企業に寄り添いハーモニーを奏でる

かがわ産業支援財団 理事長 安松 延朗さん

Interview

2021.06.17

かがわ産業支援財団が入る 香川産業頭脳化センタービルの屋上で=高松市林町

かがわ産業支援財団が入る
香川産業頭脳化センタービルの屋上で=高松市林町

一緒に乗り越え、前へ

「かがわビジネスモデル・チャレンジコンペ2020」の最終選考

「かがわビジネスモデル・チャレンジコンペ2020」の最終選考

起業支援や人材育成、商品開発に経営基盤の強化、さらには販路開拓や、斬新なビジネスモデルを後押しする「チャレンジコンペ」などの顕彰事業まで、かがわ産業支援財団の守備範囲はとても広い。しかし、その根っこにあるのは「県内の中小企業を応援する」という揺らぐことのない精神だ。今年4月、理事長に就任した安松延朗さん(61)は「一番に頼りにしてもらえる存在になりたい」と力強く意気込みを語る。

コロナ禍にあえぐ経営者は多い。昨年5月、財団は緊急の「新型コロナウイルス関連経営相談窓口」を設置した。『売上が減り、運転資金が確保できない』『ある補助制度に採択されなかった。代わりに活用できるものはないか』など、相談件数は1年で1000件を超えた。「苦しい思いや窮状を訴えておられる経営者がいます」

財団では相談内容に合わせて、補助制度や無利子の融資制度を紹介したり、経営状況をヒアリングし資金管理についてアドバイスしたりと、中小企業診断士などのスペシャリストが全面的にバックアップ。中には、『こんな大変な世の中だからこそ、以前から夢だった創業にチャレンジしたい。法人化の手続きなどをサポートしてくれないか』という相談もあった。金融機関からの融資や事業計画書のつくり方をアドバイスするなど、無事、創業を実現させた。安松さんは「コロナの影響は業種などによって濃淡がある。でも、『次へ』という意欲のある企業が多いと感じる」と話す。「今の厳しい時期、私たちも一緒になって乗り越え、前へ向かって進めるよう応援していきたい。しっかり“寄り添う”のが私たちの最大の使命だと思っています」

「人との繋がり」に感謝

学生時代は法学部。憲法や行政法など様々な法律を学んだが、中でも一番好きだったのが「民法」だ。「隣の家から庭木がせり出してきている。『切ってもいいのは枝か根か』など、暮らしや地域に関することに興味があった。公務員を志したのと何か繋がっているのかもしれませんね」

1982年に香川県職員に採用。20代から3回配属された健康福祉部関係では、生活保護制度に携わり、生活困窮者らを支えるケースワーカーも務めた。県民のがん検診の受診率を上げようと、保険会社とタッグを組んでの普及活動にも力を注いだ。水資源対策課では渇水対策に尽力。課長時代に完成したのが、三豊市の調整池「宝山湖」だ。観光交流局長時代には、瀬戸内海に浮かび上がるプロジェクションマッピングで注目を集めた「香川ウォーターフロント・フェスティバル」などで地域の盛り上げに一役買った。

これまでのキャリアを振り返る中で、安松さんが何度も口にするのが「人との繋がり」だ。「私一人でできることなんて何もなかった。でも、自分のまわりやそれ以外の、いろいろな人と関わり合うことでここまで歩んでこられた。本当に人に恵まれたと感謝しています」

未知の領域にチャレンジ

専門家による経営相談の様子

専門家による経営相談の様子

趣味は合唱。小学生の時、「コンクールに出場するのに人手が足りないから」と先生に駆り出されたのがきっかけだった。だが、次第に魅力に引き込まれ、高校、大学と合唱部に。「うまくハーモニーを奏でられた時、いわゆる“ハモった時”の心地よさは最高ですよ」と頬を緩めながら、こう続ける。「私たちは、常に“ハーモニー”をしているのかもしれません」

合唱には、主旋律と副旋律があり、複数の人が複数の声部に分かれて一緒に歌う。大事なのは文字通り「ハーモニー」、調和することだ。「一人一人が我を張り過ぎると、決して美しいハーモニーはなりません。仲間の歌声に耳を傾け、ちょうどいいボリューム感で歌わなければならない。多くの人と繋がりながら活動していく組織や社会と、大いに通ずるところがあると思います」

現在も男声と混声の社会人合唱団に所属している。専門は高音パートの「テノール」で、「なかなか“主旋律”は担当させてもらえません」と笑う。コロナ禍もあり、しばらく活動できていないが、「いつかまた、仲間たちと歌いたいですね」

県職員として、長らく「人の暮らし」を見つめてきた。財団がフィールドとする「ビジネス」や「産業」は全く未知の領域。しかし、安松さんに臆する様子は微塵もない。「根底にあるのは全て『人との縁』です。縁がきっかけになり、思わぬところで繋がりが生まれることもある。職員たちにも縁を大切にしてほしいですね」。新たな分野で、これまでとは違ったハーモニーを奏でていく。「私たちの仕事は、前を向いて進んでいく企業の皆さんを支えること。私たち自身も前を向き、失敗を恐れずチャレンジしていきたいと思っています」

篠原 正樹

安松 延朗|やすまつ のぶあき

略歴
1959年 高松市生まれ
1978年 高松高校 卒業
1982年 一橋大学法学部 卒業
     香川県 採用
2007年 政策部水資源対策課長
2014年 商工労働部観光交流局長
2015年 交流推進部長
2018年 審議監
2020年 香川県 退職
     かがわ水と緑の財団 理事長
2021年 かがわ産業支援財団 理事長

公益財団法人 かがわ産業支援財団

住所
香川県高松市林町2217-15 香川産業頭脳化センタービル2F
代表電話番号
087-840-0348
設立
1984年
社員数
95人
事業内容
1.新産業創出及び地域産業革新の支援

2.地域企業の経営基盤強化の支援

3.産業技術の高度化の支援

4.科学技術の振興の支援

5.下請中小企業の振興の支援

6.創業支援、ベンチャー企業育成及び産業の高度化等のための施設の運営

7.香川県知事の指定を受けて行う県有施設の管理及び運営

8.その他この法人の目的を達成するために必要な事業
地図
URL
http://www.kagawa-isf.jp/
確認日
2022.06.16

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