
昨年プロ野球は観客動員が史上最多の2,555万人を記録しました。この数字の中身は、野球にある程度興味を持っているライトファンをコア化させてリピーターになってもらい観客動員を増やすという戦略で、千葉ロッテが導入し大成功して各球団も取り入れたというものです。
しかしこれは新規のファンが増えた訳ではなく、ファンの延べ人数は増えたけれども実人数は増えていないという結果になっています。ある調査によると日本のプロ野球ファンは2009年の3,780万人から17年には2,845万人に減少したと言います。これは球場に行かなくてもテレビで観戦したり新聞を開いて結果を確認したりするライトファンが、減った可能性があると本書にあります。
そしてさらに深刻なのは、小中学生の野球人口が07年から16年の間に26.2%減少しています。裾野が狭まるということは、その後には先細りしかありません。本書にはプロ野球から小中学生の野球、高校野球の現状と問題点が詳しく報告されています。そこからはあまり良い感想はもてません。
子どもたちが原っぱや空き地で野球をし、夜にはテレビで野球中継を見るのはもう珍しいものですし、野球をして遊ぶということ自体少なくなっています。「する」スポーツの延長線上に「みる」があるのが理想だといいます。子どもたちにはもっと遊びの野球をやってもらいたいと思います。
山下 郁夫
宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん
- 坂出市出身。約40年書籍の販売に携わってきた、
宮脇書店グループの中で誰よりも本を知るカリスマ店長が
珠玉の一冊をご紹介します。 - 写真
宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん
おすすめ記事
-
2022.02.03
嫌われた監督
落合博満は中日をどう変えたのか著:鈴木 忠平/文藝春秋
-
2021.03.04
日本のスポーツビジネスが世界に通用しない本当の理由
著:葦原一正/光文社
-
2020.02.06
真のファンなら知っておきたい 野球の世界情勢
著:石原豊一/ベースボール・マガジン社
-
2023.02.16
神経症的な美しさ アウトサイダーが見た日本
著:モリス・バーマン 訳:込山宏太/慶應義塾大学出版会
-
2023.01.05
文庫版 惹句術 映画のこころ
著:関根忠郎、山田宏一、山根貞男/ワイズ出版
-
2022.12.01
新地方論 都市と地方の間で考える
著:小松 理虔/光文社
-
2022.10.20
ウォーカブルシティ入門
著:ジェフ・スペック/学芸出版社
-
2022.09.01
韓国の変化 日本の選択 -外交官が見た日韓のズレ
著:道上 尚史/筑摩書房
-
2022.08.04
自動車の社会的費用・再考
著:上岡 直見/緑風出版
-
2022.06.16
映画を早送りで観る人たち
著:稲田 豊史/光文社
-
2022.05.05
低空飛行
この国のかたちへ著:原 研哉/岩波書店