
インクルーシブ教育の先駆
だが、訓練によって自分でボタンを留められるようになった生徒とショッピングに出かけた時、「ほしい服がない」と言われてショックを受ける。「ボタンを留める動作には、本来『この服を着たい』思いが伴うはず。動作は思いを叶え、喜びを味わい、生活の質を向上する手段に過ぎません。いくら訓練してもできないことはあるし、頑張ってもできなかった時の子どもの気持ちがわかりますか? それより障害を補う手軽なツールを活用して、誰でも自分の心を表現できるようにする方が大事ではないかと気づきました」。1990年代半ばの日本では、まだ浸透していなかった考え方だ。
それをきっかけにインクルーシブ教育の研究を始め、2005年からは香川大学教育学部で教鞭をとっている。現在は、大手通信キャリアと連携して障害のある人の生活をサポートするソフトやアプリを開発中。「コロナ禍でICTが浸透し、GIGAスクール端末を通じて使いやすくなりました。ツールを活用して周囲と公平に過ごせるようになると、驚くほど積極的になったり、優れた力を発揮する子もいますよ」
教育の現場で伝える思い

同じ風景を見るためにそれぞれの個性に
合わせて配慮する「公平」の在り方を示す図
4月から、香川大学教育学部附属特別支援学校の校長に就任。今の道に進むきっかけとなった、白血病で亡くなった高校時代の友人の写真をずっと持ち歩いている。「病気で苦しむ子を助けたいという青春時代の情熱からすべてが始まりました。これからも現場の実践と研究の両輪で、子どもたちが障害の有無にかかわらず『生まれてきてよかった』と思える教育環境をつくっていきたい」と語る。
戸塚 愛野
坂井 聡 | さかい さとし
- 略歴
- 1962年 京都府生まれ
1985年 香川大学教育学部卒
香川県立高松養護学校 教諭
1986年 香川中部養護学校 教諭
1994年 香川大学教育学部附属養護学校 教諭
2003年 金沢大学大学院教育学研究科
障害児童教育専攻修士課程修了
2005年 香川大学教育学部 助教授
2013年 同 教授
2015年 同 大学学生支援センターバリアフリー支援室長
2019年 同 大学教育学部附属坂出小学校長
同 附属幼稚園長
2023年 同 附属特別支援学校長
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