6月19日から「ステップ2」へ
復活に向け、動き出す香川の観光

ビジネス香川編集室

Special

2020.06.18

コロナ禍以前の三豊市の父母ケ浜(三豊市観光交流局提供)

コロナ禍以前の三豊市の父母ケ浜(三豊市観光交流局提供)

コロナ禍の影響を大きく受けた業界の一つが観光産業。渡航規制や外出自粛要請で、人々の往来がほとんどなくなった。そんな状況の中、じっと耐えながら復活への準備をする人たちの姿や思いを紹介する。

危機を経て、これから

栗林公園は、留意事項の掲示や園内放送、 消毒液の設置やスタッフのマスク着用などの 対策を行い、6月1日から通常通り開園

栗林公園は、留意事項の掲示や園内放送、
消毒液の設置やスタッフのマスク着用などの
対策を行い、6月1日から通常通り開園

「令和元年香川県観光客動態調査(速報版)」によると、2019年1月~12月に香川を訪れた観光客は、968万7000人(前年比2.9%増)で過去2番目に多い数字。瀬戸内国際芸術祭の開催や「瀬戸内」という地域が世界的に注目を集めたこともあり、香川の観光が今後飛躍していく可能性があった。

それが、新型コロナウイルス感染症で危機的な状況に。県観光振興課が香川県ホテル旅館生活衛生同業組合加盟114施設を対象に行った調査(回答83施設、5月31日時点)では、宿泊者の人数が5月は対前年比約90%減という結果。インバウンド需要の消滅、外出自粛の影響が数字に表れている。

少し流れが変わり始めたのは、全国で緊急事態宣言が解除された5月25日から。段階的緩和「ステップ1」期間を経て、「ステップ2」となる6月19日からは全国で県をまたぐ移動など外出自粛が緩和される(6月15日時点)。国では、感染防止に努めながらも、経済回復にも力を入れるため「Go To Travel キャンペーン」も検討されている。

香川県でも「観光産業を活性化させる施策を検討中」と観光振興課・西尾徹課長。まずは県内、四国内、近県、全国、インバウンドという流れでの回復を見すえ、効果的な支援や誘客を検討。地元事業者も“新しい生活様式”を踏まえ、さまざまな模索をしながら復活に向けて動き始めている。

事業の意義を改めて考えた 「フットバス」が運行再開

6月12日、高松駅午前9時45分発のフットバスが乗り場に姿を見せた。2カ月弱の全便運休期間を経て、減便ながら久しぶりの運行再開だ。この便は8割ほどが予約でうまり、「予想よりお客様が乗ってくださりありがたい」とドライバー・尾池俊彦さん。「休業中は、仕事がどうなるのか不安だったので再開は嬉しい。とはいえ、感染症が完全に終息したわけではない。気を引き締めて安全対策を徹底していきたい」という。

乗客の女性も「運休になってから、仕事の都合で大阪にいる家族にずっと会えなかった。バスの再開を待ち望んでいました。感染に気をつけながら行ってきます」と笑顔をみせた。

フットバスを運営する高松エクスプレスでは、4月13日から減便を実施、20日~6月11日は全便運休した。「減便する前から利用者は減り、便によっては1人ということも。お客様がいる限りはバスを走らせたいが、売り上げを考えると企業としてどうすべきか。この状況がいつまで続くのか分からないだけに苦しかった」と代表取締役社長・松本五郎さんはいう。

運行再開に向けては、安全対策を徹底。座席の間隔が広い3列シートに抗菌カーテンを設置し、5分ごとに車内換気をする。除菌イオン発生装置を搭載し、各座席に消毒液入りのミニボトルも置いた。さらに、万が一感染症にり患している乗客がいたことが発覚した場合に備え、他の乗客に連絡できるよう、車内に設置しているQRコードを読み込み、アドレスを入力してもらう追跡システムも導入した。

「運行を決めてから、予約を受ける際に『よく再開してくれた。ありがとう』という声を多くいただいた。今まで、当たり前のようにお客様をお送りしていましたが、公共交通機関としての私たちの役割を改めて考えました」

一方で、テレワークが普及し、出張需要が減る可能性も危惧している。「感染症の第2波、第3波への備えもしつつ、変化するニーズも見極めていきたい」

地元の魅力発信者として 地域を知る機会に

キレイな景色を見るのも現地でのちょっとした体験も動画で、グルメのお取り寄せもオンラインで――が進む現在。「だからこそ、人はなぜそこに行くのか、旅行の動機を考え直した上で、地元の魅力を発信することが重要」と日本旅行業協会(JATA)中四国支部香川地区委員長・野浪健さん(JTB高松支店長)。

発信の重要な役割を担うのは、行政や事業者だけではなく地元の人たち。近くにあるから“知っているつもり”になっている観光地や施設は多い。県内の宿泊施設に泊まる機会もあまりない。今、観光はまず県内の需要からといわれ、行政も事業者も県内の人向けの取り組みに力を入れている。

「距離が離れれば旅行というわけではなく、“非日常”を味わうことが旅の醍醐味。だとすれば、近くの温泉に泊まってみたり、定番の観光スポットをじっくりまわったりするのも旅の一つ。この機会に、地元を深く知るのもいいことかもしれません」

工夫やアイデアで 今後に向けた動き

【県内宿泊・観光プラン】
少しでもリラックスしてもらう時間を提供したいと、県内の宿泊・観光施設が連携してお得なプランを用意する事業を、6月2日から開始した。
15日時点で22の施設が参加しているこの取り組み。対象施設を利用すると宿泊料や入場料の割引、食事のアップグレードなどの特典があるという内容で、参加施設は今後も増えていく予定だ。
「県外に安心して出かけられるのはもう少し先だと考えている人も多いのでは。この機会に、自宅ではない空間で少しでも家族でリフレッシュしてもらいたい」と県観光協会事務局長・土居義昌さん。地元の魅力を再発見してもらうとともに、コロナ禍で大きな影響を受けた県民と地元事業者をみんなで応援していきたいという。
詳細はHP(https://www.my-kagawa.jp/feature/kennai/iyasou)で確認を。

待っている人のため、準備を

1カ月あまりの休園を経て、6月1日に開園した栗林公園を訪れていた女性は「季節ごとに美しい景色を見に来ていたから、再開を待ちわびていました」と、ハスの花をカメラにおさえていた。

緊急事態宣言のもと、“不要不急”ではないとされた観光業。事業者たちの多くは、休業を余儀なくされ苦しい時期が続く。しかし、取材をした事業者は「待っている人たちがいる」ことを励みに、準備をしていた。

観光は地域に根差した産業で、観光客の消費は飲食、農業など幅広い分野に影響する。地域の産業を守るために、地域に住む私たちも応援していきたい。

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