モダンと伝統の融合を模索

寒川建築研究所 代表取締役 寒川 洋次さん

Interview

2022.09.01

設立は1967年。祖父の代は商業建築をメインに手掛け、戦後の高松の商店街復興にも大きく貢献した。父の代になって一般建築へと主軸が移り、「全国を飛び回り地域活性化にも関わる父に憧れて、建築の面白さを学びました」という寒川さんが3代目。「建築の魅力は『形』になるだけでなく、それを使ってくれる人がいること。誰かと一緒につくり上げていく過程も楽しいですね」

東京で就職した当初から「いずれ独立する」と決めており、会社もその思いを汲んで、戸建てから大規模なビルまで幅広い経験のチャンスを与えてくれた。東日本大震災をきっかけに香川に戻った時は「もう少し東京で」との思いも残ったが、「スキルと人脈、どちらも大事というのが父の教えで、30代でしか育めないご縁が香川にありました。振り返ればちょうどいいタイミングで戻ってきたと思います」

代表取締役を務めつつも「本来はプレイヤー向き」と自認し、規模を大きくするよりは自分の目が届く範囲でやりたいことを追求する方を選ぶタイプ。高度な専門知識を求められる医療建築で強みを発揮しつつ、公共施設、オフィス、宿泊施設、商業建築など全国で多くの実績を築いている。東京で学んだコンペのノウハウを生かし、質量ともに徹底的に作り込む提案で多くの案件を勝ち取ってきたが、ある時、いつものように作り込んだプレゼンが競合他社の「津波のリスクが高い土地だから、なくなるかもしれない前提で簡素な建物を」の一言に負けた。「相手に何が響くかを的確につかむ大切さを学び、それ以降はワンコンセプトでわかりやすい提案に切り替えました。とはいえ、どんな小さい仕事でも大規模案件と同じ熱量で取り組む姿勢は変わりません」。依然高いコンペ勝率を誇るかたわら、相談を受ければ種別規模に関わらず一期一会の精神のもと全力で向き合うのが信条だ。

もともとモダンな建物が好きだったが、大学時代は「社会に出てから触れる機会の少ないことを学ぼう」と日本建築を専攻していた。その知識を生かす仕事をしたいという思いをずっと温めている。「今は和室のない家も珍しくなく、本格的な日本建築を手掛けるのは難しい時代ですが、香川の伝統産業とコラボして、伝統とモダンを兼ね備えた新しいものができないかと模索しています」。祖父や父の代から続く縁と実績を糧に、次世代の建築設計の在り方を見すえている。
道の駅くるくるなると(徳島県)

道の駅くるくるなると(徳島県)

戸塚 愛野

寒川 洋次 | さんがわ ようじ

略歴
1999年 香川県立高松高等学校卒業
2006年 早稲田大学大学院 理工学研究科建築学修了
2006年 株式会社プランテック総合計画事務所
2011年~ 寒川建築研究所
主な受賞歴
・高知県木の文化賞(道の駅よって西土佐)
・日本漆喰協会賞(道の駅よって西土佐)
・高松市美しいまちづくり賞(認定こども園すまいる)
・香川県建築士会優良賞(かわさきレディースクリニック)

株式会社寒川建築研究所

住所
香川県高松市多賀町2-10-9
代表電話番号
087-862-8784
事業内容
一般建築/公共建築の設計監理・コンサルティング/内装・家具・建具工事等の設計監理/施工
地図
URL
http://sangawa.jp/
確認日
2022.09.01

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