お客様の変わらぬ笑顔を求めて。総合力で変わり続けること、
そして変化を遂げていくこと。

1978年に高松市のライオン通り商店街に開店したルーヴ。スタッフ3人で始めた当初は、ケーキと焼きたてパンを扱う店だった。「当時はきっとパン店のイメージが強かったのではないかと思いますね」と振り返るのは、開店当時から店と共に歩んできた専務取締役の野﨑幸三さん。関西の有名ドイツ菓子店で修業した義兄の藤井二郎さん（現・代表取締役）を中心に作り上げるケーキやパンはどこか洒落ていて、特に食卓にのぼる機会の多いパンにはファンも多く、焼き上がりの食パンを目当てに訪れる顧客も多かったという。

そんな店がやがてケーキ製造1本に絞ることになる。「かなり迷ったし、話し合いもした。パンにも多くのファンの方がいらっしゃったから。でも悩んだ末に、ギフトも含めたケーキで行こうと決めたんです」

様々な経験を経ての決断だった。好景気な時代、ある会社のオーナーからは、福利厚生で社員の誕生日に支給するバースデーケーキのオーダーが入り、毎月1回1カ月分まとめて200台から300台のケーキを作り上げて納入した。高予算のケーキの発注もあったし、有名ホテルからは結婚式のギフトオーダーも始まった。難題にも決してノーは言わず、やり遂げる。それは確かな技術力と自信になった。提供していきたいもの、求められているものが明確になり、そしてキッチンは手狭になった。進化する時期がやってきていた。1990年、高松市役所横に開設した番町店は、ケーキとギフトを中心とした店としてスタートした。

1987年6月に行われた1組の芸能人の結婚式。郷ひろみと二谷友里恵の披露宴に登場したウエディングケーキは、これまでのケーキ入刀のための張りぼての演出小道具とは違い、入刀後にゲストにお裾分けできる生ケーキだった。「ウエディングは変わると予感した」という野﨑さん。しばらくして「こんなオーダー入ってるけど、できる？」と結婚式場から要請が入る。今のような結婚情報誌などない時代、雑誌の切り抜きなどを参考に、式場関係者とカップルを交え、生ケーキのウエディングケーキ作りが始まった。「当時は1日2組以上は受けられなかったですねえ。もちろんオーダーもなかったですが」。

そのウエディングケーキ、時代は移り今では年間1500組を超えるオーダーが入り、平均すると毎週末30組のウエディングに対応していることになる。引菓子なども含めるとかなりの数量になるが、毎週こなせるその力はどこにあるのか。野﨑さんは「会社としての総合力だと思っています」と応える。

多くのケーキ店が魅力を感じるというウエディングだが、決して簡単ではない。衛生面や数量などの基本的な課題をクリアしても、依頼を受けるプランナーが結婚する二人のイメージをどこまで具現化し、パティシエが作り上げることができるか。すべてをオリジナルで、決して手を抜くことなく完遂させるには、スタッフ個々の資質はもちろん、それぞれのプロ意識の高さが問われるからだ。

野﨑さんは今年1月、店のスタッフを対象にした独立塾を開いた。ルーヴには2店舗あわせてパティシエといわれるケーキ職人が30人以上いる。身につけてきた技術をもって、いつか独立したいと考えている人は少なくない。それぞれの夢を実現させるためには「技術だけではだめ。経営者としての資質が必要なんです」。経営能力を高めるということは、常に課題を意識できるということ。店全体にとってもプラスに働く。

常に新しいルーヴを模索している野﨑さん。目指し続けることは？ 「独創的な菓子づくりですね。そして社会の一員として貢献できることに繋げたい。高松の元気も伝えたいし、それは一過性のものにはしたくないですね」