
久米池と屋島
讃岐の農業を考えるうえで、ため池の存在を忘れてはなりません。降水量の少ない香川県は古来より水不足に悩まされていました。また、南北の距離が狭いため、ひとたび降った雨は瞬く間に海まで流れ込みます。そこで、わずかな水を効率的に活用するため、非常に高度な治水・水利システムが発達しました。そのシステムを支えるのが、ため池の存在にほかなりません。
そもそも、讃岐平野の南北に整然としている水田は、奈良時代に整備が始まった古代条里制の名残りであり、平安時代の記録からは、現在の香川県の耕地面積の6割がすでに完成したとされています。その後、江戸時代には西嶋八兵衛、矢延平六に代表される土木技師の活躍により、海に向けて農地の開拓が進み、並行して河川の氾濫は治まり、讃岐平野の農地と水利システムは完成しました。そして、増加する農地の水を確保するためにたくさんのため池が整備され、現在14,000カ所と言われるため池の多くが江戸時代に作られたと伝わります。
讃岐平野を車で走ると、あちこちにため池の存在を確認できます。それもそのはず、ため池の数は、全国3位で、これを県土面積で割ったため池密度は全国1位になります。また、現在香川県の水を支える香川用水の開通は1974年、それ以前、香川県の農業用水のため池への依存度は70.4%、現在でも50.1%。全国平均8.9%を比べると依存度の高さは群を抜いています。私たち香川県民にとって、ため池がどれだけ重要な社会インフラであるかは、数字から簡単に理解することができます。

生活に欠かすことのできないため池にも限りがあり、ひとたび渇水に見舞われるとたちまちにして水と食料の危機に瀕していました。そのため日々の生活を引き締め、水一滴、米一粒までもを粗末にしない香川県民の倹約家の精神はこのようなところに由来するのでしょうね。
混ぜご飯

今回紹介する「もっそうめし」は、三豊市三野町に伝わる郷土料理で、炊きあがった白飯に、甘辛く煮た季節の具材と煮汁を混ぜ合わせていただきます。
これもひとえに、米を大切にしようとする心が形となって表れた料理にほかなりません。
野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん
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