多様な文化を融合させ 地域とともに歩む

トモニホールディングス 社長兼CEO 中村 武さん

Interview

2019.07.04

香川銀行のハンドボール部「チームハンド」のみなさんと=高松市香川総合体育館 チームは8月に鹿児島で開かれるジャパンオープンとトーナメントに出場予定

香川銀行のハンドボール部「チームハンド」のみなさんと=高松市香川総合体育館
チームは8月に鹿児島で開かれるジャパンオープンとトーナメントに出場予定

人生って面白い

中村武さん(55)は2009年、前職だった日本銀行の高松支店長として、1年間を高松で過ごした。「支店経済のまちで、外から来た人を優しく受け入れてくれる。太陽が高くて海がキラキラしていて……そんな風景にいつも癒やされていました」。異動で東京に戻った後も年に2回は高松や四国を訪れ、八十八カ所巡りや趣味の写真撮影を楽しんでいた。

トモニホールディングスは10年、第二地銀の香川銀行と徳島銀行を傘下に置く金融持株会社として設立。当時中村さんは日銀高松支店長の立場で経緯を見守っていた。「香川銀行と徳島銀行がどんな考えで経営統合を実現しようとしているのか、それぞれの熱い思いを肌で感じていました」
“変わろう”とする情熱を全力でサポート

“変わろう”とする情熱を全力でサポート

一昨年、そのトモニホールディングスから「専務に」と声がかかった。「日銀も大好きで『もっとやりたい』という思いと、『こんなチャンスは二度とない』という思い、2つの感情が混ざり合っていました」。しかし、中村さんは覚悟を決めた。「統合を経験するトモニホールディングスは、極めて前向きに異質な文化を受け入れる組織。異質な私が入ることで、さらに良い化学反応が生まれるのではないか」。大好きな高松で第二の人生を生きていく。妻も「面白いと思うなら、やってみればいいじゃない」と背中を押してくれた。昨年6月、社長兼CEOに就任。「高松支店長の時は、まさか将来こうなるとは思ってもみなかった。人生って面白いですね」と笑う。

多様な文化の融合は早速、形になり始めている。中村さんが中心になってまとめた「第4次経営計画」。掲げるコンセプトは「変わる“トモニ”、変わらぬ“ともに”」だ。「『お客さまとともに、地域とともに歩んでいく』という設立当初からのビジョンは変えない。でも、やり方は変える。頭を柔らかくし、やれることをやっていこうと思っています」

事業承継や起業のサポートなど、“金融”にとらわれず、サービスの幅を広げたい。若い人たちが「この地域で働きたい」と思えるような魅力的な仕事を増やしたい……悩みやストレスはもちろんあるが、高松に戻ってからの日々は刺激的で充実していると中村さんは目を輝かせる。

「交通関係」から一転

鉄道好きは今も変わらない。 ローカル線の旅情とお酒を楽しむJR四国のイベント 「香川・徳島お酒列車」で車掌に扮して=2月

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「香川・徳島お酒列車」で車掌に扮して=2月

鉄道や飛行機が好きだった。思い出すのは幼いころ、地元の博多駅で母に手を引かれ見送った東京行の急行列車。いつしか「交通関係の仕事がしたい」という思いが芽生え、大学時代の就職活動では某航空会社から内定をもらっていた。

しかし、日銀への就職を目指す友人に付き添って、何の気なしにOB訪問に同行したことで事態が急変した。「大学OBの先輩は非常に厳しい人だったが、しっかり時間をかけて私のことを理解し、議論してくれた。官民半々という組織の面白さにも惹かれました」

1986年に日銀に入り、金融市場調節や米国金融分析、プロジェクト管理、秘書、福利厚生、管財など、「平均的な日銀マン以上にいろんな経験をさせてもらいました」

中でも記憶に残るのは、30代半ばで携わった「日銀法の改正」だ。「戦時中の昭和17年に制定され統制色の強い旧日銀法を『独立性と透明性』を軸にグローバルスタンダードにあわせるものです」。チームを組み、寝る間も惜しみ、1年半がかりで改正にこぎつけた。「“法律を変える”という仕事に関われたのはすごく思い出深く、自信にも繋がりました」。一緒に改正作業にあたったメンバーとは、今でも交流が続いているという。

「キングギドラ体制」で

さらなる多様な文化の融合が控えている。来年1月、傘下の徳島銀行と大阪の大正銀行が合併する。「例えば『倉庫を拡充させたい』という大阪の企業に、地価が高い近隣ではなく、四国の物件を紹介する。『大阪のメーカーと取引したいがパイプがない』という四国の企業をサポートする……広域な金融グループになることで、顧客企業により高いサービスを提供できます」

今後目指していく姿を「キングギドラ体制」と表現する。事務部門など顧客と直接接しない“本体”は徹底的に効率化する一方、顧客と接する“首”は複数持ち、フェイストゥフェイスで強固な関係を築いていく。「ボディはスリムに、上半身はアクティブに。ポケモン世代向けに言うと“ドードリオ”ですね」

人口減少や高齢化など地域経済は負の側面が強調されがちだが、「決してそれだけではない」と口調を強める。「インバウンド増などの新しい動きや、それぞれのフィールドで必死に前に進もうとしている元気な企業も多い。お客さまの“変わっていこう”とする情熱を全力でお手伝いしていきたい」

掲げるモットーは「仕事は楽しく」。傘下の銀行の部活動にも顔を出すなど行員との時間も大切にしている。

「行員には『この仕事は何のためにやっているのか』『次の仕事にどう繋がるのか』を常に考えながらやっていってほしい。仕事のやり方やスタイルを創意工夫することで何かを得る。それってやっぱり楽しいじゃないですか」

篠原 正樹

中村 武 | なかむら たけし

1963年 福岡県粕屋郡古賀町生まれ
1982年 東京学芸大学附属高校 卒業
1986年 東京大学法学部 卒業
    日本銀行 入行
2009年 高松支店長
2010年 金融機構局参事役
2012年 業務局審議役
2013年 業務局長
2015年 文書局長
2017年 日本銀行 退職
    トモニホールディングス株式会社 代表取締役専務 就任
2018年 代表取締役社長 兼 CEO
写真
中村 武 | なかむら たけし

トモニホールディングス株式会社

住所
香川県高松市亀井町7番地1
代表電話番号
087-812-0102
設立
2010年4月1日
社員数
100人(銀行子会社兼任者80人含む。2019年3月31日現在)
事業内容
銀行その他銀行法により子会社とすることができる会社の経営管理及びこれに付帯関連する一切の業務
代表者
代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者) 中村 武
代表取締役副社長 山田 径男
         板東 豊彦
資本金
250億円
地図
URL
http://www.tomony-hd.co.jp
確認日
2020.10.01

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