「破壊」と「創造」 “二刀流”で安心を届ける

オオタケ 社長 大竹 哲朗さん

Interview

2021.02.04

赤が特徴のヒルティ製建設用工具がずらりと並ぶ オオタケ本社1Fのショールーム=高松市扇町

赤が特徴のヒルティ製建設用工具がずらりと並ぶ
オオタケ本社1Fのショールーム=高松市扇町

「HILTI」に惚れ込んで

専用車による出張デモンストレーションの様子

専用車による出張デモンストレーションの様子

掲げるテーマは「破壊と創造」。大竹哲朗さん(63)は「まさに文字通り、『破壊』と『創造』の“二刀流”でやってきた」と力を込める。「共通するのは『安全性』。お客さんに安心感を届けることを最優先に考えています」

『創造』を担うのは、電動ドリルや、コンクリートを削ったり壊したりするハツリ機などの建設用工具。ヨーロッパのリヒテンシュタインに本社を置く世界的工具メーカー・ヒルティ社から製品を仕入れ、四国と岡山エリアの代理店として建設・土木業者に販売する。「人間工学に基づいて開発されたヒルティ製品は、耐久性があり安全で使いやすい。“プロが認める工具”といわれていて、何より私自身が『HILTI』のロゴと製品に惚れ込んでいるんです」

顧客数は3万社、年間取引は7000社。全国に8社あるヒルティ代理店の中でもダントツの売上を誇るのは、「営業」と「技術」が一体となったオオタケならではの販売力にある。「ただ製品を売るだけの流通に徹しているわけではありません」

販売担当者は製品の知識をたたき込み、顧客にどのような流れで話を持っていくか、トークスキルも磨く。性能を体験してもらうため、製品を積み込んだ「デモンストレーション車」を顧客のもとに走らせ、「機動力が大幅にアップしました」。施工が適正かどうかを確認する「引張試験」や安全指導など、技術的なサポートもできるよう全担当者が専門性の高い「あと施工アンカー」の資格を取得。「製品の提案からメンテナンスまで、『オオタケに頼んだら最後まで面倒を見てくれる』というお客さんとの信頼関係が最大の強みだと思う」と大竹さんは胸を張る。

火薬を運んだ学生時代

瀬戸大橋架橋発破工事=1979年頃

瀬戸大橋架橋発破工事=1979年頃

「オオタケ」と聞けば、「火薬」という印象も強い。“二刀流”のもう一つ、『破壊』が指すのは1937年、大竹さんの祖父・正一さんが始めた産業用火薬の販売だ。「庵治石の採石場での発破に使う火薬を扱ったのが最初です」。香川用水、瀬戸大橋、高松自動車道……四国で行われる建設工事のほとんどはオオタケの発破で始まり、先代の父・哲也さんは「発破の哲ちゃん」と呼ばれていた。

瀬戸大橋架橋工事が始まった頃、大竹さんは大学生だった。夏休みなどの長期休暇に入ると、父から「早く帰省しろ」と連絡があった。「トラックに火薬を積み、毎日坂出の沙弥島や瀬居島に運んでいました」。瀬戸大橋は会社の基盤を築く、とてつもなく大きな仕事だった。「自分が運んだ火薬で、あの橋の基礎ができたんやなと、今でも見るたびに思います」。大竹さんは父と同じ「哲」の字を名前に持つ。「当時は私も『発破の哲ちゃん』になるものだと思っていました」と懐かしそうに語る。

発破現場などで付き合いがあったヒルティ製工具の販売へと父が事業を広げたため、大竹さんが「発破の哲ちゃん」と呼ばれることはなくなったが、「火薬」は現在も事業の要の一つ。ゼネコンなどに効率的な発破パターンを提案したり、周辺住民に影響が出ないよう振動や騒音を測定したりと、独自のやり方で全国トップクラスのシェアを保っている。「『火薬』と、建設・土木全てが顧客対象の『ヒルティ』とのつながりは大きい。今後も連携しながら、共に高めていきたいと思っています」

社員を思い、欠かさず返信

「社員の『不安』を取り除きたい」と大竹さんは繰り返す。大学卒業後、日本ヒルティの大阪支店で営業マンとして2年間勤めた。「当時は顧客リストも商品リストもなく、指導もないまま飛び込み営業……不安で不安で、悩むことが多かった」

そんな思いはさせたくないと、社員教育に力を入れる。新入社員には、先輩社員が「新人コーチ」としてマンツーマンでみっちり指導。5年前からはタブレットを全員に持たせ、顧客訪問時に工具製品の動画を見せたり、商品リストをその場で確認したりと、「不安を感じず、仕事に集中できるようにしています」

教育と同様に熱心なのが、社員との「コミュニケーション」だ。スマホのアプリを使い、会社全体、グループ、時には1対1でメッセージをやり取り。早朝でも深夜でも、送られてきたメッセージには必ず返信するようにしている。「『午前中に一日の目標額を達成したが、きょうはそれ以上に挑戦したい』など成功例を共有するのが狙い」と説明しながらも、「社員の顔を思い浮かべながら返信するのは楽しくて、“つながっている”感じがとてもうれしい。実は鬱陶しい、と思われているかもしれませんけれど」と苦笑する。

今年64歳になる。3年後の67歳の誕生日に引退し、長男・哲平さん(35)に社長業を引き継ぐつもりだ。「思うがままにやってほしい」とエールを送りながらも、こう加える。「まだまだできる限りのことはやる。安全に正確に迅速に、お客さんそれぞれの現場を知識や技術で支えていきたいと思っています」

篠原 正樹

大竹 哲朗|おおたけ てつろう

略歴
1957年 高松市出身
1976年 高松商業高校 卒業
1980年 京都産業大学 卒業
日本ヒルティ大阪支店勤務を経て
1982年 株式会社オオタケ 入社
1996年 代表取締役社長

株式会社オオタケ

住所
香川県高松市扇町2-2-5
代表電話番号
087-851-9445
設立
1937年創業、1950年設立
事業内容
【建設部】HILTI製品全般・国産メーカー電動工具の販売、アンカー打設工事・ダイヤモンド穴あけ工事の施工、引張試験 他
【火薬部】火薬・爆薬・火工品等の販売、緑化工事 他
支店・営業所
松山支店、岡山支店、徳島営業所、高知営業所
資本金
2600万円
地図
URL
https://ohtake-hilti.co.jp/
確認日
2021.02.04

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