地域に寄り添い 地域を“技術”で支える

四電技術コンサルタント 社長 野村 喜久さん

Interview

2022.12.15

高松市牟礼町牟礼の四電技術コンサルタント本社

高松市牟礼町牟礼の四電技術コンサルタント本社

“総合力”で地域に貢献

四国電力のグループ会社、四電技術コンサルタント。火力、水力、原子力発電所などの開発・建設で培ってきた技術力を他の分野でも生かそうと、1982年に誕生し、今年、創立40周年の節目を迎えた。「四国電力が電気で地域を支えるのと同じ。私たちは“技術”で四国地域の発展に貢献していく。その使命感に燃えています」。去年社長になった野村喜久さん(62)は熱く決意を語る。

道路、河川、耐震・構造、地質、環境、建築、電機、水力などに関する調査・計画・設計・管理を行う総合建設コンサルタントとして四国のインフラ整備に貢献。事業領域は極めて多岐にわたる。
こんぴらさん表参道の「無電柱化計画」。施工前(左)と施工後

こんぴらさん表参道の「無電柱化計画」。施工前(左)と施工後

いくつか例を挙げると、国などが進めている「無電柱化計画」がその一つ。電線を地中に埋め、電柱を無くそうというものだ。かつては景観保護のために観光地などで行われていたが、「いまは防災、減災の観点から注目されています。地震などで電柱が倒れて復旧が遅れ、被害が拡大するのを避けるため、電柱のない環境を目指しています」。電柱を無くすことで、景観に加え視界や道幅も広がり、人通りにもプラスに働く。「電線をどう通すかなど難しい面はあるが、単なる道路整備ではなく、地域にも喜ばれるよう私たちが持つ技術力を駆使していきたい」
重信川の自然再生事業

重信川の自然再生事業

ドローンや高精度カメラ、水中ロボットなど最新技術の研究・実験も重ね、老朽化が進む橋梁や桟橋の劣化診断などに導入。今月、国が社会資本のメンテナンスに係る優れた取り組みを表彰する「インフラメンテナンス大賞」の優秀賞を受賞した。「ものづくりも大事だが、これからは『メンテナンスの時代』。点検の精度、作業員の安全性や効率化をさらに追求していきます」

愛媛を流れる一級河川・重信川では、所々で水の流れが途切れたり水質が悪化したりと、生態系への悪影響などが心配されていた。そこで四電技術コンサルタントが「自然再生」。生物の生息環境などを調査し、植栽や泉を引き込んで、「川の中を散策して楽しめるようにするなど、“川まちづくり”のお手伝いをしました」
地域ごとに違うニーズを的確に読み取り、「その地域は何を望み、何を必要としているか。私たちが持つ技術を結集して、調査・設計・提案し、実現を目指していきたいと思っています」

「それでも前を向け」

大学卒業後に入った四国電力では主に水力発電畑を歩んだ。水力発電業務には鉄則がある。

「発電所を絶対水に浸けるな」

高知・いの町の本川電力センターで所長をしていた2004年、台風被害で発電所が水没した。1分1秒でも早く復旧させなければならない。だが、“鉄則”に触れた代償は大きかった。発電機が動かない。どうすればいいのか…。途方に暮れていた時、電話が鳴った。

「下を向いているのと違うか?前へ、前へやぞ」

落ち込んでいるだろうと気にかけてくれた先輩からだった。「でも先輩、そうは言っても…」「それでも前や、前を向いていけ」。実はその先輩は当時大病を患い、自身も病気と戦っていた。「先輩のその言葉で吹っ切れましたね」。電力の供給を止めてはいけない。所員みんなで夜を徹して作業にあたった。復旧には数カ月かかるだろうと見られていたが、「何とか1カ月で応急復旧にこぎつけました」

“前へ、前へ”。それ以来、いつも野村さんに勇気をくれる心強い言葉だ。

“4つのC”で地域と共に

国が2050年までに目指している温室効果ガスの実質排出をゼロにする「カーボンニュートラル」。“ゼロカーボンシティ”を宣言する自治体が増えているが、「エネルギーに関する知識や経験が少ないと実行計画を立てるのは難しい。私たちにお手伝いできることは多いと思う」。実際、四国内の自治体からの問い合わせは相次いでいて、「例えば、ただ太陽光パネルを設置するだけではなく、それをどう地域創生に絡めていくか。再生可能エネルギーとまちづくりをどうリンクさせていくか。これからはそういう考え方が必要になってくると思います」

四電技術コンサルタントでは全従業員が参加して2030年までのビジョンをつくった。

「Communication(絆)」「Challenge(挑戦)」「Comfort(ゆとり)」「Charm(魅力)」

社名の愛称「四(ヨン)C(シー)(YON-C)」になぞらえて、“4つのC”を柱にした。「コミュニケーションでチームの絆を深め、新しい技術や領域にどんどん挑戦していく。従業員の時間と心のゆとりを大切にし、お客様から選ばれる魅力ある企業を目指していきたい」

四電時代の様々な思い出が残る高知の本川電力センター。建物に向かうと、鮮やかなピンクのツツジが綴る「地域と共に」という植栽文字が目に飛び込んでくる。「これが私の原点ですね」。本川電力センターは、野村さんの初任地でもある。「地域の声を聞き、地域に寄り添い、チームの仲間と一緒にしっかり前を向いて歩んでいきたいと思っています」

篠原 正樹

野村 喜久 | のむら よしひさ

略歴
1960年 高知市生まれ
1979年 土佐高校 卒業
1983年 慶應義塾大学工学部 卒業
     四国電力(株)入社
2004年 高知支店電力部本川電力センター所長
2015年 電力輸送本部水力部長
2017年 執行役員電力輸送本部水力部長
2018年 執行役員再生可能エネルギー部長
2019年 常務執行役員徳島支店長
2021年 四国電力(株)退社
    (株)四電技術コンサルタント 代表取締役社長

株式会社四電技術コンサルタント

住所
香川県高松市牟礼町牟礼1007-3
代表電話番号
087-845-8881
設立
1982年4月1日
社員数
312人(2022年3月末)
事業内容
道路、河川、耐震・構造、地質、環境、建築、
電機、水力等に関する調査・計画・設計・管理
URL
https://www.yon-c.co.jp/
確認日
2022.12.15

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