お菓子を選ぶような喜びを

有限会社熊野蒲鉾店 代表取締役 熊野 博文さん 熊野 雄太さん

Interview

2013.11.21

県道に面した店舗には、客足が途切れることなく続く。熊野蒲鉾店は、熊野博文さん(57)が代表取締役を務め、息子の雄太さん(29)も経営に携わる。前身は親戚が営んでいた鮮魚商「魚善」で、博文さんの父が受け継ぎ、1957年に熊野蒲鉾店となった。

博文さんが入社したのは80年のこと。インターネット販売の開始が早く、20年ほど前から取り組んでいる。県外客の獲得と企業イメージのアップ、販売促進を目的に始めた。

店舗での購入者は60~70歳代が中心。「最近は、蒲鉾を食べたことがない子どももいます。10~20年後を考えると怖いですね。若い人にも食べてもらいたい」と博文さん。

「そのまま食べられる蒲鉾は、伝統的なファーストフード。低カロリー高タンパク質で、子どもからお年寄りまで食べられる食品なんですよ」

知人の依頼で始めた「蒲鉾ケーキ」が好評を得ている。メッセージやイラストをカラフルな蒲鉾で描く。クリスマスや誕生日のお祝いにと、注文する人が多い。

「かつて県内に蒲鉾店は60~70社ありましたが、今はその半分ほどに。製造工程が煩雑ですし、後継者も不足しているようです」と博文さん。「私が入社したころは、作れば売れる時代でしたが今は違います」。ここ4~5年で業界全体が冷え込んでいるように感じるという。

「需要が減っているのは、生活スタイルの変化だと言われていますが、それはつまり、蒲鉾店が消費者のニーズに応えていないということ。どんなものを作り、いかに売るかが課題ですね」

大学卒業後、神奈川県小田原市の蒲鉾店で2年間の修業を積んだ雄太さん。2009年に熊野蒲鉾店に入社した。雄太さんは「蒲鉾は900年前から食べられていたと言われています。それを途絶えさせるわけにはいかないと思っています」と話す。

雄太さんの入社後、商品化したのが「季節の蒲鉾」。「女性が買いたくなるような華やかなものを」と考え、四季それぞれに風物詩をイメージした商品を作っている。

その数は、ひな人形、桜、鯉のぼり、紅葉、マツタケなど50種類にも及ぶ。女性から「かわいい」と人気なのは、初夏に販売するそら豆形の蒲鉾だ。2月には、バレンタイン用にハート形も作る。「『蒲鉾』の解釈を広げて、ワインに合うような洋風なものも作りたい。新しい食べ方を提案したいですね」
強みは、風味豊かな蒲鉾と、商品数の多さ。すり身にハモを混ぜることで、魚の風味が増すそうだ。店頭には、さまざまな蒲鉾や天ぷらが並ぶ。「ケーキや和菓子を選ぶように、かごを持って商品を見てもらいます」と博文さん。

オーソドックスな蒲鉾や、雄太さん考案の季節の蒲鉾、すり身をパンにはさんでサンドイッチのようにしたものなどが、ショーケースにずらり。なるほど、そこにはお菓子を選ぶような楽しさがある。

雄太さんは「高松や東讃では知ってくれている人も多いですが、西讃での知名度は低い」と話す。さぬきマルシェや、さかいで楽市楽座など食のイベントに積極的に参加し、知名度アップを図っている。

「この先のことを考え過ぎると不安になるばかりなので、考えるよりもできることを精いっぱいしたい。とにかくおいしいものを作ります」。未来を担う雄太さん。蒲鉾の新しい世界を見つめる、その目は輝く。

熊野 博文 | くまの ひろふみ

1956年4月23日 高松市生まれ
1980年3月 駒澤大学 卒業
1980年4月 有限会社熊野蒲鉾店 入社
2005年5月 代表取締役 就任
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熊野 博文 | くまの ひろふみ

熊野 雄太 | くまの ゆうた

1984年5月12日 高松市生まれ
2007年3月 龍谷大学 卒業
2007年4月 鈴廣かまぼこ株式会社 入社
2009年4月 有限会社熊野蒲鉾店 入社
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熊野 雄太 | くまの ゆうた

有限会社 熊野蒲鉾店

所在地
高松市川島本町195
TEL
087-848-0061
FAX
087-848-3460
事業内容
蒲鉾、天ぷらの製造・販売
URL
http://www.kumanokamaboko.com/
確認日
2018.01.04

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