企業活動にコロナ依然影響 借入金返済に懸念
第21回香川県「新型コロナウイルスに関するアンケート」

東京商工リサーチ

Research

2022.06.02

第21回香川県「新型コロナウイルスに関するアンケート」実施概要
■調査期間:2022年4月1日~11日
■調査方法:インターネット調査  ■有効回答53社
※第20回調査は、2022年2月25日公表(調査期間:2022年2月1日~9日)
※資本金1億円以上を大企業、1億円未満や個人企業等を中小企業と定義した

調査結果のポイント

①コロナの企業活動への影響、「継続している」が75.5%
②3月の売上高、 48.7%が前年割れ
③中小企業の2割強が借入金の返済見通しに「懸念あり」
④事業再構築、「既存債務が取り組みに悪影響」が35%
⑤中小企業の「廃業検討率」6.5%(前回7.7%)
新型コロナウイルスの感染拡大の影響が「継続している」(75.5%)は、2月調査の79.8%より4.3ポイント改善したものの、依然として多くの企業がコロナ禍の影響を受けていることを改めて浮き彫りにした。

「事業再構築」に既存債務の足かせ

ウィズコロナ、ポストコロナを見据えて、政府が取り組みを支援する「事業再構築」について、「既に行っている」は14.0%だった。同一設問を設定した第15回調査(2021年4月)の11.7%から2.3ポイント増加した。支援を受けながら、激変する外部環境へ対応しようとしている企業が出始めていることが分かった。一方、事業再構築に既に取り組んでいる、またはこれから取り組もうとしている企業に、既存債務が取り組みに悪影響を及ぼしているか聞いたところ、「大きく影響」は5.0%、「ある程度影響」は30.0%だった。35.0%の企業が、既存債務が事業再構築の足かせと回答している。

中小企業の24.2%が借入金返済に懸念

借入金の返済について、中小企業の24.2%が「懸念あり」と答えた。金融機関の担当者からは、返済に苦しむ企業からの事業再構築に向けた新規融資の要請に苦慮する声も聞かれる。さらなる債務の増大と事業価値の向上は、コロナ禍の影響を受ける企業だけでなく、伴走支援者を含めて、関係者に難しい問いを投げかけている。
コロナ禍の出口戦略を見据え、動き出している企業は少なくない。ただ、事業再構築の予定を含めて集計すると景色は違って見える。第15回調査で「既に行っている」、または「今後行うことを考えている」と回答した企業は合計54.6%だったが、今回は48.8%と低下した。1年前から事業再構築を計画していた企業が取り組みを実施したが、新たに再構築に動き出す企業は増えておらず、すそ野は広がっていていない恐れがある。

事業再構築の費用について、「既に行っている」、または「今後行うことを考えている」と回答した企業に聞いたところ、「1億円以上」と回答した企業は17.6%にのぼる。内容は、「コロナ禍の状況にとらわれず、新たなビジネス領域への進出」や「危機的状況でも企業が存続できるよう事業の多角化」との回答が多く、大型設備投資や新事業の立ち上げに匹敵する作業負担が生じていることも想定される。補助金など金銭的な支援だけでなく、計画策定のフォロー体制も確認する必要がある。

3月4日、「中小企業活性化パッケージ」が公表され、中小企業の私的整理に一定の道筋が示された。枠組みが浸透しない場合、事業再構築が進まないだけでなく、過剰債務への抜本対応ができず、政策支援で抑制されている倒産が増加に転じる恐れもある。

これまでの企業支援が生み出した過剰債務と低生産性という「副反応」への対応は、端緒についたばかりだ。

東京商工リサーチ四国地区本部長兼高松支社長 有馬 知樹

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