どうすれば相手の役に立つか

アサヒビール高松支社長 山田孝史さん

Interview

2020.04.16

学生時代、好きな野球を見ながら働けるという軽い気持ちで、西武ライオンズの球場内でビール販売のアルバイトをした。ともに働く高校生アルバイト約20人の管理も任されるようになると、どういう作戦で販売するか考えるのがおもしろくなった。

球場内では3社が競い、ビールを扱っていた。内野・外野・指定席…それぞれの席にいる客層によってどの商品を勧めるか、どう売り子を配置すれば売り上げが上がるか。「狭い球場内とはいえ、他社メーカーとシェアを競うのは、当時の日本のビール業界そのものというか―。それが、業界に興味を持ったきっかけでした」

希望した営業職に配属されたのは、入社4年後。担当エリア内と隣のエリアにそれぞれライバル社の工場があり、シェアでは苦戦していたが、「逆に失うものはない状況なので、比較的自由に計画して得意先を回れて、やりがいがありました」。心掛けていたのは、相手のために何ができるか常に考えること。頻繁に通い、何かあった時に一番に自分の顔を思い出してもらえる関係づくりを目指していた。

酒類小売販売の規制緩和への動きを受け、スーパーやコンビニなどでもお酒が販売されるようになった。量販担当になり営業のやり方は変わったが、どうすれば相手の役に立つかを考えるのは同じだったという。「スーパーはお酒以外の商品がメインで、生鮮食品や冷凍食品など、力を入れたい商品はお店によって違う。それをよく理解した上で、ビールだけではなく、ワインや焼酎といった商品をどう提案していくか考えるようにしました」

営業としてやりがいを感じるのは、取引先の人の言動から自分が信頼されている、と感じる時だという。「あとは、1987年のスーパードライ発売からシェアが伸びて、2001年にビール類でシェアナンバーワンになった時に、営業の最前線にいられたことがうれしかった」

地域の一員として

「四国遍路を世界遺産に」寄付金目録贈呈式

「四国遍路を世界遺産に」寄付金目録贈呈式

取引先の飲食店を訪れることも多く、赴任先の「食」が気になるという。「瀬戸内なので香川は魚料理が多いのかと思っていましたが、ステーキや焼肉店が多くないですか?」

地域に独自の食文化があるように、お酒も土地によって嗜好が違う。それをくみ取りながら、各事業場が地域に根差した営業活動を目指している。「そのためには、私たちがまず地域を知り、地元で力を入れているものを応援したい」

その一環として、08年から植樹をはじめ環境保全活動を続けている。11年からは商品の売り上げの一部を「四国遍路を世界遺産に」の活動に寄付している。「ゆっくり、少しずつアサヒビールのファンを増やしていきたいですね」

“四国産”の強みをアピール

「香川・アサヒビールの森」で森づくり活動(塩江町)

「香川・アサヒビールの森」で森づくり活動(塩江町)

ビールは、輸送時の振動や温度変化が少ない方がよりおいしい。「そういう意味で、当社の一番の強みは四国に工場があり、できたてのおいしさを味わっていただけることです。ただ、そのことをこれまできちんとアピールできていませんでした」

今後は、各県限定のCMやキャンペーンはもちろん、日々の営業活動でも丁寧に魅力を伝えていく。また、食の多様化に合わせて、店頭に並ぶお酒も多彩になっている。お客さんが何を望んでいるか。しっかりアンテナを張りながら、ビールだけではなくさまざまな提案をしていきたいという。

石川恭子

山田 孝史 | やまだ たかふみ

略歴
1966年 東京都生まれ
1985年 東京学芸大学附属高校 卒業
1991年 早稲田大学政治経済学部 卒業
    アサヒビール 入社
2009年 中部広域支社広域営業MD担当副部長
2012年 営業統括本部量販統括部担当部長
2014年 中国広域支社広域支店長
2018年 高松支社長

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