バブル景気の折には、スキー用品の人気が高く、一カ月で3000双を製造した。しかし、バブルがはじけると業績は下降。国内生産では採算がとれないと、多くのメーカーは製造拠点を海外へと移していった。
「仕事が目に見えて減り、人も減りました。何度も辞めようと思いましたね」。手袋以外にも電車の座席シートや雨がっぱなど、縫製の技術を必要とする仕事は何でも引き受けた。
転機が訪れたのは10年前、インターネットオークションにオリジナル手袋を出品したとき。手袋を見た人から「バイク用のものを作ってくれないか」と、問い合わせがあった。その人は、手袋を作るために工房まで足を運んでくれた。
そこで、オーダーメードに目覚めたのだと言う。「お客様の反応が直接分かることで、仕事へのモチベーションが高まります。メーカーからの注文で大量生産していたころには、味わえなかった気持ちですね」。いいものを作っても発信しなければ売れないと考え、ライダーが集うイベントに参加するようになった。
バイクや車のドライビング手袋以外にも、人気が出たものがあった。特撮ヒーローのコスチュームの再現だ。コスプレ用に同じ手袋を作ってほしいとのオーダーを国内外から受けた。高い縫製技術があってこそ実現できたことだった。要望があれば、ファッション用やレディースも作るが、メーンターゲットはバイクや車を趣味とする男性に絞っている。
手袋はシンプルが一番だと言う。「デザインよりも素材と技術が大切。職人が縫いやすいものが、作りに無理のない、良い手袋だと思います」。素材は主にシカ皮を使う。ドライビング手袋であれば、既製品は2万円~、オーダーメードは3万円~。CACAZANのホームページから注文や既製品の購入が可能だ。東京や名古屋に出向き、オーダーメード相談会も開催する。
「自社ブランド自社製造を守りたい。いずれ子どもたちに受け継いでほしいですね」。東京で服飾の専門学校に通う娘も、相談会のときには手伝いにやってくる。「今後も規模は拡大せずに、家内工業で続けたい」
花果山から生まれた孫悟空は、長きにわたって愛されるキャラクターとなった。CACAZANの手袋たちも、故郷を出て各地で愛されている。
出石 尚仁 | いずいし なおひと
- 1958年12月 三木町生まれ
1976年3月 志度商業高等学校 卒業
株式会社 三幸 入社
1979年4月 家業(イズイシ手袋)に従事
- 写真
イズイシ手袋
- 所在地
- さぬき市大川町富田中2024−1
- TEL
- 0879-43-5676
- 事業の概要
- 皮革製手袋の製造販売
- 社員数
- 4人
- URL
- http://www.caca-zan.net/
- 確認日
- 2018.01.04
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