
徳武産業本社に隣接する「あゆみシューズ」直営店=さぬき市大川町富田西
常識覆す「片方のみ」「左右サイズ違い」
長く愛され続けてきた理由。それは「徹底的に利用者目線に立った商品づくりと、常識にとらわれないことだと思います」
「あゆみシューズ」は、元々OEM事業を営んでいた德武さんの父・十河孝男さん(現徳武産業会長)と母・ヒロ子さん(同副会長)が二人三脚で生み出した。老人ホームの園長を務める幼なじみから「お年寄りがよく転ぶので心配だ。“転びにくい靴”をつくってもらえないか」と持ちかけられたのがきっかけだった。
福祉施設の利用者500人以上から歩行についての悩みを聞いたり、歩く様子を観察したり……試行錯誤の末に開発された「あゆみシューズ」には、つま先の適度な反り返りや、サイズを簡単に調節できるベルトなど、つまずいたり靴が脱げたりして転ばないよう、様々な工夫が施されている。

「あゆみシューズ」ベルト縫製の様子
靴は“同じサイズのものがペアになっているのが当たり前”とされる。当時は「業界の常識では考えられない」「無謀だ」と非難もされた。でも、「今では“片方”と“サイズ違い”が売上の4分の1を占めます。常識にとらわれず利用者の声に応えた両親の判断は間違っていませんでした」
靴底の高さや足幅の調整など、利用者一人一人に合わせて安価でカスタマイズする“常識破り”な「パーツオーダーシステム」も好評だ。
社員を光り輝かせるために
そんな時に思い浮かんだのが子どもの顔だった。德武さんは6人の子どもを持つ母親でもある。「それぞれに個性があって、やりたいことも違う。同じ親から生まれても、こんなにも違うのか……」。自分のやるべきことが見えた瞬間だった。「会社には特徴も性格も違う様々な社員がいる。それぞれの良いところを最大限引き伸ばして光り輝かせる。そんな環境をつくるのが私の役目だと思ったんです」
徳武産業の社員は約7割が女性。自身の子育ての経験も生かし、産休・育休後のスムーズな職場復帰のサポートなど、家事と仕事を両立できる様々な制度を導入した。男性社員についても「1年間の育休期間は、時期や期間に関わらず、いつとってもかまいません。給与カットもしません。その方が……奥さんが喜びますよね」と笑顔で話す。

生き生きと豊かに過ごせるよう“声なき声”に応えていきたい
社長を引き継ぐ際、父に聞いたことがある。「私にできると思う?」。父は即答した。
「お前ならできる」
鮮明に記憶に残る一言。「私を100%信じてくれているんだ、と。あの時『絶対にやってやる』と心に誓いました」
今でも思い出すたびに勇気が湧いてくる父からの力強いエールだ。
ゆっくりで良いから自分の足で

履きやすく、脱げにくく、脱ぎやすい「瞬感スポッと」
「人生100年時代と言われるが、実際の寿命と健康寿命の差は大きい。でも、足元の不安を解消することで、その差を少しでも埋められると思うんです」。「あゆみシューズ」は“人生最後の靴”とも呼ばれている。「寝たきりではなく、ゆっくりでも良いから『自分の足で歩くこと』にこだわっていきたい。歩くことでやりたいことやできることの幅は広がります。みんなが生き生きと豊かに過ごせるよう、私にはもっともっとやるべきことがあると思っています」
篠原 正樹
德武 聖子 | とくたけ せいこ
- 略歴
- 1972年 さぬき市出身
1991年 志度商業高校(当時)卒業
1993年 徳島文理大学短期大学部 卒業
1997年 徳武産業株式会社 入社
2019年 代表取締役社長
徳武産業株式会社
- 住所
- 香川県さぬき市大川町富田西3007
- 代表電話番号
- 0879-43-2167
- 設立
- 1966年9月
- 社員数
- 80人
- 事業内容
- ケアシューズ(高齢者シューズ)、ルームシューズ製造販売 他
- 資本金
- 1000万円
- 創業
- 1957年5月
- 主な製品
- ケアシューズ(高齢者シューズ)
リハビリ・介護用シューズ
トラベルスリッパ
ルームシューズ - 地図
- URL
- http://www.tokutake.co.jp/
- 確認日
- 2024.10.03
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