ワクワクできる和菓子作りを

寳月堂 和菓子職人 桑田 桃子さん

Interview

2018.07.05

白い建物が寳月堂の店舗。左隣の製造工場は文化庁の有形登録文化財になっている

白い建物が寳月堂の店舗。左隣の製造工場は文化庁の有形登録文化財になっている

寳月堂(丸亀市)の和菓子職人・桑田桃子さん(26)の将来の夢は、子どもの頃からぶれなかった。小学生の時には「和菓子職人」、中学生では「和菓子屋の経営者」と答えていた。

曽祖父が1917年に創業し、祖父、祖母、母と経営を引き継いできた。現在は母の高畑響子さんが社長で、桑田さんと夫の剛史さんが5代目にあたる。3代目の社長だった祖母のことが「大好き。祖父が早くに亡くなり、家のこともしながら店を切り盛りするかっこいい姿を見て育ちました」。祖母の邦子さんは35歳から85歳で亡くなる直前まで社長を務め、生涯現役を全うした。

高校生の頃、週末や夏休みには、響子さんが出張で京都へ行く時に同行した。京菓子屋を特集した本を3冊買い、空いている時間に一人で一軒一軒訪ねた。そうして理想の店と出合う。「作っているものや経営の規模が、私のしてみたいことに近かった。ここで修業すれば、学んだことを寳月堂で生かせると思ったんです」。だが、その店では「丁稚」を受け入れておらず断られてしまう。それでも諦めずに20回近く通い、働けることになった。

高校卒業後の2010年に入店。店は忙しく、餡を炊きながら、一方では寒天を固めつつ、また一方では生菓子を作るなど、いくつもの作業を同時進行でこなさなければならなかった。5年半の修業で学んだのは、人と協力して仕事をやり遂げることの大切さだという。

15年1月に同僚だった剛史さんと結婚し、同年9月に香川へ帰ってきた。SNSでの情報発信を始め、積極的にイベントにも参加。和菓子作りの出前教室を開催した。
桑田さんが開発した「辛糖」

桑田さんが開発した「辛糖」

ある時、百貨店から日本酒のイベントに参加しないかと声がかかった。若い女性がお酒を飲みながら食べる和菓子があればと、新商品の開発に取り組むことに。丸亀らしさを出したいと考え、選んだのは市内で栽培されているトウガラシの「香川本鷹」。和三盆に本鷹の粉末を合わせて「辛糖(しんとう)」が完成した。


辛糖は「2016かがわ県産品コンクール」の菓子・スイーツ部門で最優秀賞を受賞。「万人受けするお菓子ではないと思っていたので、受賞を聞いた時には驚きました」。高知のショウガ、愛媛のレモンを使った辛糖の別バージョンも作り、「徳島の産品を使って、四国4県がそろったら面白いなと考えています」
かき氷。シロップは三豊市産のイチゴ

かき氷。シロップは三豊市産のイチゴ

昨年、寳月堂は100周年を迎えた。店舗を改装し、2階にイベントができるスペースを設けた。毎月和菓子教室を開催しているが、他にも地元の人が楽しめる催しができないか思案中だ。夏季限定でかき氷の販売も開始。シロップは、香川県産のイチゴやミカンを煮詰めたもの、自家製の甘酒など手間をかけて作る。店の外に休憩所も設けた。

「お客さんが『次はどんな商品が出るんだろう』と、ワクワクしながら足を運んでくれるような店が理想。いつでも人が集まる場所にしたいですね」

今、一番心を砕いているのが、スタッフの働きやすさ。「みんながいかに快適に、楽しく、やりがいを持って働けるか。その環境をつくることに集中しています」

鎌田佳子

桑田 桃子 | くわた ももこ

1992年 丸亀市生まれ
2010年 大手前丸亀高校 卒業
    京都の和菓子店での勤務を経て、
2015年 有限会社宝月堂 入社

御菓子司 寳月堂(おかしつかさ ほうげつどう)

住所
丸亀市米屋町16
TEL:0877-23-0300
地図
URL
http://www.hougetudou.com/
確認日
2018.07.05

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ