アート県、そのDNAを紡ぐ

香川県教育委員会 教育長 工代 祐司

column

2016.09.15

この夏、私にとっては画期的と思われる企画展が二つ開かれました。

一つは高松市歴史資料館で去る9月4日まで開催された「心を豊かにするデザイン-讃岐民具連とその時代」展、
もう一つは瀬戸内海歴史民俗資料館において、9月19日まで開催されている「’60年代JETRO収集海外優秀商品-香川県保管の驚きの見本群」展です。
両展とも約60年前、1950~60年代にかけての香川県における文化芸術をめぐる動き、それに呼応した地元の伝統工芸や民具、地場産業のデザイン化の動きを見事に伝えてくれます。

前者は、デザイン知事と称された当時の金子正則知事のもとに参集した建築家丹下健三をはじめ、インテリアデザイナーの草分け剣持勇、猪熊弦一郎、イサム・ノグチ、ジョージ・ナカシマ、流政之氏ら当時最先端のアーティストらの香川での足跡と、彼らに啓発された地元の木工、石工、瓦、漆の職人たちが立ち上げた「讃岐民具連」のいわば民衆芸術運動、そこから生まれた作品の数々が展示され、「こんなにすばらしいものが・・・」と感嘆するばかりです。

また後者は、日本製品を洗練されたデザインに高めようという国策のもと、JETRO(日本貿易振興会)が世界中から集めた3万点の海外見本製品のうち約2千点を香川県が特別に受け入れ、県の産業工芸品に関わる人たちに公開するという本県独自の試みを伝えるものです。当時入手が難しかったマリメッコ(フィンランド/布製品)、ル・クルーゼ(仏/鋳物製品)、グスタフスベリ(スウェーデン/陶磁器)、カッシーナ(伊/家具)など海外の名高い製品を、実際に手に取って研究できる環境を整えたのです。

とにかく見終わった後、勇気が湧きました。建築・デザイン、漆芸、家具・木工、石材、インテリア、食、出版をはじめ香川のあらゆるものづくり、広くはまちづくりに至るまで「皆さん、世界に向かって胸を張って仕事をしてください。皆さんにはアートやデザインに関するDNAが流れているのです」。そういう強いメッセージを感じました。

そして、長く自問していた「なぜアート県なの?」「なぜ瀬戸芸なの?」という問いに、歴史的事実に基づく一つの答えを提示してくれた極めて啓示的な企画展でありました。

両館の意欲ある取り組みに敬意を表するとともに、第二弾、三弾を心から期待しています。クリエーターを目指す皆さん、先人の熱き思いをしっかり受け取ってくださいね。

香川県教育委員会 教育長 工代 祐司

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