「ものづくりの原点」を50年後にも伝えたい

香川鋳造 専務取締役 仲井 愛美子さん

Interview

2021.04.01

香川鋳造の製造工場。後ろに見えているのが、鋳型を作るライン ※撮影のためにマスクを外しています

香川鋳造の製造工場。後ろに見えているのが、鋳型を作るライン
※撮影のためにマスクを外しています

鋳造(ちゅうぞう)は金属の加工法の一つで、溶かした金属を型に流し込こんで冷やし固める。使用する型を鋳型(いがた)、出来上がったものを鋳物(いもの)と呼ぶ。鋳造の歴史は、紀元前4000年のメソポタミアから始まったとされている。日本でも古くは銅鐸(どうたく)や銅鏡の製造に使われ、今なお続く「ものづくりの原点」とも言える技術。近年人気のある調理鍋「ル・クルーゼ」や「ストウブ」なども鋳物だ。
鋳型に使う砂。敷地内に装置を作り、 砂の再生利用をしている

鋳型に使う砂。敷地内に装置を作り、
砂の再生利用をしている

1964年に創業した香川鋳造(さぬき市)は、機械メーカーが主な取引先で、機械の部品を鋳物で作る。専務取締役の仲井愛美子さん(38)は、「昔から変わらない手法で、人々の生活を豊かにするための機械づくりに携わっているのが面白いですね」と話す。

同社は、樹脂を混ぜた砂で鋳型を作る。鋳型表面をコーティングして、溶かした鉄や銅を入れる。金属が冷え固まったら、鋳型をばらして鋳物を取り出し研磨。旋盤やマシニングで機械加工を施した後に、部品として完成する。作っている部品は、クレーンやショベルカーなどの建設機械、プラスチック製品を作るプラスチック射出成形機、溶接など産業用ロボットに使われる。言わば「ものづくりのためのものづくり」を担う。

なかでも需要が旺盛なのが、プラスチック射出成形機の部品だ。電気自動車の部品やスマートフォンのケース、コロナ禍により使用が増えた衛生用品の容器などを作るため、射出成形機のニーズが増えているという。以前は県内に40社以上あった鋳造業も、今では7社が稼働するのみ。競い合うのではなく、協業で鋳物の需要に応える。
仲井さんは大阪芸術大学で環境デザインを学び、建設・不動産系の会社に就職。香川鋳造の社長である父から「仕事を手伝ってほしい」と言われて、家業に入ることを考えた。「親孝行になるなら」と、大阪から帰郷。しかし、入社して初めて周囲から後継者として期待されていると知り、プレッシャーを感じた。「経営に携わる覚悟ができていませんでした。逃げたいと思うことも…。他社の先輩経営者から『そんな気持ちでいるなら会社にとって迷惑。早く辞めなさい』と言われ、目が覚めました」
鋳物で作った機械の部品。 1㌔から5㌧まで様々な部品がある

鋳物で作った機械の部品。
1㌔から5㌧まで様々な部品がある

それから鋳物と経営の勉強を始めた。デスクワーク中心であるものの、現場のことも分かっておきたいと考え「鋳造技能士」の取得を目指す。17時まで事務所で働いた後、作業着に着替えて工場長から鋳造の工程を教わった。見事2級に合格した。

3年前、専務に就任。「任されたからには、やるしかありません。社長が強い財務体質をつくってくれているので、50年で築いた会社の強みは残しつつ、自分なりに改善点を考え提案しています」

目指すのは100年企業。「先を見据えた持続可能な組織づくり」を意識している。県内の工業系高校を中心に、新卒採用にも力を入れ始め、今年4月は2人が入社した。

「鋳造の『3K』というイメージを変えたい。休憩室の整備など職場環境の改善、業務のデジタル化……課題はたくさんありますが、一つずつ解決していければ。工業製品以外のものも作れたら面白いですね。『下請け体質』から脱却して受注をコントロールできれば、みんながより安心して働けるし、会社の安定感もさらに増すと思います」

鎌田 佳子

仲井 愛美子|なかい えみこ

略歴
1982年 高松市生まれ
2001年 高松北高校 卒業
2005年 大阪芸術大学 卒業
建設・不動産関係の仕事を経て
2009年 香川鋳造 入社
2018年 専務取締役 就任

香川鋳造株式会社

住所
香川県さぬき市末371-1 サンテクノシド内
代表電話番号
087・894・7775
設立
1964年
社員数
45名(うち女性6名)
事業内容
建設機械、射出成形機、産業用ロボット向け鋳物部品の製造
資本金
5,600万円
地図
URL
http://kagawa-chuzo.jp/
確認日
2021.08.31

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