小ロット短納期に応えるポリ袋

丸善工業株式会社 代表取締役社長 三谷 朋幹さん

Interview

2014.06.19

「いつも2~3枚持ち歩いています」と、上着の内ポケットから取り出したのは、小さく折りたたまれたポリ袋。三谷朋幹さん(44)が10年ほど前に始めた習慣だ。

「道端にポリ袋が落ちていたら、袋そのもののイメージが悪くなってしまいますから」。袋を持ち歩けば、出先で目に付いたごみを拾うときや、思わぬ荷物が増えたときに重宝する。丸善工業はポリエチレンを原料とした袋とうちわの製造、印刷、加工を行う。主力製品はポリ袋だ。

創業者である父が、レジ袋の印刷から始めた袋づくり。ポリ袋といっても種類はさまざまで、時代に合う形に変化してきた。強度のある手提げタイプの袋や、洋服店などショップバッグの製造も手掛ける。「商品のブランド力に合う袋を提供したい。見てうれしくなるようなものが作れたら」
近年は、マラソン大会や音楽の野外イベントで使われる袋の受注も多い。パンフレットを入れて来場者に配布するもので、製造数はおよそ1万~2万枚。「イベントに使う袋は、その日に間に合わないと意味がありません。"小ロット短納期"がうちの強みです。海外企業は大量生産に強いですが、少量生産はウィークポイント。低価格競争には参加せず、"小ロット短納期"をさらに強化したい」

小ロット短納期を実現するのが、印刷技術だ。素材がポリエチレンで伸び縮みするため、紙の印刷とはまた手法が異なる。ポリエチレンの状態は季節やその日の気温にも左右される。

ポリ袋の製造方法は2通り。一つは、シート状にしたポリエチレンの表面に印刷し、シートの端を張り合わせて袋にする方法。二つ目は、筒状にしたポリエチレンに印刷し、裁断して袋にする方法だ。

全国で10数台しかないという12色印刷機が、丸善工業には3台ある。色の基本となる4色(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)と特色(4色の掛け合わせで表現できない色)のインクを使って、両面同時に印刷できるものだ。そのため、前者と後者のどちらの製造方法にも対応できる。
三谷さんは入社まで、大阪で配達や清掃などのアルバイトをして生計を立てていた。それは、いろいろな経験がしたいという思いがあったからだ。帰郷のきっかけは、父の身体が心配だったことと、創業時から会社を支えていた当時の常務の体調が思わしくなかったこと。「子どものころから知る人たちが高齢になり、恩返しをしたいと思い、帰ってきました」

入社当時は、社屋や工場の整理整頓に力を入れた。「汚れていては、お客様の信用を得られません」。丸善工業を"外から見る"という視点は、常に忘れずに持つ。社長就任後は、社内の報奨制度を充実させた。「人が資本です。社員に感謝し、育てることに力を入れたい」

月に一度発行する社内報「ふくまる通信」には、表彰された社員の名前がずらり。原料の高騰に頭を悩ませ、何度も交渉を重ねたときも「みんながいれば大丈夫」と社員の存在が支えになった。

2009年からは、社内絵画コンテストを実施。社員の子どもを対象に絵を募集し、優秀作品は袋に印刷する。その時々の最新の印刷技術を用いて製作する丸善工業オリジナルの袋は、商品サンプルの役割も果たし、営業で大活躍している。
「あと2年で会社は50周年。土台をしっかりと築き、次の世代に残していくという気持ちを社員と共有できれば」。三谷さんは昨年、香川大学大学院を修了。信頼性工学を学び、納期の管理方法について研究した。学ぶことを忘れない姿勢が、息の長い経営を支えているのだろう。

三谷 朋幹 | みたに ともき

1970年3月 坂出市生まれ
1988年3月 香川県立坂出高等学校 卒業
1996年3月 丸善工業株式会社 入社
2007年3月 代表取締役社長 就任
2013年3月 香川大学大学院
      工学研究科博士後期課程 修了
写真
三谷 朋幹 | みたに ともき

丸善工業株式会社

所在地
香川県綾歌郡綾川町陶6734(営業本部)
TEL
087-876-1110
事業の概要
ポリエチレンを主原料にした袋・うちわなどの製造・販売
資本金
9700万円
社員数
190人
確認日
2018.01.04

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