多様なニーズに細やかに応える技術とシステム

朝日段ボール

Tec✕Tec

2022.05.19

反りのないまっすぐな板状の段ボールシートを作るのが難しい。

ものを運ぶ時に、商品を保護する目的で使う段ボール。最近は、災害時に避難所の簡易ベッドとして利用されるほか、何度もリサイクルされることから環境にやさしい素材として注目されている。段ボール箱として組み立てられる前の紙は「原紙」。2枚の原紙の間に、波型に成形した原紙を芯として挟んで貼り合わせ、三層構造の「段ボールシート」をつくる。芯の部分は三角形をつなぎ合わせたような「トラス構造」になっており、これによって強度が保たれる。

一方で、紙は生き物のようなもので、季節、気温、湿度などの条件が変わることによって反りが発生する。三層構造であるがゆえに、紙を3枚貼り合わせシートを“まっすぐに仕上げる”ことが難しい。

段ボールを製造する企業は全国にあるが、段ボールシートの成形ができるのは1割ほど。朝日段ボールは、段ボールシートの成形から製箱まで一貫してできる数少ない企業の一つだ。

多品種少量生産のオーダーに対応

段ボールシートが完成したら、製箱工程となる。必要な大きさにカットされた段ボールシートに印刷して型抜き、折り目や切れ込みを入れる。効率を考えれば、少品種で大量生産がいいのだが、朝日段ボールは多品種少量生産の「オーダーメイド方式」で、お客さんの多彩なニーズに応えている。

それができるのは、数も形も印刷もバラバラの数千件の受注を、どの工程をどの順番で進めるか最適な組み合わせを瞬時にはじき出すシステムを導入していること。加えて、製造機械のカスタマイズができる技術者がいることも大きい。シートをセットする時間を短縮したい、次の印刷物に備えてインクを早く洗浄できるようノズルの角度を変えてほしい。そういった現場の要望に応えられる技術力が作業の効率化につながっている。

機械化が進んでいるが、最後はやはりオペレーターの技術で製品に差が出る。例えば印刷の工程では、細字や美粧なデザインを段ボールに印刷する場合の、印版と段ボールのタッチの調整。型抜きの工程では、段ボールシートをセットする位置ずれによる切り口にわずかな毛羽立ち、それに伴う刃物の劣化……など。技術者の力が、物流を縁の下から支えている。

◆キーワード


トラス構造

複数の三角形が連なった構造のこと。四角形は力を加えるとひし形のように変形することがあるが、三角形は変形せず安定感がある。三角形は強度が強い構造であるため、トラス構造は体育館のような大きな屋根や橋などの構造物にも使われる。


多品種少量生産

顧客ニーズに応じて製品の種類を増やし、少量ずつ生産していく方法。必要なものを必要なだけ生産するシステムで、消費の好みが多様化する中でそれに対応する方式といえる。在庫を持ちすぎることがないという特徴もある。一方でコストの増加と生産効率の低下という問題もあり、全体的な生産統制と受注の安定化が鍵となる。

◆スタッフ・メッセージ

美しく仕上げるための微調整は、オペレーターの技量。そこが難しいのですが、自分が思い描いた通りに出来上がると嬉しいですね。いまは、型を抜く工程を担当していますが、今後はほかの工程も勉強して、できることを増やしていきたい。全ての工程を経験することで、今の仕事も全く違う視点で見ることができると思います。

製造部印刷抜き工程
近藤哲也さん
高松工芸高校出身

株式会社朝日段ボール

住所
香川県高松市国分寺町国分156-2
代表電話番号
087-874-1313
設立
創業1955年12月1日
事業内容
段ボールケース・シート、美粧段ボール、包装資材全般の製造・販売
資本金
3億2400万円
地図
URL
http://www.asahidan.co.jp/
確認日
2024.03.21

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