「質」を追求し、縁の下で物流を支える

朝日段ボール 社長 白井 大介さん

Interview

2021.11.18

朝日段ボールの製品倉庫=高松市国分寺町

朝日段ボールの製品倉庫=高松市国分寺町

“ダントツ四国No.1”へ

コロナ禍の影響もありネット通販の利用が広がっている。大きなものから小さなもの、ロゴマークなどが色鮮やかに印刷されたものからシンプルなもの……。暮らしの中に「段ボール箱が増えたなあ」と感じている人も多いかもしれない。
朝日段ボールが製造する各種段ボール

朝日段ボールが製造する各種段ボール

高松市国分寺町の段ボールメーカー、朝日段ボールの白井大介社長(47)は、「段ボールは経済の動きと直結している。モノが動けば段ボールも動く。たかが段ボールだが、されど段ボール。徹底して究めていきたい」と強い口調で語る。

生鮮・冷凍食品用、飲料用や医薬品用など、用途に合わせた様々な段ボールをつくる朝日段ボール。大きさ、色、形が違う顧客それぞれの要望に、小ロット多品種の「オーダーメイド方式」で応え、受注から製造、印刷、納品までを一貫して行う。取引先は四国内のあらゆるメーカー500社以上、受注件数は四国でトップレベルを誇る。「新型コロナの影響で、最近はマスクやウェットティッシュ、ペーパータオルなどの衛生用品向けが増えています」

コロナ禍で、自動車や家電の部品が海外から入って来なくなり、工業製品用の注文が減るなどの影響は出たが、徐々に回復してきた。しかし、白井さんにはそれ以上の心配事がある。「メーカーの製造拠点が移転しつつあります」。ある大手食品メーカーは四国内にあった製造工場の半数を、ここ数年で大消費地に近い関東へ移した。「今後もこの傾向は続いていくと思います」
段ボール箱をイメージした本社工場

段ボール箱をイメージした本社工場

だが、ただ手をこまねいているわけではない。今年、様々な設備投資に踏み切った。きめ細かな多色刷りに対応できるデジタル印刷システムを導入したほか、日々大量に入ってくる段ボールの材料にICタグをつけた。在庫をIT管理することで「これまでは、人が毎回現場まで在庫の状況を見に行かなければならなかった。倉庫の高い所に上って確認することも多かったので、省力化に加え、安全面もクリアできました」

さらに強みがある。朝日段ボールの1週間は日曜の夜11時から始まる。「勤務は11時から翌朝8時までと、8時から夕方5時までの2交替制です」。受けた注文を夜11時からつくり始める“夜勤先行型”で、「顧客から生産計画を丸ごと頂くことで、受注と同時に製造から出荷まで、各部署に一斉に指示できる『オーダーエントリーシステム』を取り入れています」。つまり「夕方5時までに注文を受ければ、翌朝には届けられます」

白井さんは今年、中期経営計画をつくった。掲げたのは“ダントツ四国No.1”。目指すNo.1とは何なのか?「もちろん製造量も大事ですが、こだわるのは『サービスの質』でのNo.1です」。大きくて場所を取る段ボールは、白井さん曰く「現場の“じゃま”になることもあります」。お客さんが必要とするタイミングに必要な量を届ける。「心がけているのは、常に『お客様の視点』に立つこと。厳しい状況だからこそ、攻めの姿勢でやっていきたいと思っています」

「成熟」しているのに「成長」

朝日段ボールは1955年、白井さんの祖父・要平さんが中心になり創業。木箱から段ボール箱に代わっていく時代の流れに乗り、業績を伸ばした。創業メンバーや父・義男さんらがつないだバトンを5年前、白井さんが42歳で受け取った。「父は誰よりもこの会社を愛した人でした。でも、私が社長になると完全に退きました。それが父のけじめだったのでしょうか……。祖父や父らが築いてきた道をしっかりと歩んでいきたいと思っています」

段ボールが日本で誕生してから110余年。白井さんは「成熟しているのに、今なお成長し続けているのが大きな魅力」と語る。東日本大震災発生時、大量の支援物資が段ボール箱で運ばれ、避難所では段ボールの簡易ベッドやパーテーションが被災者を支えた。朝日段ボールでも、災害時に段ボールベッドの提供やスタッフを派遣する協定を高松市や坂出市と結んでいる。

東京オリンピックの選手村でも段ボールベッドが使用されるなど、いま段ボールの新たな価値に注目が集まっている。防災面以外でも“脱プラスチック”が叫ばれる中、「発泡スチロールやプラスチック素材の梱包材に代わる段ボールなども提案していきたい」と白井さんは意気込む。

だが一方で「実は段ボールは、すでに差別化するのが難しい領域まで達しているんです」と打ち明ける。「だからこそ、サービスや製品の『質』を上げていかなければなりません」

質を良くするには会社を良くしなければならない。そのために「従業員の満足感をもっと高めたい」と熱く語る。「ものづくりに必要なのは、つくり手の『思い』。世の中の物流に欠かせないものを縁の下で支えているんだという自信と誇りをもって、従業員たちと一緒に頑張っていきたいと思っています」

篠原 正樹

白井 大介|しらい だいすけ

略歴
1974年 高松市生まれ
1993年 大手前高松高校 卒業
1998年 専修大学商学部 卒業
     システム開発会社勤務を経て
2001年 株式会社朝日段ボール 入社
2004年 取締役工場長
2007年 取締役常務
2014年 取締役専務
2015年 取締役副社長
2016年 代表取締役

株式会社朝日段ボール

住所
香川県高松市国分寺町国分156-2
代表電話番号
087-874-1313
設立
創業1955年12月1日
事業内容
段ボールケース・シート、美粧段ボール、包装資材全般の製造・販売
資本金
3億2400万円
地図
URL
http://www.asahidan.co.jp/
確認日
2024.03.21

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