲大社高松分祠長

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