障害者の就労と自立への意欲を応援したい

社会福祉法人朝日園 理事長 壷井 邦子さん

Interview

2013.04.18

▲朝日園のみなさん(前列右から2番目が壷井邦子理事長、前列左端が障害者支援施設朝日園の髙橋英雄施設長)

▲朝日園のみなさん(前列右から2番目が壷井邦子理事長、前列左端が障害者支援施設朝日園の髙橋英雄施設長)

1976年、四国で初めて、障害者の授産施設として開園した朝日園。現在は通所、入所合わせて約80人が利用しています。主に印刷業務と軽作業を行っていて、かつて年賀状印刷で〝日本一〟になったこともあります。壷井邦子理事長(69)は初代理事長の「報恩感謝」の遺志を継ぎ、障害の有無にかかわらずいきいきと働ける職場づくりに尽力しています。
「相当悔しい思いをしたようでした」。初代理事長の白井要平さんは、戦争で左腕を失ってしまった。終戦後、職場に復帰したが、どれだけ働いても一人前に扱ってもらえず、憤りを覚えた。「これからは木箱ではなく、段ボールの時代だ」。そう直感した白井さんは、段ボールを扱う会社を起こした。

経営が軌道に乗ったころ、長年温めていた思いを形にする「朝日園」を開園。「障害のある人も手に職を」。自分の経験に基づいているから、利用者の視点に立った施設運営ができた。しかし、「社会で守らなければならない人を働かせるなんて」との非難もあった。仕事をして給料をもらい、欲しいものを買う。そんな「当たり前」のことを実現させたかった。
朝日園では、通所と入所の両方で、施設利用者の経済的自立を図る。それぞれの障害の程度や生活能力に合わせて訓練を行い、施設内で就労。一般企業への就職も視野に入れる。

当初は木工や裁縫など、何をすればいいか模索していた。そんな中で始めたのが印刷だった。印刷業務は作業工程を細かく分けられるため、一人ひとりの負担が少ない。作業は、文字入力や編集・デザインを行う印字科と、印刷機の操作をする印刷科に分かれる。施設職員が支援しながら進めるため、利用者も安心だ。
▲エコバックの持ち手を作る

▲エコバックの持ち手を作る

1978年からは年賀状の印刷を始めた。まだ手書きが主流だったが、職員一丸となって営業に走り回り、年賀状印刷の注文を受けた。やれるところまでやろうと、掲げた目標は「年賀状印刷で日本一に」。印刷業務を行う全国の授産施設の中で、見事に年賀状印刷枚数一位に輝いた。それから得意な商品も増え、封筒、名刺、カタログ、パンフレットなどさまざまなものの印刷を手掛けている。

最近では、古新聞を使ったエコバッグ作りに取り組んでいる。持ち手や底板などパーツごとに担当を決め、作業に当たる。完成品は、2㍑のペットボトルを3本入れても大丈夫。しっかりとした作りだ。バッグの表面になる記事で、雰囲気ががらりと変わる。新聞のどの部分を使うかで、色も異なり面白い。大きさや形を変えれば用途も広がる。
朝日園の工賃は、香川県の障害者工賃の平均月額を上回っているが、それでもまだまだだと言う。「県全体の水準の底上げが必要。障害があっても仕事をして、自立して暮らせるようにするのが目標です」。朝日園は、県内約70の施設で組織する香川県社会就労センター協議会の事務局も担う。髙橋英雄施設長が同協議会の理事長も務める。お菓子やかばんなど、施設で行う新たなものづくりに可能性を感じている。

壷井 邦子 | つぼい くにこ

社会福祉法人 朝日園

住所
香川県木田郡三木町池戸931-6
沿革
1975年 社会福祉法人 朝日園 創設

 76年 障害者支援施設 朝日園 開園

地図
確認日
2013.04.18

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ