おいりの「嫁入り」を夫婦二人三脚で

則包商店 代表 則包 裕司さん

Interview

2017.10.05

愛らしい姿でサクッと軽い歯ごたえの「おいり」。西讃地域を中心に、結婚式の引き出物や、結婚した際の隣近所への挨拶回りで配られる「嫁入り菓子」だ。丸亀藩主のお姫様が嫁入りの際、領民が五色の餅花を炒ってあられにして献上したのが始まりとされている。おいりを配ることには「心を丸くして、まめまめしく働きます」という意味が込められているという。

則包商店は、丸亀市で約100年おいりを作ってきた。3代目の則包裕司さんは店に入って30年以上経つ。「手間を掛けるほど、まあるくきれいにできます」。妻の満由美さんは「私も、この子たちを嫁がせたくない、と思うくらいおいりに愛着が湧くんです」と話す。
乾燥させた餅を炒る

乾燥させた餅を炒る

難しいからこそ長年続けてこられたと裕司さん。「納得のいく完璧なものができていたら、すぐに辞めていたかもしれません。毎回同じようにはできないから、次はここを工夫しようとかいろいろ考えながら作ってきました」

祖父の代から変わらぬ工程は、約1週間。まず、県産のもち米で砂糖餅を作る。餅を延ばして乾燥させ、さいの目に切って再び乾燥。裕司さんが炒り、満由美さんが色付けしたら完成だ。
焼き上がったおいりを機械に入れ、回しながら蜜を掛ける。繭玉のようなおいりが桃や黄色に淡く色付いていく。おいり作りを始めて20年になる満由美さんは「最初は目が回って大変でした。毎日、一つ一つの作業が勝負です」と話す。2人の作業には無駄がなく、まさにあうんの呼吸だ。
桃、黄、緑、紫、赤の5色に白色のおいりを少し混ぜて 印象を柔らかく

桃、黄、緑、紫、赤の5色に白色のおいりを少し混ぜて
印象を柔らかく

炒る作業は、熱さと時間との戦い。1メートル四方の網に餅を広げて、約3分、音を聞くことに集中する。「最初はざらざらと聞こえますが、膨らむと音がしなくなります」。網を動かしながら焼くことで、餅の角が取れて丸くなる。炒り過ぎると焼き目がついてしまう。作業を続ける数時間はオーブンの火をつけたままのため、工場内はまるでサウナだ。
かつては結婚式が多くなる秋から冬にかけて忙しかったが、今は年中フル稼働している。則包商店のおいりが婚礼以外で使われるようになったのは約20年前。県外の遊園地からスイーツのトッピングに使いたいという要望があった。裕司さんは「こういう使い方もあるのか、面白いなと思いました」と振り返る。

県内でもソフトクリームやかき氷のトッピングとして定番になり、今では全国各地で使われている。「おいりが広まったことはうれしい。でも一時だけの商売にならないよう地道にやっていく。いずれは息子においり作りを伝えたい」と裕司さん。

満由美さんは「私たちは夫婦というよりも同志。夫には元気に長生きしておいりを作り続けてほしい。花嫁さんに、きれいなおいりを持たせてあげたいですね」と話す。用途は広がっても、おいりはやはり「嫁入り菓子」だ。(鎌田佳子)

則包 裕司 | のりかね ゆうじ

1955年 丸亀市生まれ
1974年 丸亀商業(現・丸亀城西)高校 卒業
1978年 桜美林大学 卒業
    自動車販売会社を経て、則包商店へ
写真
則包 裕司 | のりかね ゆうじ

則包商店

所在地
丸亀市中府町5丁目9-14
TEL.0877・22・5356
事業概要
おいりの製造・販売
地図
確認日
2018.01.04

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