プロ集団「きゅうかくうしお」と島民による3日間の野外パフォーマンス終了時の様子(写真 Marime Nakagawa)
瀬戸芸の運営に長く携わった三木誠さんは、「客層が確実に変わった。当初はアートファンという人が多かった。今は様々な方が来られ、多様な楽しみ方をされている」と。
先日、「めおん」で隣になったブラジルの男性は、美術に造詣が深く、世界の有名美術館はほとんど回ったとのこと。そんな彼に「なぜ瀬戸芸に来たの?」と直球を投げると、「面白いからだ!」と明快な返答。「瀬戸芸は、アートを通して人々の暮らしや土地の息吹を感じられる。ルーブルではそれはないよ」と。
男木島の福井順子さんは、今回「男木島未来プロジェクト2125」に胸を熱くしたと言います。この作品は、昭和40年生まれの6人の作家の共同作品で、男木島の100年後の未来から島を物語るという内容です。「アーティストの皆さんが男木島の未来を表現してくれた。私たちもやっと未来を語れるところまで来たんだ」と。
瀬戸芸の立ち上げに関わった者として、回を重ねるごとの盛り上がりは、何よりも嬉しいことです。男木島では瀬戸芸が、暮らしや生業の一部に組み込まれ、島の維持・交流・発展を支える社会的装置の一つになっています。
一方、瀬戸芸の一般化の進展はマンネリ化の危険性をも孕んでいますし、船員不足、オーバーツーリズム、猛暑対策など運営上の課題もたくさんあります。
しかし、瀬戸芸の最大の効用は、瀬戸内海の多島美、島々の豊かな自然や人々の営みが、世界に誇れる超一級の財産であり、世界に通ずるブランド力を持つと明確に示してくれたことです。
島々の人口減少、少子高齢化が止まったわけではありません。人々の島での暮らしが続いていくことと、これからの瀬戸芸の充実とは、切り離せない関係にあります。芸術祭は一層、島の人々と共に育っていく仕組みとその運営が求められていくのでしょう。
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