発想力と技術、知的財産で独自商品を開発市場創出型の企業を目指す

マルモ印刷 代表取締役 奥田 章雄さん

Interview

2009.04.02

2008年7月、東京ビッグサイトで行われた第19回国際文具・紙製品展ISOT展で、日本はもちろん、世界も視野に入れた文房具のブランドが誕生した。「ジオグラフィア(geografia)」。ひねりの利いたデザインと、特殊印刷によって完成した文房具ジオグラフィアは大きな話題を集め、開発したマルモ印刷の高い印刷技術を示す格好の機会となった。

意外性のある文房具シリーズが誕生。新展開の始まり

受注型ビジネスが一般的な印刷業界の中で、自社の高い技術力を背景に、新たな市場を創出しようとしているのが、1919(大正8)年に創業した老舗印刷会社のマルモ印刷(本社・観音寺市)だ。
「我が社には高度な印刷加工技術の蓄積があります。しかし、手をつくして営業活動をしても、その技術を使って何かを作ろうと提案をしても、なかなか採用されない。それなら我が社が独自のブランドを立ち上げて発表し、新たな市場を開拓しようと考えたのです」と、同社の代表取締役・奥田章雄さんは語る。

地理・地形・地球をテーマにした文房具の新ブランド「ジオグラフィア(geografia)」は、2007年、経済産業省が推進するプロジェクトで、東京で活躍する男女のデザインユニット「ドリルデザイン」との出会いで始まった。デザイナーが考え出すのは、思いもかけない意外性のあるプラン。それに対してマルモ印刷は技術で応える。両者の共同開発で4アイテムが製品化され、すでに昨年末から有名文具専門店や全国のミュージアムショップに並んでいる。

ジオグラフィア

1. earth's axis,23.4degrees
組み立て式地球儀。平面に置くと地軸が23.4度傾く。どこから見ても大陸部分が海に浮かんで見える素材感は、特許である3Dの印刷技術が生かされている
2. from the river to river
ブックマーク。デザインされた湖の水深が、深い部分をより深く沈み込んで見せる
3. altitude of 200 pages
メモパッド。等高線に沿うカットは、ページの数字を印刷すると同時に等高線のラインでカットできる技術のなせる技

ほかに planning on paper
ノート。都市を道路や川の凹凸をインラインエンボス技術で表現

高い技術力の蓄積が、独自商品を生み出す

創業して90年、マルモ印刷の技術力の発展のカギは、同社の立地にもある。官公庁や地元企業から発注された印刷をこなす一方で、紙生産の拠点である愛媛県四国中央市の紙製品メーカーからの難易度の高い要求に応じてきたことが大きい。商品としてメモパッドやレターセット、シール類・・・・・・。時には思いもよらない注文が出る。奥田さんは「こういう加工はできないか、こんな素材に印刷はできないかという困難な発注にも、私は『できない』とは決して言わない。社員にもそう指導してきました」。高度な技術を要するものは持ち帰り、社内で研究を重ねて要求に応えていく。実現に向けて印刷機メーカーと共同で開発を行ったり、高性能機の導入を図ったりしたことが、その後の独自商品開発に繋がった。


まず独自商品として形になったのが、2004年に製品化した「ファイルDEメール」。「会社案内などの資料はクリアファイルに入れて送付されることが多い。しかし多くの人は中身を取り出したら封筒は捨ててしまう。じゃあ、ファイルと袋が一緒になればどうなのかなと発想したんです」。封筒の機能はそのままに、ファイルのミシン目に沿って2片を切り取ればクリアファイルとして使える。再利用できるから開封されやすい。企業名が印刷されたファイルは広告にもなる。初年度売上が2000万円だった商品は今や2億円を超え、同社の売上の2割を占めるヒット作となっている。「アイデアは生活の中にありましたが、製品化できたのは技術があってのこと」と奥田さん。

オリジナリティーで、市場創出型の企業へ

印刷業界は厳しい時代が続いている。資材価格の値上がりと、企業の広告費の抑制が続くなか、業界では供給の過剰と低価格化の競争がますます激しくなるばかりだ。これまでの受注型の下請け体質からの脱却が存続のポイントになるのは必至だ。


独自開発の商品やブランドの立ち上げなどを経て、奥田さんは「デザインとアイデアなど発案の豊かさ、知的財産権利を持つこと、そして確かな技術力。この3点がマルモ印刷の新たな路線を示したと考えています」と語る。ジオグラフィアは、企業ブランドとして全国での展開の可能性をもたらした。更に台湾の大手書店との取引も始まり、次はアメリカへ・・・・・・と夢は拡がる。「まだまだ印刷会社としてのベースは受注型にある。しかし今後は事業構造の軸足を、受注型から新しい事業へと、少しずつ移していきたい。他社が真似できない技術で、継続的な成長ができる企業を目指します」

奥田 章雄

株式会社 マルモ印刷

住所
香川県観音寺市八幡町1-10-33
代表電話番号
0875-62-5856
設立
1919年
社員数
54人(パート従業員含む)
事業内容
一般印刷、包装資材、紙加工製品、樹脂製品(ファイル)
沿革
1919年 丸茂印刷創業
1957年 5月 株式会社マルモ印刷所設立
1985年 3月 初の4色機を導入
1991年10月 豊中工場へ移転
2001年 8月 現社名に変更
2003年 3月 UV印刷機・スクリーン印刷機導入
2004年 4月 ファイルDEメール特許出願 実用新案登録
      意匠登録 商標登録 発売開始
2008年 7月 第19回国際文具・紙製品展ISOT出展
2008年11月 「geografia」 発表
      「geografia」 発売開始
地図
URL
http://www.marumo-print.co.jp
確認日
2009.04.02

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