約30年ぶりの活動で味わったのは、歌うことの喜びと感動。
そしてさまざまな人々との出会い

四国電力 取締役 土木建築部担任 中村 進さん

Interview

2009.12.17

今年7月12 日、四国電力取締役土木建築部担任の中村進さんは、アルファあなぶきホール大ホールのステージにいた。香川二期会合唱団のメンバーとして、同団の第42回定期演奏会で歌曲王シューベルトのリートをはじめ、宗教曲、劇音楽などを歌った。「多くの方が聴きに来てくださったことに加え、我々も歌で最善を尽くす以外に、聴きに来られた皆さんに楽しんでもらえるよう、歌う時の服装や並び方、表情などにも工夫をこらした演出ができ、とても感動的でした」。大学の2年間で活動を終えていた合唱で、久々に味わった高揚感だった。

久々のステージでよみがえったものは

中村さんは、父親が音楽の先生という家庭に生まれ、家の中にクラシック音楽が流れる環境で育った。音楽好きな少年に成長、高校では合唱部を立ち上げる。「既存の音楽部はギターなど器楽が中心。声楽専攻の音楽の先生が赴任されたので、仲間と『よしっ、合唱部を創ろう』と」。以降、大学2年まで合唱漬けの日々だったが、就職後は通常残業の毎日となった。趣味に費やす時間はなくなり、合唱とも疎遠になった。

初めての単身赴任。はて、何をしよう?

高松への着任は2008年4月。「単身生活は、自分ですべきことも多いのですが、比較的自由な時間も作れるんですね。何をしようかと考えました」。1人でできる趣味と、人と関わりながらする趣味の両方を持ちたい。高松に根づいた活動もしたい。年をとってからのことも考えた。「有力な候補が合唱でした」。中村さんには、いつか第九を歌いたいという思いもあった。

そんなある日、居酒屋で、とある合唱団の団長さんと知り合った。「練習は週に1回。一度来てみませんか」。誘われたのは香川二期会合唱団。1960年創立の、県内で最も古い歴史を持つ混声合唱団だった。

大勢でハーモニーを創り出す楽しさ

今年3月に入団、練習は毎週火曜19 時からだが、皆勤というわけにはいかない。入団後は、7月に定期演奏会も控え、練習する曲はたくさんあった。「通勤途上でテープにあわせて小声で歌いながら覚えました。でもね、楽しいですよ。特に大勢でハーモニーを作り上げることがとても楽しい」と中村さん。

混声合唱は、男声のテノール、バス、女声のソプラノ、アルトからなり、それぞれが他のパートの音も聴きながら、自分のパートを歌い表現する。難しくはないのだろうか?「好きだから苦にはなりません。そのために練習もしますし。それに、我が団のテノールはとても優秀なんですよ。うまい人と一緒だと歌いやすい。我が合唱団のテノールは、私が出合った合唱団の中でも一級品でしょう」

中村さんは、11月8日には、念願だった「2009かがわ第九演奏会」(アルファあなぶきホール大ホール)にも参加した。「オーケストラと一緒に音楽を創り出す喜びと感動を味わいました」

香川に赴任し、地域の合唱団に入ったことで、地元の人と交流する機会ができた。入団してみると、合唱団のメンバーには、知り合いや会社の同僚、大学時代の寮の後輩もいた。中村さんは「趣味の世界で人を介して知り合った人が、仕事で繋がることもある。その逆のケースも。間接の繋がりが直接の関係になる楽しい瞬間があるんですね。仕事以外の『よりどころ』や『住処』が育っているように思います」。

単身赴任だからといって、出会いがあるわけではない。「自分から動いたことで、出会えた。人間関係が広がり、地に足がついたような気がします」。歌という共通の趣味を持つ妻・文子さんとの会話にも、合唱の話題が入ることが多くなったという。

中村さんは、奈良で生まれ育ったこともあり、古い寺社の仏像や建物、庭を見て歩くのも好きだという。今も時間を見つけては、香川、四国の歴史や名所、風景との出合いにも力を入れる。いずれは八十八箇所巡りもしたいと言うが、今は来年7月の香川二期会創立50周年記念演奏会に向けて、練習に力が入る。
よみがえった歌うことの喜びと感動は、今後ももっと深く、もっと広く、中村さんをとらえ続けるに違いない。

中村 進 | なかむら すすむ

1954年 奈良県生まれ
1976年 東京大学工学部 卒業
    通商産業省 入省
2008年 四国電力 入社
2012年 STNet 入社
2013年 代表取締役社長 就任
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中村 進 | なかむら すすむ

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