作業療法士の視点で健康経営をサポート

従業員の健康増進に企業として戦略的に取り組む「健康経営」は、経営者にとって企業価値の向上にもつながる重要な要素。健康診断や予防接種の促進など、企業によってさまざまな健康支援がある中で、株式会社SIGN POST代表取締役の田村篤史さんが注目するのは、業務中に生じる「体の痛み」のケアだ。

痛みを感じると業務に支障をきたし、離職や休職にもつながりかねない。認定作業療法士として医療機関で働く田村さんは、「職業病だと我慢しながら働いて、限界が近くなってから医療機関を受診する人が多いが、予防の観点から働く人たちの健康をサポートしたい」と考え、病院勤務のかたわら、かがわ産業支援財団の『かがわ創業塾』に参加。その後、同財団の『起業等スタートアップ支援補助金』も活用しつつ、2024年7月、他県での先行事例をロールモデルに、香川初となるリハビリ専門職の知見を生かした企業向けヘルスケアサービスを立ち上げた。

主な対象は社員数50人以下の中小企業で、大企業のセクション単位での導入にも対応する。業種は問わず、無料診断や現場見学で現状を把握し、従業員の身体的負担がどんな痛みにつながり、ひいては経営上どのくらいの労働損失となっているかを可視化。課題を明確にした上で、全社的なワークショップや運動指導と職業病に対する意識改革に取り組む。月1～3回のペースで1年間伴走し、具体的な労働損失軽減を報告するまでが一連の流れだ。

県の事業成長支援プログラムへの参加をきっかけに、導入を検討する企業も現れ、香川の地域性に合わせた事業展開を模索中。「働きながら家族を介護するビジネスケアラー向けのサポートや、健康経営のコンサルティングなどにも対応できます。経営者目線に立ったトータルケアの提案は、経営者の不安を解消するとともに、従業員にとっても大きなメリットになるのでは」と語っている。