
木村和史さんが引退の挨拶に来てくれた。彼は、本県陸上短距離界のトップスプリンター。200m、300m、400mの県記録保持者だ。坂出高校時代から本格的に陸上を始め、大学で日本代表レベルに成長した。地元企業に就職した後も、職場の理解や応援を励みに厳しい練習を地道に続けた。
その結果、2017年ロンドンでの世界陸上選手権に日本代表として1600mリレーに出場、2019年茨城国体では成年男子400mで優勝した。当然、東京オリンピックも視野に入ってきた。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う開催の1年延期、その間の脚の故障が響いて代表は逃した。
そして引退の日を迎えた。競技者としてのラストランは、10月24日、Pikaraスタジアムで開催された「香川陸上競技カーニバル大会」。木村選手らしく200mを全力で駆け抜けた。
今年28歳。引退後も後進や子どもたちの指導に力を注ぐという。明るく楽しい指導は子どもたちからとても人気だ。それともう一つ、農業をやりたいという夢の実現に向けて準備を始めるという。
彼の実家は宇多津で4代続く専業農家。子どもの頃から両親の農業への思いや頑張りを見てきた。農業大学校で基礎から農業技術を学んでみたい。実家はほうれん草など葉物が中心だが、将来はブドウなど果樹にも力を入れたい。農業好きの人たちとのネットワークづくりも楽しいだろうなあ。などなど思いは尽きない。
陸上も農業もどちらも大地を踏みしめての勝負だ。これまでの彼の情熱とキャリアを香川の陸上競技の発展とともに、農業の振興にも生かしてほしい。若者の就農の良き先達にもなってほしい。木村さんの帰農がいつになるか、頼もしい五代目農業家の誕生を心待ちにしている。
香川県教育委員会 教育長 工代 祐司
- 写真
おすすめ記事
-
2016.09.15
アート県、そのDNAを紡ぐ
香川県教育委員会 教育長 工代 祐司
-
2017.06.15
高校総体 初観戦記
香川県教育委員会 教育長 工代 祐司
-
2023.01.05
書評
香川県教育委員会 教育長 工代祐司
-
2022.09.01
この夏
香川県教育委員会 教育長 工代祐司
-
2022.05.05
香川の子どもたちに贈る100冊
香川県教育委員会 教育長 工代 祐司
-
2022.02.17
そうだ、教科書を読んでみよう!「情報Ⅰ」
香川県教育委員会 教育長 工代 祐司
-
2021.08.05
瀬戸内のボルタンスキー
香川県教育委員会 教育長 工代 祐司
-
2021.05.07
「起業」を学ぶ
香川県教育委員会 教育長 工代 祐司
-
2021.02.04
我が良き友よ
香川県教育委員会 教育長 工代 祐司
-
2020.11.05
村を育てる学力
香川県教育委員会 教育長 工代 祐司
-
2020.07.16
「オリーブ」三部作を読む
香川県教育委員会 教育長 工代 祐司
関連タグ
最新紙面情報
Vol.412 2025年08月21日号
「ここに来て良かった」 生徒一人一人に寄り添って
学校法人村上学園 理事長 村上学園高等学校 校長 村上 太さん
モニタリングの知見を生かし 地域と「顔の見える対話」を
日本銀行 高松支店長 稲村 保成さん
諸機関と柔軟に連携し 四国の中小企業に寄り添う
独立行政法人 中小企業基盤整備機構 四国本部長 田中 学さん
まち全体を一つの「宿」に見立て 古民家を核に日常風景の魅力を発信
NIO YOSUGA 代表取締役 竹内 哲也さん/菅組 社長 菅 徹夫さん
生徒の「やってみたい」が地域とつながる 進化するボランティア団体「TSUNAGU」
大手前丸亀中学・高等学校