何で困っているのか。何が問題なのか。ユーザーの声に耳を傾ける。
徳武産業は1957(昭和32)年、手袋縫製工場として創業した。その後事業の中心を旅行用スリッパや学童用シューズの縫製に移し業績を伸ばす。84年、先代社長の急逝にともない2代目社長に就任した十河さんは事業継承と共にOEM生産を展開したが、独自商品開発の必要性を強く感じるようになっていた。後にヒット商品に育つ「あゆみ」は、まさにそんな時期に産声を上げる。
大手メーカーが門前払いしたというその願いを、十河さんは聞き入れる。介護施設や病院など約30の施設で500人以上の高齢者の足を採寸して試作品を作り、意見や感想を聞いた。「実に多くの人が悩んでおられたんですよ。左右のサイズが違う人、足の幅が広い人、外反母趾や、病気などからむくみがくるなど、悩みは様々でしかも深刻でした」
必要としている人に、必要としているものを届けたい・・・・・・。「靴作りは初めてで苦労の連続だし、試作品を作ってもなかなかOKがでない。1日も早く完成させたいとの気持ちもあって、時間との戦いでしたね」。試行錯誤は続いたが、それだけ使命感は強くなっていた。2年かけて施設用ケアシューズ「あゆみ」は誕生する。明るく、軽く、機能性が高く、そしてリーズナブルを信条に。
小回りがきく会社規模だからこその強み
また「あゆみ」既製ラインでは合わない人のために導入されているのが、パーツオーダーシステムだ。靴底の高さ調節、足位の調整、サイズの特注(SSから8Lまで)、ベルトの長さの変更や開閉方向の変更など、既製靴をベースにすべて本社工場で手作りしている(既製ラインは中国で生産)。ほかにも左右で違うサイズや、片方だけが購入できるなど、消費者の願いに沿った商品作りが際立つ。「大変ではないかと思われる在庫管理も工夫次第。小回りの利く会社規模だからこそ、できることなんですよ」。商品には社員手書きのメッセージカードが添えられ、購入者からはアンケートハガキに、靴を介在にした思いが本社に届けられている。
発売開始の1995年には年間売り上げが200万円だった「あゆみ」シリーズは、2009年7月期では約12億円の売り上げを見込めるほどに成長、徳武産業の柱となった。「発売して2カ月たったころ、施設の夏祭りに招待されました。赤い水玉柄のあゆみシューズを手に『死ぬまでに一度赤い靴を履きたかった。それが叶いました』と言われたんです。うれしかったですね」と当時を語る十河さん。靴を販売することで、感動を分かち合える瞬間を何度も経験した。「お客さまからいただく声を大切に、商品開発に生かしていきます。安全で安心、そして感動が生まれる靴づくりを今後も続けていくつもりです」
十河 孝男 | そごう たかお
- 1947年 三木町生まれ
1966年 香川県立志度商業高等学校(現:志度高校) 卒業
香川相互銀行(現:香川銀行) 入行
1971年 縫製メーカー入社、韓国工場勤務
1984年 徳武産業入社、急逝した義父の後を継いで社長に就任、
現在に至る
- 写真
徳武産業株式会社
- 住所
- 香川県さぬき市大川町富田西
- 代表電話番号
- 0879-43-2167
- 設立
- 1957年
- 事業内容
- シルバーシューズ(高齢者シューズ)、ユニバーサルシューズ、リハビリシューズ、トラベルスリッパ、ルームシューズ
- 資本金
- 1000万円
- 代表取締役
- 十河 孝男
- 社員数
- 50人
- 売上高
- 13億8千万円(2010年7月期)
- 会社設立
- 1966年
- 主な製品
- ケアシューズ(高齢者シューズ)
リハビリ・介護用シューズ
トラベルスリッパ
ルームシューズ - 地図
- URL
- http://www.tokutake.co.jp/
- 確認日
- 2018.01.04
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