観音寺市豊浜町は江戸時代、「讃岐三白」の一つに数えられた綿の生産が盛んで、25年前ごろまでは製綿工場や寝具店が密集していたという。戦後、秀来さんの祖父が「冨士製綿」の屋号で綿の卸売りを始め、父の代で寝具の製造・小売りへと時代に合わせて業態を変化させた。
3代目である秀来さんが事業を承継したのは13年前。「これからは婚礼布団のような高級さや豪華さよりも、一人ひとりの体に合ったものが求められる時代になる」という意見は、両親にすんなりとは受け入れられなかった。「当時は意見が食い違って火花を散らすこともありましたね」と振り返る。
2003年に結婚し、冨士製綿を手伝い始めてしばらくした頃、秀来さんと絵美さんの中で、寝具店としての今後の方向性が明確になった出来事があった。
有名メーカーの豪華な婚礼寝具を買おうとするおばあさんと、シンプルなものがいいという孫の意見の対立を目の当たりにした時「これからは寝具のプロとして、使う人のためになるものを売らなければ」と奮い立った。
睡眠に関する大学の講座を受けたり、寝具の素材を勉強したり。絵美さんの実家である整骨院にも協力を仰いで、体型や体質の違う人々にも合う寝具はどんなものかを徹底的に考えた。「時代に求められる業態に変化し、眠りを売る店として広く認識してもらいたい」という思いから、2006年に屋号を「ねむたや」に改めた。
「扱う商品が違っても、良いものを売ってお客さんに喜んでもらいたいという気持ちは祖父も両親も僕も一緒。あの時それが分かっていれば、ぶつからずに説得できたかも」と笑う。
カウンセリングの後、実際にベッドで眠れる2時間の予約制体験会「寝試し」が人気だ。お客さんには個室での数回の「寝試し」を経て、自分に合うことを確実にしてから買ってもらう。
購入後も連絡し、寝心地に問題があればスプリングの調整に出向く。「売って終わりではなく、お客さんの問題を解決することがゴール。良い睡眠で起きている時間のパフォーマンスをさらに良いものにしてほしい。寝具で一人ひとりの心と体の健康を支えられたら」。より多くの人に知ってもらおうと、FacebookやYouTubeでの動画配信も積極的に行う。
病院や宿泊施設でも採用され始めたねむたやの寝具。今後、住宅メーカーの宿泊型モデルハウスにも導入が決まっている。
鎌田佳子
山下 秀来 | やました ひでき
- 1982年 観音寺市生まれ
2003年 大阪美術専門学校 卒業
山下 絵美 | やました えみ
- 1982年 島根県雲南市生まれ
2003年 大阪美術専門学校 卒業
ねむたや
- 住所
- 香川県観音寺市豊浜町箕浦甲2399-1
- 代表電話番号
- 0120-39-2240
- 事業内容
- 寝具の販売
- 地図
- URL
- http://nemutaya.com/
- 確認日
- 2018.10.18
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