県民目線を忘れず、組織をみる

香川県公安委員会 委員長 泉 雅文さん

Interview

2021.09.16

公安委員会は、県民の代表として警察業務に県民の考えを反映させる役割をもつ。3人の委員で構成され、泉雅文さんは2016年から委員に、21年7月から委員長に就任した。これまで、JR四国4代目の社長として経営改革を進め、現在は相談役。「国鉄時代から事故やトラブルへの対応のため、現在の鉄道警察隊の前身にあたる鉄道公安職員と連携していたこともあり、警察は比較的身近なイメージがありました。JRには鉄道ネットワークで地域を支える使命がある。地域のためにという点では警察も同じだと考え、お引き受けしました」

その活動は、週1回程度の定例会議に出席して、条例改正や事件事故への警察の対応、組織・人事管理の状況などさまざまな報告を受け意見交換するほか、警察署や柔剣道大会などの視察も行う。「思った以上に仕事が多かった。警察が外部の視点を取り入れて組織をよりよくしようとしている姿勢の表れだと感じました」

県民が警察に期待しているのは、“安全安心を守ること”。とはいえ“安心”の感じ方は人によって違う上、価値観も時代によって変わる。「いま、核家族化が進み地域のつながりも薄れているため、昔は家族や親せき、地域で解決できていたような問題も警察に相談が持ち込まれる。安心のために警察に期待される事柄が増えていると感じています」

少林寺拳法から学んだこと

少林寺拳法の練習の様子

少林寺拳法の練習の様子

JR四国で少林寺拳法部の立ち上げに関わったことから、自身も習い始めた。20年あまり続け、現在四段。技の習得も大事だが、何より心の持ち方が変わったという。少林寺拳法は“人づくり”の武道。自分を高め、その力を他者や社会のために役立てる。
 

「人づくりが大事なのは、企業も警察も同じ。特に警察は、危険にさらされることもある仕事。最後は人間としての力が問われる気がします」。働く人が使命感を持ち続けるにはどうすればいいか。「上下関係がある組織の中では、時に意見を言いづらいこともある。業務以外の例えば趣味のつながりがあれば、情報交換も不満を吸い上げることもできる」。企業人としての経験を、風通しのいい組織づくりに少しでも還元できたらと考えている。

中立の立場で

香川県警機動隊の視察

香川県警機動隊の視察

公安委員長として気をつけているのは、バランスだという。外から総論を言うだけでは意味がない。意見を言うためにはある程度、組織のことも知らなければならない。警察の人と信頼関係を築く必要もある。「だからといって、慣れすぎると外部の客観的な視点がもてない。組織の異変にいち早く気付けるようなバランスのいい立ち位置を心掛けています」

世界と比べると、日本では警察への信頼度は高い。「今後も、信頼を寄せられる存在であり続けるために、客観的な目で組織づくりのお役に立ちたいと思います」

石川恭子

泉 雅文 | いずみ まさふみ

1952年 埼玉県生まれ
1976年 京都大学法学部卒業
    日本国有鉄道入社
1987年 四国旅客鉄道株式会社(JR四国)発足
    総務部人事課長
1990年 財務部会計課長
1992年 旅行業事業部業務課長
1995年 JR西日本に財務部次長として出向
1997年 JR四国に戻り総合企画本部経営企画室長
2000年 財務部長
2002年 取締役財務部長
2004年 常務取締役鉄道事業本部副本部長 兼営業部長
2006年 常務取締役総務部長
2008年 代表取締役専務総務部長
2010年 代表取締役社長
2016年 取締役会長
2020年 相談役 現在に至る
2021年 公安委員会委員長
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泉 雅文 | いずみ まさふみ

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