アスリート、農業を目指す!

香川県教育委員会 教育長 工代 祐司

column

2021.11.04

「農業をやります」。「えぇ、農業?!」

木村和史さんが引退の挨拶に来てくれた。彼は、本県陸上短距離界のトップスプリンター。200m、300m、400mの県記録保持者だ。坂出高校時代から本格的に陸上を始め、大学で日本代表レベルに成長した。地元企業に就職した後も、職場の理解や応援を励みに厳しい練習を地道に続けた。

その結果、2017年ロンドンでの世界陸上選手権に日本代表として1600mリレーに出場、2019年茨城国体では成年男子400mで優勝した。当然、東京オリンピックも視野に入ってきた。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う開催の1年延期、その間の脚の故障が響いて代表は逃した。

そして引退の日を迎えた。競技者としてのラストランは、10月24日、Pikaraスタジアムで開催された「香川陸上競技カーニバル大会」。木村選手らしく200mを全力で駆け抜けた。

今年28歳。引退後も後進や子どもたちの指導に力を注ぐという。明るく楽しい指導は子どもたちからとても人気だ。それともう一つ、農業をやりたいという夢の実現に向けて準備を始めるという。

彼の実家は宇多津で4代続く専業農家。子どもの頃から両親の農業への思いや頑張りを見てきた。農業大学校で基礎から農業技術を学んでみたい。実家はほうれん草など葉物が中心だが、将来はブドウなど果樹にも力を入れたい。農業好きの人たちとのネットワークづくりも楽しいだろうなあ。などなど思いは尽きない。

陸上も農業もどちらも大地を踏みしめての勝負だ。これまでの彼の情熱とキャリアを香川の陸上競技の発展とともに、農業の振興にも生かしてほしい。若者の就農の良き先達にもなってほしい。木村さんの帰農がいつになるか、頼もしい五代目農業家の誕生を心待ちにしている。

香川県教育委員会 教育長 工代 祐司

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