新工場が続々稼働 正しい方向へ、正しく導く

大倉工業 社長 福田 英司さん

Interview

2025.03.06

経営ビジョン「Next10(2030)」を掲示する大倉工業本社1Fロビー=丸亀市中津町

経営ビジョン「Next10(2030)」を掲示する大倉工業本社1Fロビー=丸亀市中津町

タイプが少し違う新社長

香川が誇る大手フィルム加工メーカー、大倉工業。食品包装用のプラスチックフィルムなどをつくる「合成樹脂事業」、スマートフォンやタブレットの画質を良くするために欠かせない光学フィルムなどをつくる「新規材料事業」、耐久性に優れた住宅用の柱や床材などをつくる「建材事業」が事業の3本柱だ。
様々な食品包装用プラスチックフィルム

様々な食品包装用プラスチックフィルム

酸素の侵入を防いで食品の消費期限を延ばすガスバリアフィルム「エコラップ®」や、臭いが強い食材の保存やペットの散歩時の汚物処理などに最適な防臭袋「NIOGUARD®(ニオガード)」など、自慢の技術力と営業力で数多くの自社開発製品を国内外へ発信している。

社長は代々、営業部門や技術部門の出身者が務めてきた。だが今年1月1日に社長に就いた福田英司さん(55)は少しタイプが違う。「入社以来、主に経理や財務を担当してきました。いわゆる“事務方”です」

営業も開発も製造も、あまり深くは知らないので……と謙遜する。だが、歴代社長では誰にもなかった大きな強みが福田さんにはある。「会社のお金の流れから事業計画の策定や再編まで、非常に広範囲な経験をしてきましたから。ある程度、バランス感覚を持った舵取りができるんじゃないかと思っているんです」。
スマートフォンやタブレットの画質を高める光学フィルム

スマートフォンやタブレットの画質を高める光学フィルム

入社後、経理部に配属されたのち、若くして会社の中期経営計画を策定するリーダーを任された。まとめた計画は「食品用、自動車用、農業用……様々なフィルムの“汎用品”の強化です。会社の足腰を強くするため、全国の拠点にある汎用品の製造工場を分社化し、より競争力をつけていこうという戦略を立てました」。

分社化第1号は、従業員約140人の「株式会社九州オークラ」。立ち上げから携わり、37歳で同社の社長になった。その後、同じく分社化した関西オークラ(現KS オークラ)では、新工場の建設などで“汎用品ビジネス”を軌道に乗せた。

行く先々で成果をあげたが、「迷いながら、悩みながらの日々だった」と当時を振り返る。「グループ会社とはいえ、技術も営業も知らない若い社長を、社内や取引先、みんながみんな歓迎してくれるわけではありませんでした」。いかにみんなの目線を束ね、理解してもらうか……「時には酒を酌み交わしながら、膝を突き合わせて議論すること。それに尽きますね」。

腹を割ってとことん話し合い、任せるところは任せ、思いを共有していく。「次第に受け入れてもらえるようになり、目線が定まっていきました」。
経理や財務、グループ会社で得た経験などをもとに、2019年には前社長の神田進さんと2人で中心になり、大倉工業グループ全体の経営ビジョン「Next10(2030)」をつくった。売上1200億円、営業利益100億円という目標値に加え、これから力を注いでいく領域、自社の強み、戦略的な投資、サステナビリティへの取り組みなど、「我が社の“現在地”を示し、10年後、2030年の在るべき姿をまとめました。この『Next10(2030)』は何が何でも達成したい。私が社長としてクリアすべき一番の大きな目標です」。

好奇心持ち、失敗恐れずチャレンジを

バランス感覚持った舵取りで「絆を育み、輝く未来を」目指す

バランス感覚持った舵取りで「絆を育み、輝く未来を」目指す

忙しい日々が続くが、休日を自宅で過ごす時、福田さんは土を触る。趣味の家庭菜園だ。キュウリ、トマト、オクラやナスなど夏野菜を中心に育てている。

「自分で食べる分と、知り合いや近所に配る程度です。でも、つくったことのない野菜にチャレンジすると、思い通りにいかなかったり、新しい発見があったり……とても面白いです」。

最近では、黒ニンニクづくりが楽しいという。「一番の目的はリフレッシュですかね。緑や土に触れていると、心も癒やされますし、時には思ってもみなかった仕事のアイデアがひらめいたりもするんですよ」と笑顔で話す。

社長に就任して2カ月余り。「社長になったからこれをやる、ここをこう変えたい、というのは特にないんです」と控えめだが、新たに掲げたテーマからは熱い思いが感じられる。
『絆を育み、輝く未来を』

来年1月にはベトナムで、「新規材料事業」や、将来「合成樹脂事業」も担う新工場が本格稼働する。「現在約15%の海外販売比率を、2030年には30%以上にしたい」と香川から世界を見据える。
住宅の柱や梁のもとになる集成材

住宅の柱や梁のもとになる集成材

さらに三豊市では来年春、スギやヒノキを原料とし住宅の柱や梁のもとになる集成材の製造工場が動き出す。もう一つの事業の柱「建材事業」を飛躍させる期待の新工場だ。

「使用するのは四国の森林資源です。CO₂の吸収量が落ちている古い木々を伐採して加工し、再び新しい木を植える。森の新陳代謝促進に貢献できればと思っています」。

社員たちには「失敗を恐れず、新しいことに好奇心を持ち続けてほしい」と呼びかける。

「これからは環境の変化がますます激しくなる。どの方向が正しいのか分かりづらい時代だが、正しい方向を見定め、みんなを正しく導いていく。そんな社長になりたいですね」。

篠原 正樹

福田 英司 | ふくだ えいじ

略歴
1969年 坂出市出身
1988年 坂出高校 卒業
1993年 香川大学経済学部 卒業
     大倉工業株式会社 入社
2007年 株式会社九州オークラ 代表取締役社長
2009年 大倉工業株式会社 執行役員
     株式会社九州オークラ 代表取締役社長
2010年 大倉工業株式会社 執行役員
     株式会社関西オークラ 代表取締役社長
2015年 執行役員合成樹脂事業部事業支援部企画管理グループ長
2021年 取締役執行役員 コーポレートセンター経理部長
2023年 取締役常務執行役員合成樹脂事業部長
2024年 取締役専務執行役員合成樹脂事業部長
2025年 代表取締役社長執行役員

大倉工業株式会社

住所
香川県丸亀市中津町1515番地
代表電話番号
TEL.0877・56・1111/FAX.0877・56・1230
設立
1947年7月11日
社員数
単独1039人、連結1891人(2024年12月31日現在)
事業内容
各種ポリエチレン製品及びポリプロピレン製品の製造販売、
光学機能性フィルム等の製造販売、
パーティクルボード、加工ボード及び加工合板等の製造販売、
木材加工、宅地造成及び建物建築の販売
資本金
86億1961万6071円
グループ会社
株式会社KSオークラ、株式会社九州オークラ、株式会社埼玉オークラ、株式会社オークラプロダクツ、オークラホテル株式会社(オークラホテル丸亀)、株式会社オークラプレカットシステム、オークラ情報システム株式会社、株式会社オークラハウス、株式会社ユニオン・グラビア、株式会社オークラパック香川、株式会社カントウ、無錫大倉包装材料有限公司、尤妮佳包装材料(天津)有限公司、OKURA VIETNAM CO., LTD.、大倉産業株式会社、オー・エル・エス有限会社、大友化成株式会社、大宝株式会社、大倉工業健康保険組合
地図
URL
https://www.okr-ind.co.jp/
確認日
2025.03.06

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