空調、電気、水… 世界を照らす“星”になる

星電 社長 永原 務さん

Interview

2023.03.02

高松市木太町の星電本社

高松市木太町の星電本社

“モノが言える”プロ集団

星電は、工場、企業のオフィスや商業施設、学校や病院などの空調設備工事で香川県内トップクラスの売り上げを誇り、給排水衛生設備、配電、配管、太陽光発電システムの施工なども手掛けている。「建物がどんなに立派でも空調や電気が無いと快適には過ごせない。私たちが建物の“血液”や“神経”を生み出しているんだと自負しています」。創業者で社長の永原務さん(65)は胸を張る。

星電の強みは、設備工事の徹底した一貫管理にある。「この業界では、担当するのは設計だけ、工事だけ、という業者も多い。でも私たちは、設計・施工から工程管理にメンテナンスまで全部やる。それがお客さんの安心や信用に繋がっていると思います」
東日本大震災をきっかけに自社開発した蓄電池内蔵型「太陽光発電街路灯」。 非常時にUSBやコンセントが使用できる。太陽光発電無しで5日間の点灯が可能

東日本大震災をきっかけに自社開発した蓄電池内蔵型「太陽光発電街路灯」。
非常時にUSBやコンセントが使用できる。太陽光発電無しで5日間の点灯が可能

星電には、工事施工管理士や技能士、建築士などの有資格者がずらり。国家試験対策で講師を招いて勉強会を開くなど、資格取得を会社で全面的にサポートしている。目指すのは“資格もあって腕も良い”プロフェッショナル集団だ。

永原さんが掲げるのは「実修実証」の精神。高い技術や技能を修め、身につけたものを社会に示し、役立てていく。香川ともゆかりがある京都・醍醐寺の開祖、理源大師が遺した言葉だ。「確かな技術と知識を身につければ、図面や工程の良し悪しを判断できる。良くない箇所があれば『こうした方が良い』と指摘し改善できる。人に言われてやるだけじゃなく、自ら考え実行する。そんな“モノが言える”人間を育てていきたいと思っています」

「低炭素社会」実現に貢献

永原さんは、香川県内の空調業者90社程が加盟する県冷凍空調設備工業協会の会長でもある。“会長”として今力を入れているのが、温室効果ガスの排出をゼロにする「カーボンニュートラル」だ。

温室効果ガスと言えばCO2を思い浮かべるが、CO2の数百~1万数千倍の温室効果を持つのが「フロンガス」だ。

「空調機には、熱をコントロールする冷媒の役目を果たすフロンガスが欠かせません」
県冷凍空調設備工業協会が行う溶接技術の研修会

県冷凍空調設備工業協会が行う溶接技術の研修会

しかし、例えば10tのフロンガスが積まれた空調機を出荷した場合、十数年後の廃棄時にそのまま空調機に残っているのは3t。つまり7割ものフロンガスが何らかの形で空気中に漏れていることになる。「原因の一つに施工不良があります。配管など表面はきちんとくっついているように見えても、内部にほんのわずかな隙間があったり…」

そこで永原さんが取り組んでいるのが溶接技術の訓練だ。星電本社の隣に研修所を設け、協会会員企業の技術者向け研修会を定期的に開いている。「本来なら、他社の技術者を訓練することなんてないんです。『星電はきちんとやってくれるので星電に頼もう』となるので。でも、そんなことは言っていられない。業界で一丸となって地球温暖化を防いでいく。自分たちのことだけを考えるのではなく、もっと広い視野を持たなければなりません」

今に繋がる世界巡った日々

永原さんは異色の経歴を持つ。幼い頃から機械いじりが好きだったが、「世界を見てみたい」という夢もあった。

海員学校などで学び、外国航路を回る船の機関士になった。仕事は発電機やエンジンの修理など。1年のうち10カ月は船に乗り、2カ月は休む、という生活を7年程続けた。「思い出を挙げるときりがありませんが、中でも印象深いのはいろんな国の人と出会えたこと。日本人とは考え方が全く違いますから」

世界100カ国程を回ったところで陸へ上がり、人生次のステップへ。厨房機器メーカー勤務を経て、1985年、28歳で起業。空調機器のメンテナンス業を始めた。
最初は分からないことだらけ。教えてくれる人もいない。様々な現場に足を運び、スケッチしたり写真を撮ったり…独学で少しずつ技術を身につけていった。すると、「人が足りないから応援に来て」と声がかかるようになり、メンテナンスから設計・施工へと領域を広げていった。「苦しいことばかりでしたが、今振り返ると楽しかったですね」

近年、タイやバングラデシュにも進出。まだまだ整備されていない空調や水質浄化、太陽光発電設備の設計・施工に加え、現地の孤児院支援なども行っている。「事業がうまくいくかどうかは分からない。でも、その国が少しずつ発展していく過程に何かしら貢献できているのならうれしい。船乗りとして世界中を巡った日々が今に繋がっているのかもしれませんね」と永原さんは優しく微笑む。

社名の「星」には強い思いがある。「船はレーダーや無線が壊れても星があれば大丈夫。目的地へも行けるし、帰ってくることもできる。暗い世界でも明るく照らす、星のような会社にしていきたいですね」

篠原 正樹

永原 務 | ながはら つとむ

略歴
1957年 善通寺市生まれ
    外国船機関士、業務用厨房機器メーカー勤務を経て
1985年 星電サービス(現株式会社星電)創業
    代表取締役社長兼CEO

株式会社星電

住所
香川県高松市木太町2082-8
代表電話番号
087-832-2870
設立
昭和60年12月15日 (星電サービス)
社員数
50名
事業内容
空調、衛生設備工事の施工業務
空調機のメンテナンス業務
照明・住宅設備機器及び関連商品の販売
電気工事
建築
環境商材
地図
URL
http://www.n-seiden.co.jp/
確認日
2023.03.02

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