顧客のこだわりを形に

イズイシ手袋 出石 尚仁さん

Interview

2014.08.07

CACAZAN。印象的なその言葉は、イズイシ手袋のブランド名だ。中国の小説『西遊記』にちなんでいる。西遊記に登場する孫悟空は、花果山という山の石から生まれ出た。殻を突き破って外の世界へ出る。代表の出石尚仁さん(55)の名字を、そんなイメージに重ねた。
手袋作りは、50年前に出石さんの母がミシン1台で始めた。当時は、大手メーカーから工程の一部を任されていた。父も母の内職を手伝い始め、出石さんが高校を卒業するころには、20人以上を雇用するまで規模を拡大。一工程を請け負うのではなく、皮革製スキー手袋の製造がメーンになっていた。出石さんは手袋メーカーへ就職した後、家業を継いだ。

バブル景気の折には、スキー用品の人気が高く、一カ月で3000双を製造した。しかし、バブルがはじけると業績は下降。国内生産では採算がとれないと、多くのメーカーは製造拠点を海外へと移していった。

「仕事が目に見えて減り、人も減りました。何度も辞めようと思いましたね」。手袋以外にも電車の座席シートや雨がっぱなど、縫製の技術を必要とする仕事は何でも引き受けた。

転機が訪れたのは10年前、インターネットオークションにオリジナル手袋を出品したとき。手袋を見た人から「バイク用のものを作ってくれないか」と、問い合わせがあった。その人は、手袋を作るために工房まで足を運んでくれた。

そこで、オーダーメードに目覚めたのだと言う。「お客様の反応が直接分かることで、仕事へのモチベーションが高まります。メーカーからの注文で大量生産していたころには、味わえなかった気持ちですね」。いいものを作っても発信しなければ売れないと考え、ライダーが集うイベントに参加するようになった。

バイクや車のドライビング手袋以外にも、人気が出たものがあった。特撮ヒーローのコスチュームの再現だ。コスプレ用に同じ手袋を作ってほしいとのオーダーを国内外から受けた。高い縫製技術があってこそ実現できたことだった。要望があれば、ファッション用やレディースも作るが、メーンターゲットはバイクや車を趣味とする男性に絞っている。

オーダーメードを始めて10年。自分自身でもスキルの向上を感じている。「以前は、いかに無駄なく速く作るかが重要でした。今は、お客様と一対一の勝負。期待を超えるものを作らないと満足してもらえません。いかにいいものを作るかですね」

手袋はシンプルが一番だと言う。「デザインよりも素材と技術が大切。職人が縫いやすいものが、作りに無理のない、良い手袋だと思います」。素材は主にシカ皮を使う。ドライビング手袋であれば、既製品は2万円~、オーダーメードは3万円~。CACAZANのホームページから注文や既製品の購入が可能だ。東京や名古屋に出向き、オーダーメード相談会も開催する。

基本は手袋だが、ほかにも自分にしか作れないものはないかと常に考える。アウトドア好きの出石さんは、バーベキューで使う鉄製フライパンの取っ手カバーを作った。便利でおしゃれだと、こちらも人気商品だ。

「自社ブランド自社製造を守りたい。いずれ子どもたちに受け継いでほしいですね」。東京で服飾の専門学校に通う娘も、相談会のときには手伝いにやってくる。「今後も規模は拡大せずに、家内工業で続けたい」

花果山から生まれた孫悟空は、長きにわたって愛されるキャラクターとなった。CACAZANの手袋たちも、故郷を出て各地で愛されている。

出石 尚仁 | いずいし なおひと

1958年12月 三木町生まれ
1976年3月 志度商業高等学校 卒業
      株式会社 三幸 入社
1979年4月 家業(イズイシ手袋)に従事
写真
出石 尚仁 | いずいし なおひと

イズイシ手袋

所在地
さぬき市大川町富田中2024−1
TEL
0879-43-5676
事業の概要
皮革製手袋の製造販売
社員数
4人
URL
http://www.caca-zan.net/
確認日
2018.01.04

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