スポーツを通して「夢中のキッカケ」をつくる

一般社団法人 小豆島スポーティーズ 専務理事 渡部勝之さん

Interview

2019.07.18

丹生茂希さん(左)と渡部勝之さん。2人を中心に小豆島スポーテイーズが新たなスタートを切った

丹生茂希さん(左)と渡部勝之さん。2人を中心に小豆島スポーテイーズが新たなスタートを切った

「人間が一番パワフルな状態って何かに“夢中”になっている時やと思うんです」。仕事でも遊びでも、時間を忘れて楽しめる。夢中になるものがあって、日常を、地域を愛せる人がたくさんいれば、町はおもしろくなるんじゃないか――。「小豆島スポーティーズ」は、夢中のキッカケをつくり続ける、を理念に2017年に設立された。

設立前から、熊本地震の被災地支援としてプロバスケットボールチーム「熊本ヴォルターズ」のキャンプを誘致するなどの活動を実施。土庄町の「総合型地域スポーツクラブ」(注)として発足した。現在は、島内全域に無料でスポーツを遊びとしてデリバリーする「キャラバン活動」や、いつでも好きな時に参加できるサッカー・バスケなどのスポーツ教室を運営している。

渡部さん自身の“夢中体験”は、地元の大阪で初めて見たプロバスケットボールの試合。延長の末、最後の瞬間に放たれた3ポイントシュートが決まり「大阪エヴェッサ」が2点差を逆転。「会場が揺れるような歓声と一体感。満員の観客、選手、スタッフが生み出す風景に鳥肌が立ちました。こんな場をつくる仕事がしたいと思いました」

その後、大阪エヴェッサの営業職に誘われ、勤めていた車のディーラーを退社。兵庫のプロチーム設立にも携わり、11年に経営危機に直面する高松ファイブアローズの力になれればと香川に。限られた資金の中で、ファンを巻き込みながら手作りの運営を目指すも「誇るべきチームでしたが、僕の体力と財布は限界を超えてしまった」。やりきれない思いのまま14年に小豆島へ移住した。
小豆島初のファイブアローズ公式戦

小豆島初のファイブアローズ公式戦

スポーティーズを設立した年、ファイブアローズの公式戦を小豆島でする話がまとまった。その実行委員長になってほしいとお願いしたのが当時、島の青年会議所理事長だった丹生茂希さんだ。「渡部さんに誘われて参加した懇親会で選手たちと話をして。限られた選手生命の中、真っすぐに向き合っている姿に心を打たれました」

彼らのためにも無料招待を行わず会場を満員にする。その決意のもと、2人で少しずつ“前例がない”さまざまなことを町の人たちに理解してもらい、小・中学生には選手が一枚一枚手書きした招待状を届け、そのチケット代は島の大人たちやクラウドファンディングで補った。試合当日、チームカラーの黄色いTシャツで染まる会場は、渡部さんが初めて試合を見た大阪の風景と重なった。
キャラバン活動は子どもたちの発想で自由に遊ぶ

キャラバン活動は子どもたちの発想で自由に遊ぶ

今年5月、事業の一つとしてご当地バスケットボールチーム「小豆島ストーンズ」が発足。全国から集まった選手たちが、選手活動と地域活動で小豆島に貢献する。7月には丹生さんが代表理事となりスポーティーズは法人化した。
 
今後は、観光や住民サービスなど、アスリートによる事業展開に挑戦するスポーツカンパニーに育てたいという。「大人たちが何かに夢中になって挑戦している姿が、子どもたちの夢中のきっかけなると信じている。いつまでも誇れる小豆島に。“島やけど、世界レベル”な環境を目指します」
注=文部科学省がすすめるスポーツ振興策の一つ。幅広い年代がさまざまなスポーツに触れる場をつくる地域密着スポーツクラブ

石川恭子

渡部 勝之さん | わたべ かつゆき

略歴
1974年 大阪生まれ
1993年 桃山学院高校 卒業
1997年 大阪学院大学法学部法律学科 卒業 
「アルファロメオ」ディーラー勤務を経て
2007年 大阪エヴェッサ事業部長
2010年 兵庫(現西宮)ストークス設立メンバー(アシスタントGM)
2011年 高松(現香川)ファイブアローズ COO
2014年 小豆島に移住
2017年 小豆島スポーティーズ事務局長(土庄町嘱託職員)
2019年 一般社団法人小豆島スポーティーズ専務理事

小豆島スポーティーズ

住所
香川県小豆郡土庄町甲267-78 小豆島町総合会館内
代表電話番号
0879-62-7077
確認日
2019.07.18

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ