就職活動2021withコロナ

ビジネス香川編集室

Special

2020.07.16

7月8日、香川大学はオンラインの就活相談会を実施

7月8日、香川大学はオンラインの就活相談会を実施

新型コロナウイルス感染症によって、私たちの生活様式は大きく変わろとしている。オンライン授業やテレワーク……。子どもも大人も関係なく対応が迫られている。社会人への準備期間ともいえる学生たちは、コロナ禍にどのような影響を受け、どう対応しているのか。また、第2波・第3波が不安視される中、関係機関はどのように学生を支援していくのか。

マッチングの機会絶やさず

就職活動の流れはおおよそ、大学3年生(卒業前年)の5月から2月までインターンシップに参加、3月から企業説明会に参加してエントリーシートを提出、4年生の6月から面接など選考スタートとなる。

新型コロナウイルス感染症の患者が国内で初めて確認されたのは、2020年1月15日のこと。4月16日~5月25日は全国に緊急事態宣言が出され、外出自粛が求められた。21年3月卒業予定の学生は通常なら、この期間に就職を希望する企業のインターンシップや説明会に参加しているはずだった。就活に関連するイベントは軒並み中止、大学への登校もできなかった。

香川県が運営する就職・移住支援センター「ワークサポートかがわ」(高松市)は、例年なら3・6・8月に合同就職面接(説明)会「かがわーくフェア」を開催するが、3月は中止に。相談は受けられるよう、感染防止に留意しながら、センターの運営を続けてきた。企業と学生のマッチングの機会を設けるため、6月はWeb会議システムを利用し「かがわLIVE就職説明会」を開催した。開催日を8日に分けて、各日6~8社の県内企業に参加してもらい、人事担当者が県の情報通信交流施設「e-とぴあ・かがわ」から40分ずつライブ配信で説明した。学生はスマートフォンやパソコンとインターネット環境があればどこからでも参加できる。質問はチャット機能で担当者に聞けるようにした。

所長の和田朝子さんは「新型コロナの影響で、企業も学生もお互いに『会えない』ことが課題になっています。Webを使った採用活動に不慣れな企業も少なくないので、企業と学生のマッチングを支援できたら」と話す。今のところ、8月26日のかがわーくフェアは対面式で開催予定。8月からは、例年バスツアーで開催していた企業見学会を、疑似体験できる動画の配信で開催する予定だ。「かがわLIVE就職説明会は県外学生の参加も多く、コロナ禍で学生の目が中央から地方に向いていると感じました。地方の企業にとっては、チャンスでもあります。学生には、大学などで学んだことをぜひ香川の企業で生かしてほしい」

オンラインで就活相談 独自で支援金も

香川大学工学研究科2年の中津貴裕さん

香川大学工学研究科2年の中津貴裕さん

香川大学(高松市)は5月7日からライブ配信による遠隔授業を開始。6月18日からは実習や実験などに限り、対面授業を再開した。また、5~7月は大学独自の支援金(1カ月当たり3万円)を学生に給付。5月は学生の半数近い約3千人から問い合わせがあったという。

就活支援では、2月末に県内企業に動向を調査。3月初めに、新型コロナによる選考の変更点など留意事項を学生に周知した。学内のキャリア支援センターの相談員を増員するとともに、電話やWeb会議システムを使った相談や面接試験の練習にも対応した。7月8日にはWeb会議システムを使い、学生が匿名・チャットで参加できる「今年の就活・インターンシップ相談会」を実施。「今年の採用活動はいつまで続くのか」「今後、Web面接が主流になるのか」といった学生からの相談に応えた。山神眞一副学長は「早めの対応が功を奏していると考えています。ICT化やDX化が大学、学生、企業に求められており、あらためて見直す機会になりました。これからも学生支援と業務の効率化、そして大学の新しい価値創造に努め、地方から発信する力のある学生や地元企業が求める人材を育成したい」と話す。

工学研究科2年の中津貴裕さんは、四国電力(株)への入社が内定している。就活について「昨年からインターンシップに参加し準備していましたが、今年に入って先輩の話や本の就活対策が全く生かせない状況に。様々な企業から話を聞ける合同説明会に参加できなかったのは、残念でした」と振り返る。

中津さんはもともと製造業に興味があったが、コロナ禍によって携わりたい仕事がより明確になった。「医療やインフラの重要性を感じました。自分の研究分野や防災などのボランティア経験を活かして、インフラの整備に携わり人の役に立ちたいという思いが強まりました。電力の安定供給や災害対策などで社会貢献できたら」

SNS使い、学生をサポート

四国学院大学社会学部4年の髙木翔平さん

四国学院大学社会学部4年の髙木翔平さん

四国学院大学(善通寺市)は、4月20日から遠隔授業を開始。事前録画やライブ配信などを含むオンデマンド型の遠隔授業を行った。6月1日からは受講人数に応じて対面授業を再開。対面で行う場合は学生の座席指定を行い、感染症が発生した場合に追跡できるようにしている。教学担当副学長の元井一郎教授は「学生も教員もネット環境やスキルに個人差があり、慣れるまで少し苦労はありました。コロナ禍は、知識よりも適応力が必要な社会であると再認識する機会になったと思います。情報の交換やコミュニケーションはオンラインでも十分できる。どこに居住していても、様々な地域に住む方との連絡だけでなく、協働的な研究活動などまでできることも認知されたのでは」と話す。

学生をサポートする学生コモンズ支援課は、以前からSNSを使った就活支援をしておりコロナ禍でも生かされた。求人票などの情報提供や相談はSNSで随時行い、エントリーシートの添削や面接の練習はWeb会議システムで実施。就職活動中の社会学部4年・髙木翔平さんはベースボール科学を学び、スポーツ用品メーカーなど野球に関わる仕事に就きたいと考えている。野球部でマネージャーを務めており部活のため、4月から就活を始めるつもりだった。そこにコロナ禍で予定が後ろ倒しに。「就活のためとはいえ県外に出掛けるのは不安ですし、今は使える交通機関が限られているので想定よりも交通費がかかってしまって…。大変な状況ですが、企業の採用活動が一時ストップしたことで、考える時間ができたのはありがたかったです」と話す。

コロナ禍であらためて、スポーツやエンタメが生活に必要なものだと感じたという。「プロ野球やサッカー、コンサートはストレス発散になります。日常生活になくてはならないものだと思います」。演劇を学ぶコースもある四国学院大学では、都市部の劇団や演劇から、地元の伝統芸能に興味を持ち始めた学生もいるという。

県内企業もWeb面接で対応

ポリエチレン製品や光学機能性フィルム、建材の製造販売を手掛ける大倉工業(株)(丸亀市)は例年、大学の夏休みと春休みに合わせてインターンシップを実施。企業説明会を経て、選考を始める。1次試験は筆記試験、適性検査と面接、2次はグループワークと部長職による面接、3次は社長面接という流れだ。説明会はこれまで3~4月に10回ほど実施していたが、今年は3月にWebでライブ配信した1回のみ。学生にまず知ってもらうという機会が失われてしまった。

人事・労務課長の小山真弘さんは「応募人数を増やすこと、内定辞退者を減らすことが、ここ数年の課題」と話す。応募人数を増やすために、21年卒の採用試験は、1次をWebでも受けられるように準備していた。そこへコロナ禍が起き、1次と2次をすべてWebでの実施に切り替え、3次はWebと対面のどちらでも受けられるようにした。

交通費がかからず、都合もつきやすいことから応募者は増えたが、人事担当者としては「気軽に申し込める分、辞退も気軽にできるのでは」との不安も。内定辞退者を減らすために以前から実施している「リクルーター」制度は、若手社員が内定者の相談にのるというもの。今年は例年よりも、学生の不安を取り除く上で大きな役割を果たしている。

また、Web面接は従来の対面型と比べてコミュニケーションが難しく、合否を判断しづらかったという。「例えば営業を希望する人なら、どんなふうに活躍してくれるかをイメージしながら面接します。画面越しでは雰囲気が全く分からず、具体的に考えるのが難しかった。やはり会って話したいと思いましたね」と小山さん。直接会いたい気持ちは学生も同じ。今年はインターンシップ経験者の応募が多かった。

「秋から高校生の採用活動が始まります。大学生と同様に、地元の香川にとどまりたい、地方で働きたいという応募者が増えるのではと期待しています」

手段の前にまず理念

就活のオンライン化が進むと、学生は説明会などに気軽に参加できるし、企業にとっては県外に向けてアピールする機会が増える。外出がはばかられる中、試験や面接などで『会社に来てほしい』と言われることに抵抗がある学生がいる一方、訪問することで感染防止対策や社内の雰囲気が分かると考える学生もいる。第一志望の企業から内定をもらっても、この先の業績を不安に思って就活を続ける学生も多いという。

説明会や試験はオンラインと対面をうまく組み合わせた形になっていくだろう。コロナ禍で従業員や就活生にどんな対応をしたのかを、企業は見られている。不況に強い製品やサービスを提供し売上が安定していること、柔軟な働き方ができること、危機管理の体制が整っていることが企業のアピールポイントになる。大切なのは、手段の前に企業の理念。その「姿勢」を見せる時が来ている。

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