博文さんが入社したのは80年のこと。インターネット販売の開始が早く、20年ほど前から取り組んでいる。県外客の獲得と企業イメージのアップ、販売促進を目的に始めた。
店舗での購入者は60~70歳代が中心。「最近は、蒲鉾を食べたことがない子どももいます。10~20年後を考えると怖いですね。若い人にも食べてもらいたい」と博文さん。
知人の依頼で始めた「蒲鉾ケーキ」が好評を得ている。メッセージやイラストをカラフルな蒲鉾で描く。クリスマスや誕生日のお祝いにと、注文する人が多い。
「かつて県内に蒲鉾店は60~70社ありましたが、今はその半分ほどに。製造工程が煩雑ですし、後継者も不足しているようです」と博文さん。「私が入社したころは、作れば売れる時代でしたが今は違います」。ここ4~5年で業界全体が冷え込んでいるように感じるという。
「需要が減っているのは、生活スタイルの変化だと言われていますが、それはつまり、蒲鉾店が消費者のニーズに応えていないということ。どんなものを作り、いかに売るかが課題ですね」
雄太さんの入社後、商品化したのが「季節の蒲鉾」。「女性が買いたくなるような華やかなものを」と考え、四季それぞれに風物詩をイメージした商品を作っている。
その数は、ひな人形、桜、鯉のぼり、紅葉、マツタケなど50種類にも及ぶ。女性から「かわいい」と人気なのは、初夏に販売するそら豆形の蒲鉾だ。2月には、バレンタイン用にハート形も作る。「『蒲鉾』の解釈を広げて、ワインに合うような洋風なものも作りたい。新しい食べ方を提案したいですね」
オーソドックスな蒲鉾や、雄太さん考案の季節の蒲鉾、すり身をパンにはさんでサンドイッチのようにしたものなどが、ショーケースにずらり。なるほど、そこにはお菓子を選ぶような楽しさがある。
雄太さんは「高松や東讃では知ってくれている人も多いですが、西讃での知名度は低い」と話す。さぬきマルシェや、さかいで楽市楽座など食のイベントに積極的に参加し、知名度アップを図っている。
「この先のことを考え過ぎると不安になるばかりなので、考えるよりもできることを精いっぱいしたい。とにかくおいしいものを作ります」。未来を担う雄太さん。蒲鉾の新しい世界を見つめる、その目は輝く。
熊野 博文 | くまの ひろふみ
- 1956年4月23日 高松市生まれ
1980年3月 駒澤大学 卒業
1980年4月 有限会社熊野蒲鉾店 入社
2005年5月 代表取締役 就任
- 写真
熊野 雄太 | くまの ゆうた
- 1984年5月12日 高松市生まれ
2007年3月 龍谷大学 卒業
2007年4月 鈴廣かまぼこ株式会社 入社
2009年4月 有限会社熊野蒲鉾店 入社
- 写真
有限会社 熊野蒲鉾店
- 所在地
- 高松市川島本町195
- TEL
- 087-848-0061
- FAX
- 087-848-3460
- 事業内容
- 蒲鉾、天ぷらの製造・販売
- URL
- http://www.kumanokamaboko.com/
- 確認日
- 2018.01.04
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