ホールディングス化で 事業に刺激と成長を

四国化成ホールディングス 社長 渡邊 充範さん

Interview

2023.04.06

一昨年7月から稼働を始めた化学品事業の新プラント「TAP-4」 =徳島県北島町の四国化成工業徳島工場北島事業所

一昨年7月から稼働を始めた化学品事業の新プラント「TAP-4」
=徳島県北島町の四国化成工業徳島工場北島事業所

時代にふさわしい組織へ

2023年1月1日、四国化成グループの大きな挑戦が始まった。持株会社体制への移行、いわゆる「ホールディングス化」だ。

グループの2大事業、「化学品事業」と「建材事業」が、それぞれ「四国化成工業株式会社」と「四国化成建材株式会社」に。さらに間接業務を担う「四国化成コーポレートサービス株式会社」を加えた3社を、持株会社「四国化成ホールディングス株式会社」が束ねる。
四国化成ホールディングスを構成する4社のトップ。 左から、四国化成工業・濱﨑誠社長、四国化成ホールディングス・渡邊充範社長、 四国化成建材・眞鍋宣訓社長、四国化成コーポレートサービス・安藤慶明社長

四国化成ホールディングスを構成する4社のトップ。
左から、四国化成工業・濱﨑誠社長、四国化成ホールディングス・渡邊充範社長、
四国化成建材・眞鍋宣訓社長、四国化成コーポレートサービス・安藤慶明社長

会社が大転換を遂げたその同じ日、舵取り役に就いたのが渡邊充範さん(65)だ。「ホールディングス化の大きな狙いは、グループの経営体制の強化と意思決定の迅速化。これからも成長を続けていくには、凄まじいスピードで変化していく今の時代にふさわしい組織でなければならない」と渡邊さんは口調を強める。だがその一方で、「実は会社が組織改革を進めていた頃、『本当にホールディングス化が必要なの?』『正直、これは大変だぞ…』という思いもありました」。苦笑しながら打ち明ける。

四国化成グループと言えば、香川が誇る世界的企業だ。「化学品事業」では車のタイヤ製造に不可欠な、ゴムに弾力を持たせる不溶性硫黄「ミュークロン」が世界2位のシェア。あらゆる電子機器に必要なプリント配線板の銅回路を錆から守る薬剤「タフエース」は世界トップシェアを誇る。

また、住宅や公共施設の内装や外装、門扉やカーポートなどのエクステリアを手掛ける「建材事業」も、機能性や高いデザイン性をウリに、全国各地で「豊かな暮らし」や「快適な空間」を提供している。

これまでは化学品と建材の2本柱が会社の成長を導いてきた。だが、それは同時に「全く違う2つの分野を1つの会社でやってきたということです」

会社はこれからどこへ向かうのかを考えた時、「化学品と建材、それぞれの主張に引っ張られることもあった。思い切った議論や挑戦をするためにも、会社を分けてじっくりやる必要があったんです」

ホールディングス化からまだ3カ月だが、「目に見えてスピード感が出てきている。それぞれの事業に刺激を与え続け、化学品、建材ともに、さらに次のステップへと引き上げていきます」。渡邊さんは目を輝かせる。

成長の原動力「TAP-4」稼働

ホールディングス化に先駆けて、2020年4月に10年計画の長期ビジョン「Challenge 1000」をスタートさせた。2030年までに売上をほぼ倍増の1000億円、営業利益150億円などを目指すものだ。「第1ステージが終わり、今年から第2ステージ突入です。ここまでは順調ですが、さらにスピードを上げていきます」
業界最高水準の高塩素と強アルカリで圧倒的な洗浄力を実現した 「ウォッシュマニア 洗濯槽クリーナー」。黒カビ汚れや気になる 臭いを取り除く、四国化成工業で初めての“B to C”製品

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臭いを取り除く、四国化成工業で初めての“B to C”製品

一昨年、徳島工場北島事業所の新プラント「TAP(Tokushima Advanced Chemicals Plant)-4」が稼働を始めた。つくるのは、半導体の製造工程で使用される「材料」だ。

半導体は超微細な電子回路を持ち、スマートフォンやタブレット、車の自動運転技術や5Gなどの最先端技術を司る。その半導体を形成する材料にも、もちろん高い品質と性能が必要不可欠。「目的とする化合物の合成技術はもとより、ppb(十億分の一)レベルの微量な金属不純物のコントロールなど、極めて高い生産技術と品質管理が求められています」。TAP-4は新商品の試作から量産まで対応できるハイスペックなプラント。化学品事業の新たな成長への原動力になると、渡邊さんも大きな期待を寄せる。

「私たちがこれまで培ってきた技術力と『TAP-4』で、世界を相手にした半導体材料市場の一角に名乗りを上げたいと思っています」

「従業員ファースト」を宣言

中央大学文学部を卒業後、1980年に入社。最初は建材部門の広告宣伝課に配属され、その後は秘書課や経営企画室などを歩んだ。つまり、「技術畑でも営業畑でもない、四国化成初の文学部出身の社長です」

だからこそ、見えてくる景色がある。「化学品事業に対しても建材事業に対しても、視点はフラットだと思う。今いくら強い事業でも、いつまでも安泰ではないし、自信を持ち過ぎるのもよくない。化学品と建材に次ぐ3番目の事業も必要です」

社長に就いた今年の正月、従業員を前に宣言した。

「これからは従業員ファーストでいきます」

顧客、株主、地域…もちろん大切にすべきことはたくさんある。でも渡邊さんは「従業員を大事にしたい」と繰り返す。「みんなに求めたいのは『挑戦』と『成長』。時代の一歩先を行く開発に挑み続け、成長を実感できる環境をつくっていく。従業員が豊かな人生を送れるよう応援するのが、私の役目です」

ホールディングス化によって、2030年はどんな姿になっているのだろうか?「従業員が今を振り返った時、『あの頃は幼い会社だったな』『長足の進歩を遂げたな』と思ってもらえる。そんな会社になっていたいですね」

篠原 正樹

渡邊 充範 | わたなべ みつのり

略歴
1957年 高松市出身
1976年 大手前高松高校 卒業
1980年 中央大学文学部文学科 卒業
     四国化成工業 入社
     広告宣伝課、秘書課などを経て
2002年 経営企画室長
2014年 取締役執行役員 経営企画・秘書統括兼経営企画室長
2019年 取締役常務執行役員 企画本部長兼事業企画室長
2022年 取締役常務執行役員 企画事業推進本部長
2023年 四国化成ホールディングス 代表取締役社長

四国化成ホールディングス株式会社

住所
香川県丸亀市土器町東8丁目537番地1
代表電話番号
0877-22-4111
設立
1947年10月10日(四国化成工業株式会社)
社員数
1223人(グループ・2022年12月)
事業内容
四国化成工業株式会社(化学品事業)
:各種化学工業薬品・医薬品・化学肥料等の研究開発、製造・販売 他
四国化成建材株式会社(建材事業)
:各種建築土木資材・住宅・店舗用製品等の開発、製造・販売 他
四国化成コーポレートサービス株式会社(間接業務)
:経理・人事・コンプライアンス・資産管理に関する支援業務 他
地図
URL
https://www.shikoku.co.jp
確認日
2023.04.06

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