「身に着けて楽しい」で日本文化を伝えていく

テキスタイルブランドYokke Pokke(ヨッケポッケ) デザイナー 磯野藍さん

Interview

2020.04.16

3月24日~29日、三豊市の「暮らしの森」で開催した展示会で

3月24日~29日、三豊市の「暮らしの森」で開催した展示会で

テキスタイルブランドYokke Pokkeは「たくさん」を意味する讃岐弁の「よっけ」と、便利で夢が詰まっているというイメージから「ポケット」を合わせて名付けられた。生地作りから商品開発まで手掛けるデザイナーの磯野藍さん(33)は、三豊市出身で東京を拠点に活動する。

「身に着けて楽しい日本文化」をテーマに、全国の郷土玩具や民芸品をモチーフにして生地をデザインする。バッグやスカーフをよく見ると、香川県の張子虎や北海道の木彫り熊などが描かれている。生地の製造や縫製は国内の工場に依頼。日本でのものづくりにこだわる。

「伝統的なものをカラフルに表現すると、若い人たちにも面白がってもらえるのではと思いました。日本の地場産業を盛り上げたいという気持ちもあります」
右奥のポーチは石川県の「加賀八幡起上り」、左は熊手をモチーフにしている

右奥のポーチは石川県の「加賀八幡起上り」、左は熊手をモチーフにしている

磯野さんは2009年に立命館大学を卒業後、上京。アパレルメーカーで総合職として働いた。ものづくりにもっと近づきたいと、12年に帽子やマフラーを作る服飾雑貨メーカーに転職。デザインから生産管理まで担当したが、服飾やデザインを専門的に学んでいないことに引け目を感じていた。

励みになったのは社長の言葉だ。「やる気さえあればしたいことは実現できると言ってくれて。とりあえずやってみようという会社だったので、勉強しながらたくさんデザインしました。1年で100パターンぐらいは描きましたね」。14年、磯野さんがデザインしたマフラーが、ニューヨーク現代美術館のショップ「MoMA Design Store」で販売されることになった。デザインが認められたと、自信がついた。

2社のメーカーで仕事を経験し、改めて自分が作りたいものは何かを考えた。雑貨だけでなく生地作りから手掛ければ、もっと自由に表現できるのではないか――。17年、ヨッケポッケを立ち上げた。「人の倍以上、努力しなければと今も思っています」
ヨッケポッケオリジナルの張子虎

ヨッケポッケオリジナルの張子虎

北海道で小さな木彫り熊が並んでいるのを見た時、とてもかわいいと思った。それから民芸品や郷土玩具に興味を持つ。いろんな場所に出かけて、土産物店や道の駅で見た工芸品がデザインの基になる。

作りたいものがあっても、縫製などの協力工場探しには苦労した。何十件と電話をかけ、ほとんど話を聞いてもらえなかった。展示会に出展し少しずつ人脈が広がると、協力工場も卸先も増えていった。実店舗での販売は、東京の雑貨店に加え、香港でも取り扱いがある。「いつか『マリメッコ』などテキスタイルが生活に溶け込む北欧で、展示・販売してみたいですね」

郷土玩具そのものの制作も始めている。地元の職人と一緒にオリジナルの張子虎や鳩笛(青森県)を作る。シリーズ化し、種類を増やしていきたいという。香川の土産物づくりも実現したいことの一つだ。憧れは、琴平町出身で画家やデザイナーとして活躍した和田邦坊(1899~1992年)。「渋さとかわいさがあって、飽きが来ない。邦坊さんが手掛けた商品のように、何十年と残る香川のお土産を作りたい」

来年までの法人化を目指し、いずれは東京と香川の2拠点で活動することを考えている。

鎌田 佳子

磯野 藍|いその あい

略歴
1986年 三豊市生まれ
2005年 香川誠陵高校 卒業
2009年 立命館大学 卒業
アパレルメーカー、服飾雑貨メーカーを経て
2017年 「4代目磯野商店」の屋号でテキスタイルブランド「YokkePokke」を創業

Yokke Pokke(ヨッケポッケ)

事業内容
渋谷スクランブルスクエア、ギンザシックス、ルミネ新宿店内の雑貨店、三越伊勢丹グループ、横浜高島屋、岡山県立ミュージアムショップなどで、オリジナル商品を販売
URL
https://www.yokkepokke.com
確認日
2020.04.07

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