「オリーブ」三部作を読む

香川県教育委員会 教育長 工代 祐司

column

2020.07.16

先月、「これならできるオリーブ栽培」(農文協)が出版された。著者は山田典章さん。東京での20年のサラリーマン生活に終止符を打ち、2010年にオリーブ農家を志し一家3人で小豆島に移住した。初めてのオリーブ栽培に悪戦苦闘の末、オリーブの有機栽培を成功させた。

オリーブ農家としての試行錯誤も興味深いが、移住や仕事選びの物語としても、起業の経営戦略書としても秀逸だ。オリーブ農家を志す人にはバイブルとなろう。圧巻はオリーブ樹にとっての最大の天敵、オリーブアナアキゾウムシの飼育のススメ。敵を知るには育てて観察すること。オリーブに食わせてもらっている者どうし、ゾウムシに同士のような気持ちが湧いてきたというから、山田さんは類まれなる昆虫好きでもある。

二冊目は、「育てて楽しむオリーブ 栽培・利用加工」(創森社2016年)。著者の柴田英明さんは、県オリーブ研究所の主席研究員。前述の山田さんも何度も読んだそうで、参考文献一覧の最初に記している。育てる、愛でる、収穫する、味わうなど、オリーブのすべての楽しみが詰まっている。オリーブ普及への情熱が伝わってくる。

三冊目は、「オリーブの絵本」(農文協2008年)。かつて小豆島で農試の分場長をされた髙木眞人さんの編集。やまもと ちかひと氏の装丁や挿絵が魅力的。お下げ髪の少女が、オリーブの歴史や育て方、実の加工、オリーブ冠の作り方までオリーブワールドに誘ってくれる。誰が読んでもオリーブ通にしてくれる不思議な絵本だ。

小豆島にオリーブが植栽されて112年。栽培農家やオイル製造者の皆さんの長年の御努力で、オリーブが再び注目を集める新たな時代を迎えている。その中で、県人の手になる書籍がオリーブ関連の定番として全国の書店に並ぶ。オリーブ三部作、なにか誇らしく嬉しさが込み上がってくる。

香川県教育委員会 教育長 工代 祐司

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香川県教育委員会 教育長 工代 祐司

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